●諸悪の根源「減反制度」に立ち向かう農業改革
さて、農業改革です。これは、「減反制度」が基本です。
減反制度がなぜ重要かを説明しましょう。日本では農地の作付けの中でお米を作っていますが、日本人はお米を食べなくなってしまいました。どんどん量が減り、昔に比べると半分も食べません。こうなると需要が少ないので、値段が下がります。値段を下げてはいけないので、「農地を作らない」という約束と引き換えに、農家に対して補助金を渡すことにしました。お米を作らないけれど、作った分と同じだけのお金を渡すのです。2013年の補助金総額はいくらかというと、6,800億円です。お米の売上を全部足しても2兆円に届きませんから、本当に「何をやっているんだ」という国なのです。
「これは諸悪の根源である」「こんな制度があるから価格が維持されるし、農家が努力しない」と、これを撤廃するための議論が昔からなされてきましたが、絶対に通りません。というのは、日本の農業は、お米を作っているというよりも、票田なのです。お米より票なのです。今の農村票は200万票しかないですが、終戦直後は1,500万票あり、自民党はそれで成り立っていました。だから、絶対にそこは譲りません。1970年に導入された制度ですけが、譲らずにやってきたのです。
こういうものを変えないとTPPどころではないということになり、ここでも菅(義偉)さんが、自身は貧しい農家の出身なのですが、改革を「やる」と言ったのです。
●菅・西川・林から吹く減反廃止と戸別補償の見直しの風
何をやるかというと、こういうことでした。これは仕掛けたのだと思いますが、2013年10月24日の「産業競争力会議」で、新浪剛史ローソンCEOが「減反政策は、3年後には廃止すべきだ」と言ったのです。よくそんなことを言えたなと思うのですが、政府がすぐそれに呼応します。翌日、閣議後の記者会見で林(芳正)農水大臣が、「米の減反政策については、経営所得安定対策と一体になって、見直し議論してきます」と言いました。これは明らかに仕掛けられています。
なぜ、どのようにして仕掛けたかというと、こういうことです。何十年と変えられなかった政策ですから、どうしようかということで、内閣改造をしない代わりに、自民党の農業委員会や農水省の副大臣級の人事を全部開明派に替えたのです。それを西川公也さんと菅さんと林さんで行ったのです。
すると、古参の農林族が「ふざけるな」と官邸に陳情で文句を言いに来ました。それに対して菅さんは、新聞の記事ですから実際このように言ったかどうかは知りませんが、「戸別補償の見直しは、党の政権公約だ。わかっているのか!」と一喝したとのことです。これがダメ押しになって霞が関は震え上がり、「そっちの方向なんだ」ということになりました。それで、林さんもそう言えるようになったそうです。相当な力仕事をしますよね。
●西川議員が開明派に転向した理由
西川さんが開明派になった経緯についてですが、この人は実は石破(茂)さんを「天敵」と思っていました。石破さんは、以前から農業の自由化を主張していたので、「けしからん」と思っていました。「石破を徹底的にやっつけろ」と、彼らは日本中でキャンペーンをしていました。
ところが、西川さんは選挙に落選します。それで改めて自分の選挙区の農村をずっと歩いてみたら、もう滅茶苦茶疲弊していて、全然先がないのが見えてしまいました。「農協は何をやっているんだ? 農業の生産性を上げることを、全く考えていないではないか」と気が付いたのです。
そこで西川さんの考えが変わり、「私はこれから開放派になる」と言って、そうなったので、石破さんが「農業のことは、全部西川に頼もう」という動きに今はなっているのです。そのような背景があります。
●農水省の巻き返しと「認定農業者」制度
そういうことで、11月にはついに減反廃止の方針が了承されました。ようやく動き始めたのですが、こういうときに農水省が巻き返しを図ってきます。これまで減反に費やしてきた6,800億円が廃止によって浮いてくる。これを誰に回すのか。競争力会議の委員たちは、それを「認定農業者」に配分しようとしてやってきていました。「認定農業者」とは、企業や大規模農家など、経営などの面で大変努力を払っている、やる気のある農家です。ところが、農水省側がものすごい根回しをして、中小を含めた農家全部に公平に渡すのです。
こうなると意味がないですが、そのようなことが起きているということを、皆さんには知っていてもらいたいのです。一生懸命やっているけども、このようなことが起きるのです。
もう1つ、安倍さんが本部長を務める「農林水産業・地域の活力創造本部」という会合が12月10日に開かれ、農業活性化のため...