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危険なレアメタル採掘現場の実情

岡部徹の世界の鉱山・精錬所アドベンチャー紀行

岡部徹
東京大学生産技術研究所 所長
情報・テキスト
レアメタル研究の第一人者である東京大学生産技術研究所教授・岡部徹氏は、現場の実情を把握するために世界中の鉱山、精錬所を見て回っている。「それが仕事であり趣味でもある」と岡部氏は語るが、多くの危険や制約など、問題は尽きない。今回は、一般の観光旅行では知り得ない世界の鉱山・精錬所アドベンチャー紀行をご披露いただく。(インタビュアー:大上二三雄氏/エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社代表取締役)
時間:06:51
収録日:2014/12/25
追加日:2015/07/02
≪全文≫

●専門家としてみて見たい、世界中の採掘・精錬の現場


大上 岡部先生は、世界の鉱山、あるいは精錬所に、いわゆる「レアメタルマフィア」の一員として潜入して調査をやっていると、いろいろと聞いたのですが、その代表的なものをいくつか話していただけますか。

岡部 私の専門はレアメタルの精錬、リサイクルでして、そういった意味では、普通は(製錬)工場と廃棄物の処分場ぐらいしか行く必要はないのですが、私自身が趣味としてアウトドアライフが大好きなものですから、レアメタルがどうやって掘られているのだろうか、と興味があって(鉱山などがある)現地まで行くことがあります。

大上 やはり見たいですよね。


●現場には、治安や廃棄物処分、さまざまな問題がある


岡部 例えば、一例を申しあげますと、南アフリカの白金の鉱山などです。

大上 危なそうな所ですね。

岡部 皆さんはヨハネスブルグが危ないと言いますが、そこからさらに北の方に行った所に、この前、ストや暴動で死者が出た鉱山があります。その白金鉱山の地下800メートルに潜って、実際に白金を採掘している現場を見てきたりもしています。

 そして、その採掘している現場を見た後は、普通の人が入れない白金の精錬所や工場など、いろいろな所を見歩きます。

大上 クリーンな感じではないのですよね。

岡部 もちろん、治安だけではなくて廃棄物処分という意味でも、いろいろな意味で非常に問題があります。


●専門家集団の協力で、制約の多い中国レアアース鉱山も見学可能に


岡部 同じような問題を抱えているという意味では、この夏は中国のレアアース鉱山に行ってきました。

大上 中国というのは、要するに廃棄物の処理コストが安いがために、他国からの需要があってレアアースを出しているということでしたよね。

岡部 まさに、まさにその通りです。その現状を見に行こうということで、中国の内モンゴル自治区の包頭(バオトウ)市、現在は、中国領ですが、実際の文化圏で言えばモンゴル、というところですが、その包頭まで飛んで、そこから今度は北に150キロぐらいの鉱山地帯に行きました。ほとんどモンゴルとの国境の近くです。

 そこのレアアース鉱山を訪問したり、その後、レアアースの精錬所、そして廃棄物を処分する所を見て回ります。

大上 あまり見られたくないですよね、中国政府としては。

岡部 基本的に外国人が入ってはいけない所も多いですし、また、外国人が入ってよくても、あまり見せたくないでしょう。ただ、私の場合は、何も外国人という意味ではなくて、レアアースの専門家として、「その道の専門家には見せなければいけない」と、専門のお友達が思ってくれるわけです。

大上 向こうの専門家がいるわけですね。

岡部 そういったレアメタルの専門家集団の中では、(一般人とは異なり)制約なく見られるのがありがたいと思っています。


●南米のリチウム採掘現場は平均標高4000メートル級!


岡部 例えば、別の所では、何年か前にボリビアやチリなどにも行きました。ボリビアにはリチウムで有名なウユニ塩湖があります。実際には、(リチウムは)チリのアタカマ塩湖という所から多く産出されているのですが。要はそういった、(チリ-ボリビア国境の)平均標高が4000メートルあるようなアンデスの山を越えて、鉱山を訪問することがあります。

大上 危険はないのですか?

岡部 あります。山賊が出ることもありますし、何といっても平均標高が4000メートルですから、健康管理も大変です。

 あと、もう一つは、日本の人たちは皆、車で移動するとなるとアスファルトの上を走るわけですが、例えばリチウム鉱山を訪ねた後に、チリからボリビアに抜けていくまで、大体4日間か5日間はアスファルトの道路を見ることがなく、山道を延々と行くわけです。しかも乾燥しています。塩湖があって、いわゆる塩の塊がたくさんあるような所ですから、雨が降らない。

 そういった所を越えて、各鉱山を訪ねた後に、最終的には(リチウムで有名な)ウユニ、(銀鉱山で有名な)ポトシという所に行きました。


●専門家としてのアドバイス、説明のためには現場を知ることが必要


大上 リチウム電池は携帯電話など、あらゆるところに使われていて、最近は車などにも大量に使われていますが、結局はそういう南米の辺鄙(へんぴ)な所の鉱山で採掘されているのですね。

岡部 ただ、リチウムはボリビアのウユニ塩湖が産地として(日本では)有名ですが、実際はそこから採るのは私から見たらナンセンスなのです。雨の降らないアタカマ塩湖や別の地域から採るのがリチウムは合理的でして、そういったことを専門家として説明するには、現場に行って、実際にどうなのかということを見てくるのが...
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