「徳」から生まれる「感謝の人間関係」
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「徳」の本質とは「自己の最善を他者に尽くしきる」こと
「徳」から生まれる「感謝の人間関係」
哲学と生き方
田口佳史(東洋思想研究家)
誰もが一目置く人を「人徳の高い人」というが、「徳」の実態について考えてみることは少ない。江戸時代の日本で「徳」が最も重視されたのはなぜだったのか。また、歴史にみる天皇のお言葉「朕の不徳が致すところ」の意味は? 今や西洋からも注目を浴びる「徳」について、田口佳史氏が簡明に解説する。
時間:16分06秒
収録日:2014年11月12日
追加日:2015年7月27日
≪全文≫

●西洋人も重視する「徳」は、日本では「いきおい」のこと


 最近、西洋から来られる方で、「やはり徳が重要ですね」と話の端々で述べる方がとても多くなりました。英語で言う“Virtue”ですが、これが非常に重要だとおっしゃる人がいます。

 この“Virtue”「徳」は、日本では実は「いきおい」と言っていました。これは、天皇の用語です。

 「朕に不徳の致すところがあって」、そのために災厄や飢饉などの不幸が国民に来てしまう。それは一途に天皇である自分に「勢いがなかったから」という意味で、「勢いのなさ」を「不徳」と言っているのです。

 これについては後ほど、またどういう意味かを申し上げたいと思います。


●「徳」を教えるのは、孤立するのを見たくないから


 江戸期に、子どもの教育の中で一番重視したのが、この「徳」という概念でした。

 なぜ徳を重視したのか。親として一番見たくない図柄があるからです。こちらで全員が和気あいあいと遊んでいるのに、一人だけポツンとしている子がいる。誰かと思って見たら、自分の息子や娘である。これはたまらない、というわけです。

 したがって幼年期の頃から、そういう状況にならないように、社会生活をうまく運べるように育ててあげることを、親の務めとして非常に重視したのです。

 そのために、まず「社会は、誰と誰からできているのか」の問いを発します。皆さまもよくご存じのように、これは「自己と他者」からできています。そして、「自己は何人ですか」と言えば一人に決まっていて、他は全部他者です。

 これが何を表したかというと、自己本位や利己主義になると、その途端に孤立することです。自分の子どもが一人ぼっちになるのを見たくない。ですから、「自己中心的になってはいけないよ。その途端に孤立するよ」と、言い含めます。


●寺子屋の第一歩は「明徳を明らかにする」こと


 江戸期に寺子屋に上がるのは、今の小学校1年生と同じ6歳でした。その時に読む書物が『大学』ですが、その冒頭には「大学の道は明徳を明らかにするに在り」とあります。

 「明徳」すなわち、「誰の目にも分かるような徳」を明らかにする。この場合の「明らか」とは「身につける」という意味です。「明徳」の基本は「徳を身につけること」である。なぜならばと言って、今の社会の構造のことをよく話していくのです。

 さらに、「嫌...

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