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「便利すぎる」スマホの使い過ぎのリスクとは
近年注目されている「スマホ認知症」
家の中ではSNSや動画の閲覧、外出したら写真撮影、キャッシュレス決済、地図の確認などなど……現代の生活において、スマホはもはやなくてはならない必須アイテムですよね。しかし近年、そんなスマホの使いすぎによる「スマホ認知症」のリスクに注目が集まっていることをご存知でしょうか。「スマホ認知症」とは、正式に認められた病名ではありませんが、スマホを長時間使い続けることによって脳が疲労し、「認知症のような症状」が現れる状態を指しています。今年6月には都内の病院に全国初のスマホ認知症外来がオンラインで開設されており、今後さらに研究が進められるでしょう。
スマホ認知症外来は、スマホなどのデジタル機器の使いすぎによる一時的な記憶障害の治療が専門で、特に働き盛りの30代から40代の患者が多いとのこと。この外来を開設した内野勝行院長の説明では、スマホのショート動画の流し見などを長時間続けると、情報処理に必要なドーパミンという脳内物質の放出が間に合わなくなり、徐々にスマホを見ていないときでもドーパミンが放出されにくくなってしまうのだとか。この結果、日常生活でも脳の情報処理が正常に機能しなくなり、認知症のような症状が出てしまうのです。
スマホ認知症はあくまで一時的な症状と考えられていますが、65歳未満で発症する若年性認知症のリスクを高める可能性も指摘されており、軽視できない症状といえます。
こんな症状はスマホ認知症かも?
それでは、スマホ認知症ではどのような症状が現れるのでしょうか。具体的な例を見てみましょう。・物忘れがひどくなる、記憶力が低下する:認知症の初期症状でも代表的な症状のひとつですよね。やらなければならないことや人の名前などを忘れてしまい、思い出せなくなります。この原因は、スマホですぐに情報を検索できる状況下では、脳が「じゃあ覚えなくていいや」と判断して記憶を定着させないからと考えられています。
・注意力散漫になる、集中力が低下する:スマホがそばにあると通知などが気になって仕事や勉強が進まなくなりがちです。海外の実験では、スマホを教室外に置いた学生のほうがスマホをサイレントモードにしてポケットに入れた学生より記憶力テストで好成績をおさめたというデータもあり、スマホが集中力の妨げになりやすいことがわかります。
・コミュニケーション能力が低下する:コミュニケーションの“瞬発力”が鈍り、伝えたい内容がすぐにまとまらなかったり、相手の言葉をすぐに理解できなくなったりします。リモート会議でコミュニケーションを取っていても、オンラインでは細かな感情や空気を読み取ることが難しく、共感する力が弱まるとも考えられています。
・順序立てた行動ができなくなる:物事の段取りを組み立てられなくなったり、計画を立ててもそのとおりに進められなくなったりします。作業の手順が頭の中でまとまらず、今まで簡単にできていたことが非常に時間をかけないとできなくなってしまうことも。遂行機能障害や実行機能障害とも呼ばれ、脳卒中の後遺症でも見られる症状です。
また、情緒不安定になったりふさぎ込んだりなど、うつ病と似た症状が出ることもあり、ほかの病気との見極めも必要になります。
スマホ認知症にならないためには
スマホ認知症は確かに認知症と症状が似ており、恐ろしく感じてしまう方も多いでしょう。しかし、ただスマホを使っているだけで発症するわけではありません。海外の研究では、テクノロジーを適切に使うことで認知機能の低下リスクが58%減少したというデータも出ています。結局のところスマホはあくまで道具であり、有益か有害かは使う人間次第というわけです。スマホ認知症を予防して、上手にスマホとつきあうために、以下のような方法を参考にしてみてください。
・意識的にデジタルデトックスをする:気がつくとついついスマホを触ってしまう……という方は特に、意識してスマホから距離を取ることが大切。あえてスマホが使えない状況にすることで、集中する時間を確保できます。タイマーでロックをかけてスマホを触れなくするコンテナなどもあるので、活用してもよいでしょう。
・目的のある使い方をする:なんとなく動画を見続けてしまうような、だらだらしたスマホの使い方は脳を疲労させてしまいます。大切なのは、脳が疲れ切ってしまう前にきちんと休ませてあげること。必要な調べ物が終わったらすぐに切り上げる、見たい動画や配信だけを見て終わりにするなどして、メリハリのある使い方をしてください。
・脳を疲れさせない生活習慣を心がける:目的のある使い方にも通じることですが、スマホ認知症の原因の多くは脳の疲労と考えられています。良質な睡眠が取れるように眠る直前のスマホの使用は控えたり、ときには瞑想をして脳を“からっぽ”にしたりして、脳をリラックスさせてあげるとスマホ認知症の予防につながりますよ。
また、冒頭でご紹介した内野院長が提案している8項目のチェックリストも参考になります。
・スマホをいつもすぐ使えるようにしている
・知人の名前がすぐに思い出せない
・だんだん漢字が書けなくなっている
・メモ代わりに写真を撮る習慣がある
・スマホでしか調べ物をしない
・日頃から睡眠不足と感じる
・物事に対して意欲も興味も湧かない
・仕事や家事などの段取りができなくなってきた
このチェックリストのうち、3つ以上が該当する場合はスマホ認知症に注意する必要があるとされています。
スマホがスマホ認知症の原因になってしまうか、認知機能低下を回避する手段になるかは使い方次第です。スマホに「使われる」ことがないよう、自分の意思で「使いこなす」ように心がけてください。
<参考サイト>
・スマホ認知症とは? 原因やおもな症状・危険性・対処法|朝日生命
https://anshinkaigo.asahi-life.co.jp/activity/ninchisho/column1/07/
・ “全国初”専門外来を開設 スマホ使い過ぎで…物忘れなどリスク増の恐れ|TOKYO MX+
https://s.mxtv.jp/tokyomxplus/mx/article/202506261010/detail/
・スマホ認知症とは?重大なリスクと予防・治し方まで徹底解説|健達ねっと
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/dementia/1332
・スマホ認知症とは? 原因やおもな症状・危険性・対処法|朝日生命
https://anshinkaigo.asahi-life.co.jp/activity/ninchisho/column1/07/
・ “全国初”専門外来を開設 スマホ使い過ぎで…物忘れなどリスク増の恐れ|TOKYO MX+
https://s.mxtv.jp/tokyomxplus/mx/article/202506261010/detail/
・スマホ認知症とは?重大なリスクと予防・治し方まで徹底解説|健達ねっと
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/dementia/1332
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