●レアメタルの資源戦略のポイントは四つある
大上 では、これまでの話を踏まえて、あらためてレアメタルの資源戦略について、岡部先生からお話を伺います。
岡部 レアメタルの資源戦略で一番大事なポイントは四つあります。調達先の多様化、備蓄の推進、使用量の削減や代替材料・技術の開発、そしてリサイクルです。レアメタルは極力使わないようにしてため込んでおき、なるだけ別のものに置き換えていくこと。そして、一度(工業製品として)使ってしまったレアメタルは、捨てずに徹底的にリサイクルして循環利用することが重要なのです。
個別に言いますと、まず調達先の多様化です。レアメタルにはいろいろな種類があり、多様化できるものとできないものがあります。例えばパラジウムなどはロシアと南アフリカにしか出てきませんから、いかに多様化を図ろうと思っても、この2カ国しか供給源はありません。
●多様化と備蓄を現実的に進めるために
岡部 例えばレアアースの現実的な供給先は、今のところ中国が97パーセントほどを占めています。しかし、実を言うとこれに関しては、世界中にさまざまなレアアースの鉱山があります。その意味ではいくらでも多様化が可能です。ただ何しろ中国はレアアースの精錬・採掘に伴って出るゴミ処理の費用が格段に安価です。現実的な経済合理性を考えると、中国からレアアースを買うのが一番の得策です。ただ、過去にも尖閣諸島の問題があったように、いきなり(レアアースの供給を)ストップされる危険性があります。ですから、いざとなったら他の所からも調達できるように、極力(、多様な調達先の)確保に努めるべきだと思います。
大上 代替ルートをつくっておくということですね。
岡部 はい。そういった意味で、多様化は大事です。
大上 備蓄はどうでしょうか。
岡部 備蓄についてはいろいろな考え方がありますが、私は、レアアースが安いときには、極力ためていくべきだと思います。例えば、ロシアの通貨が安くなったらロシアから買う。
大上 それはパラジウムの場合ですか。
岡部 いろいろな物質です。パラジウムの値段が今どうなっているかなどの詳細は分かりませんが、要は安価なうちに、貴重なレアメタルを確保すること。ロシアのパラジウムや中国のディスプロシウム、こういったものは(安いときに買い)ためておくべきです。
●備蓄に伴う新たな方針づくりが急務
岡部 また、もう一つ、急激な増産ができない物質があります。資源的には問題がなくても、急激に増産ができないのはガリウムやインジウムです。最近の青色発光ダイオードの材料はガリウムですし、液晶パネルはインジウムを用います。こういうものも安いときに備蓄しておくべきだと思います。
大上 なるほど。最近は日本政府も実際に備蓄を行っていると思いますが、その備蓄の方法について、岡部先生が何か懸念されている点はありますか。
岡部 はい。昔からレアメタル備蓄はあります。制度設計までなされている主流は、鉄鋼材料に添加して性能をよくする(合金用のレアメタル、すなわち)、鉄鋼産業用のレアメタルです。(これらとは別に、)最近ではガリウムやインジウムも、備蓄対象に一応加わったと聞いています。
ただ、私の考えでは、例えば先ほど名前を挙げたディスプロシウムというレアアースや、パラジウムやイリジウムなどの白金族金属、このあたりを、状況に応じて常に備蓄しておくべきレアメタルだと考えています。それらの備蓄政策が今どうなっているのかは、私では分からないのが現状です。
大上 技術がいろいろ変わってくるにつれて、必要性も変わってくるということですね。あとは、既存の業界とのしがらみでしょうか。そういうことも含め、その辺は何かしらの問題はあるかもしれませんね。
岡部 まさに、(レアメタルを)備蓄されると困る業界もたくさんありますね。
●技術開発では世界のトップを行く日本
大上 では、次に、使用料の削減や代替材料の開発といった部分ではいかがですか。
岡部 これは、日本の技術力や産業力の強い領域です。使用量を減らす技術開発力については、日本は圧倒的に世界のトップランナーです。それから、代替材料です。いざとなったらレアメタルを使わずに、同等の性能を出していく技術の開発ですが、これも日本は先進国ですね。
大上 なるほど。では、リサイクルはどうですか。
岡部 リサイクルについても、日本は技術的には世界のトップランナーなのです。ただ、私から見ると残念ながら、(リサイクルを推進する)社会システムをつくっていく方面に関しては、やはり欧米の方が先んじているように思いますね。
大上 使用済み部品を回収してくる方ですね。
岡部 回収(する社会システムを整備)したり、リサイクル...