「徳」から生まれる「感謝の人間関係」
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「徳」の本質とは「自己の最善を他者に尽くしきる」こと
「徳」から生まれる「感謝の人間関係」
哲学と生き方
田口佳史(東洋思想研究家)
誰もが一目置く人を「人徳の高い人」というが、「徳」の実態について考えてみることは少ない。江戸時代の日本で「徳」が最も重視されたのはなぜだったのか。また、歴史にみる天皇のお言葉「朕の不徳が致すところ」の意味は? 今や西洋からも注目を浴びる「徳」について、田口佳史氏が簡明に解説する。
時間:16分06秒
収録日:2014年11月12日
追加日:2015年7月27日
≪全文≫

●西洋人も重視する「徳」は、日本では「いきおい」のこと


 最近、西洋から来られる方で、「やはり徳が重要ですね」と話の端々で述べる方がとても多くなりました。英語で言う“Virtue”ですが、これが非常に重要だとおっしゃる人がいます。

 この“Virtue”「徳」は、日本では実は「いきおい」と言っていました。これは、天皇の用語です。

 「朕に不徳の致すところがあって」、そのために災厄や飢饉などの不幸が国民に来てしまう。それは一途に天皇である自分に「勢いがなかったから」という意味で、「勢いのなさ」を「不徳」と言っているのです。

 これについては後ほど、またどういう意味かを申し上げたいと思います。


●「徳」を教えるのは、孤立するのを見たくないから


 江戸期に、子どもの教育の中で一番重視したのが、この「徳」という概念でした。

 なぜ徳を重視したのか。親として一番見たくない図柄があるからです。こちらで全員が和気あいあいと遊んでいるのに、一人だけポツンとしている子がいる。誰かと思って見たら、自分の息子や娘である。これはたまらない、というわけです。

 したがって幼年期の頃から、そういう状況にならないように、社会生活をうまく運べるように育ててあげることを、親の務めとして非常に重視したのです。

 そのために、まず「社会は、誰と誰からできているのか」の問いを発します。皆さまもよくご存じのように、これは「自己と他者」からできています。そして、「自己は何人ですか」と言えば一人に決まっていて、他は全部他者です。

 これが何を表したかというと、自己本位や利己主義になると、その途端に孤立することです。自分の子どもが一人ぼっちになるのを見たくない。ですから、「自己中心的になってはいけないよ。その途端に孤立するよ」と、言い含めます。


●寺子屋の第一歩は「明徳を明らかにする」こと


 江戸期に寺子屋に上がるのは、今の小学校1年生と同じ6歳でした。その時に読む書物が『大学』ですが、その冒頭には「大学の道は明徳を明らかにするに在り」とあります。

 「明徳」すなわち、「誰の目にも分かるような徳」を明らかにする。この場合の「明らか」とは「身につける」という意味です。「明徳」の基本は「徳を身につけること」である。なぜならばと言って、今の社会の構造のことをよく話していくのです。

 さらに、「嫌...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(3)「内政と外交」と持つべき外交感覚
国民に求められる外交感覚とは?陸奥宗光の臥薪嘗胆の意味
小原雅博
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
50代からの親の介護~その課題と準備(1)突然やってくる介護の問題
「親の介護」の問題…優しさだけでは続かない
太田差惠子
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎