不安な白金族金属~パラジウムが世界に及ぼす影響
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ウクライナの政情不安が及ぼすパラジウムの供給不安
不安な白金族金属~パラジウムが世界に及ぼす影響
岡部徹(東京大学生産技術研究所教授)
ウクライナの政情不安によって心配されるのは、パラジウムの供給不安だと話す東京大学生産技術研究所教授・岡部徹氏。パラジウムは白金族金属と呼ばれるレアメタルであるが、なぜ中東情勢と関係があるのか。その理由と対策、そして日本の現状について岡部氏が語る。(インタビュアー:大上二三雄氏/エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社代表取締役)
時間:5分59秒
収録日:2014年12月25日
追加日:2015年6月18日
≪全文≫

●ウクライナの政情不安が及ぼすパラジウムの供給不安


大上 最近、ロシアと西欧諸国の対立がウクライナで起こっていますけれど、そのロシアの問題で、岡部先生が「実はレアメタルが心配だ」を話しておられると聞いたのですが、その背景を話していただけますか。

岡部 ロシアを背後に控えたウクライナの政情不安と聞くと、皆さんは、飛行機の墜落事故や天然ガスの供給途絶を思い浮かべるでしょうが、レアメタルの専門家として、私が今、一番心配しているのはパラジウムという白金族金属の供給不安で、(ウクライナ危機の時も)そのことが真っ先に頭をよぎりました。

 パラジウムは、プラチナ、すなわち、白金と同じ仲間で、自動車産業や燃料電池には不可欠なレアメタルの一つです。

大上 ハイテクに必要なのですね。

岡部 はい。自動車産業では、自動車から出る排気ガスをきれいにする触媒としてパラジウムは欠かせないレアメタルです。自動車1台に大体パラジウムを含めた白金族金属が2~3グラムほど使われるのです。皆さんから見たら量は知れていると思うかもしれませんが、白金族金属は1グラム数千円もしますので、非常に高価なレアメタルなのです。


●パラジウムはロシアと南アフリカからほとんど供給されている


岡部 さらに、パラジウムは、実を言いますと、ロシアがほとんど供給しており、その次が南アフリカ共和国です。ということは、仮にロシアと南アフリカがパラジウムの供給を停止したら、日本のハイテク自動車、要するに、きれいな排気ガスしか出さない車は一切つくれなくなるのです。

 燃料電池車が今、流行っていますが、これも実を言うと、白金やパラジウムを多く使います。おそらく今の自動車の何十倍も使うでしょう。その燃料電池車すら全くつくれなくなるでしょう。

大上 すると、それは、ハイテクという近代の産業や技術の光の部分のことではあるけれども、流通、あるいは、資源を考えると、非常に脆弱性が潜んでいると理解してよろしいのでしょうか。

岡部 はい。幸い、パラジウムの供給国が、ロシアと南アフリカという、ある意味では安定した国ですので、皆さんは心配していないかもしれませんが、結局、世界中どこを探しても今の段階では、その2カ国からしかパラジウムは供給できないという現実があります。

 昨今のウクライナ情勢で仮にロシアがパラジウムの供給を...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
レアメタルの光と影(1)イントロ
イノベーションがレアメタルをコモンメタルにする
岡部徹
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
日本の財政の真実を検証する(2)なぜ財政危機は起きていないか
なぜ財政危機は起きていないのか…国債の金利のトリックを読み解く
宮本弘曉
老子の神髄(3)アンチフラジャイルと上善如水
アンチフラジャイル…老子の説く「道」とは「肝っ玉母さん」である
田口佳史
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子
ラカンの精神分析~心の謎を解き明かす(7)ベイトソンの学習理論とコンテクスト
ダブルバインドとは?ベイトソンの学習理論から解き明かす
斎藤環
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(6)リベラルアーツの本質
自分にしかできない自分の世界を味わうために、他の人とつながる
橋爪大三郎
ウェルビーイングを高めるDE&I(2)人と組織を取り巻く環境変化:後編
なぜ日本の幸福度は低すぎるのか?会社任せで失われる自律性
青島未佳
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
印象派の解体と最後の印象派展(1)セザンヌと印象派
印象派の画家に大きな影響を与えたセザンヌの構築的筆触
安井裕雄