テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.05.19

年代で違う「理想の上司」の特徴とは?

 みなさんにとって「理想の上司」とはどんな人ですか。また、それとは逆に「嫌な上司」とはどんな人ですか。明治安田生命が2019年2月15日に発表した調査結果などを中心に理想の上司像を探ります。

3年連続首位の理想の男性上司と女性上司

 はじめに、先述した明治安田生命の「理想の上司」アンケートの調査概要をお伝えします。明治安田生命保険相互会社は、2019年春の新入社員を対象に「理想の上司」アンケート調査を実施しました。

 このアンケート調査は「バラエティ」・「スポーツ選手・監督」・「俳優・歌手」・「文化人」の4部門からそれぞれ「理想の上司」を選出するという方式でおこなわれました。

 ではさっそく調査結果を発表します。理想の男性上司は内村光良、理想の女性上司はアナウンサーの水卜麻美が、ともに3年連続の首位を獲得しました。

「親しみやすい」「知性的・スマート」「頼もしい」

 理想の男性上司は、1位内村光良、2位ムロツヨシ、3位は博多大吉とバナナマンの設楽統でした。内村光良を選んだ理由はダントツで「親しみやすい」の割合が高く、「優しい」「頼もしい」が続きました。

 2位のムロツヨシの主な選出理由は「おもしろい」、そして「親しみやすい」、「明るい」「優しい」でした。理想の男性上司は全体として、「親しみやすい」「知性的・スマート」「頼もしい」を選出理由として挙げる人が多かったようです。

 理想の女性上司は、1位水卜麻美、2位天海祐希、3位が女子レスリングの吉田沙保里でした。水卜麻美が選ばれた理由は、上から順に「親しみやすい」「明るい」「おもしろい」。天海祐希は「頼もしい」「姉御」「知性的・スマート」、吉田沙保里は「頼もしい」「実力がある」「指導力がある」でした。

 理想の女性上司についても、全体としては男性上司と同じく「親しみやすい」「知性的・スマート」「頼もしい」が主な選出理由として挙がりました。

20代の「理想の上司」像とは

 明治安田生命のアンケートは「新入社員」に対する調査でしたが、年を重ねていくと「理想の上司」も変化していくことです。そこで世代別の調査結果もご案内します。

 まず、「新入社員」と同じ世代にあたる20代の「理想の上司」についてです。転職情報サイト「エン転職」(株式会社エン・ジャパン)のアンケート調査を参照します。

 20代男性の1位は「リーダーシップがある」、2位「視野が広い」、3位「決断力がある」。女性の1位は「いつでも相談できる雰囲気がある」、2位「人によって態度を変えない」、3位「決断力がある」でした。

 明治安田生命の調査結果である「親しみやすい」「頼もしい」と通じるものがあります。ちなみに「20代が目指したくない上司像は、「昭和なスポ根タイプ」でした。上からものを言うようなタイプ、オラオラ系で俺について来いというタイプなどは、若手社員には嫌われる傾向にあるようです。若手社員の上司のみなさん、ご注意ください。

年齢を重ねると求める理想が変わる

 さて、同じエン・ジャパンが提供している資料として、「34歳以下」と「35歳以上」に分けて調査したアンケート結果があります。「上司のどんな点を尊敬していますか?」という質問に対して、「34歳以下」は、1位「人柄が信頼できる」、2位「指示が分かりやすい」、3位「知識や経験が豊富」。「35歳以上」は、1位「人柄が信頼できる」、2位「リーダーシップがある」、3位「決断力がある」という結果になりました。

 「34歳以下」と「35歳以上」は「人柄が信頼できる」がトップで共通しています。大きな違いは、若い方が知識や経験を求めるのに対して、年齢を重ねるとよりリーダーシップを求めるようになるということです。

 この点は先述の明治安田生命の調査結果の「知性的・スマート」という回答と共通します。内村光良さんや水卜麻美さんのキャラクターにも「人柄が信頼できる」、「分かりやすい」、「知識や経験が豊富」は備わっていると言えるでしょう。

真のリーダーの条件とは

 世代による違いはあるとはいえ、共通して「頼もしい」「決断力がある」「リーダーシップがある」を理想の上司に求めていることも、以上の結果から分かりました。おそらく普遍的なリーダーシップというものがあるのでしょう。

 歴史学者の山内昌之氏には、『リーダーシップ 胆力と大局観』(新潮社)という著作があります。タイトルにある通り、「胆力」と「大局観」を真のリーダーの条件としています。「胆力」とはいわば「決断力がある」ということです。「大局観」は「視野が広い」と言い換えてもいいでしょう。

 上司の立場からいえば、なるべく部下には好かれたいし、できることなら「理想の上司」でありたいと思うものです。とはいえ、そのために部下のご機嫌をとるようでは本末転倒です。部下の年齢や性別などによってコロコロ態度を変えたり、動揺していては信頼を失います。

 急がば回れ。そう簡単に人は変われるものでもありません。目標は、「昭和なスポ根タイプ」は避けながらも、時間をかけて「胆力」と「大局観」を養っていくことです。

<参考サイト・参考文献>
・明治安田生命 「理想の上司」アンケート調査を実施!
https://www.meijiyasuda.co.jp/profile/news/release/2018/pdf/20190215_01.pdf
・20代が憧れる理想の上司像とは?!│エン転職
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2014/2862.html
・【エン・ジャパン】尊敬する上司の傾向、上司に求めることは?若手は親身な業務のアドバイス、35歳以上はリーダーシップ。―『エン転職』ユーザーアンケート調査 結果発表―
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2018/12653.html
・『リーダーシップ 胆力と大局観』(山内昌之著、新潮社)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

驚愕的インフレを克服したブラジルの奇跡と強さの秘密

驚愕的インフレを克服したブラジルの奇跡と強さの秘密

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(5)多民族国家ブラジルの強さ

グローバル・サウスで注目される6カ国の最後はブラジルである。南米最大の多民族国家として、文化やスポーツなどさまざまな面で注目を集めており、世界の中でもその開放的な国民性には関心が高い。しかし、政治では腐敗やスキャ...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/05/01
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
2

地政学を理解する上で大事な「3つの柱」とは

地政学を理解する上で大事な「3つの柱」とは

地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か

国際政治を地理の観点からひも解く「地政学」という学問。近年、耳にすることも多くなった分野だが、どのような手法や意義を持った学問であるかを学ぶ機会は少ない。その基礎から学ぶことのできる今回のシリーズ。まず第1話では...
収録日:2024/03/27
追加日:2024/04/30
小原雅博
東京大学名誉教授
3

皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか

皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか

天皇のあり方と近代日本(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室

日本の歴史のなかで、天皇や皇室の姿は大きく移り変わってきた。日本が第二次世界大戦に負けた後、戦後日本的な象徴天皇の姿が確立されていったが、今、その「戦後の皇室像」の変化が求められているのではないか。その問題意識...
収録日:2021/11/02
追加日:2021/12/16
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授
4

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教

ロシアや中華人民共和国など、自由と民主主義を否定する権威主義国の脅威の増大。一方、日本、アメリカ、西欧など自由主義諸国における政治の劣化とポピュリズム……。いま、自由と民主主義は大きな試練の時を迎えている。このよ...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/03/26
橋爪大三郎
社会学者
5

石田梅岩が唱えた「商売の基本」、不足の共有化が鍵

石田梅岩が唱えた「商売の基本」、不足の共有化が鍵

石田梅岩の心学に学ぶ(4)商売の基本と梅岩教学

石田梅岩の大きなテーマである「商売の基本」はどこにあるか。それは「不足」についての認識を共有化することだと田口氏は言う。20年の探究が実を結び、石田梅岩が講席を開いたのは1729年。以後、講席は15年続くが、本人の講義...
収録日:2022/06/28
追加日:2024/04/29
田口佳史
東洋思想研究家