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DATE/ 2023.10.15

廃止になった「年金手帳」今後はどうなる?

 「年金手帳」とは、公的年金の加入者に交付されていた手帳です。「基礎年金番号」(※)や年金に初めて加入した年月日などが記載されており、国民年金と厚生年金の切り替えや年金の請求手続きなどに使用さていました。

※「基礎年金番号」4桁と6桁から成る10桁の番号で、一人に一つずつ付番された年金番号。番号は生涯不変で、加入する制度が変わっても同一番号で加入記録を管理する。1997(平成9)年1月に導入され、公的年金制度で共通して使用される。

どうして「年金手帳」は廃止になったの?

 以上の説明で、なにか気がついた点はないでしょうか?そうです、説明が過去形であるということです。

 ではなぜ、年金手帳に関する説明は過去形なのでしょうか。それは、年金手帳が2022(令和4)年3月末で廃止となっているからです。

 冒頭でも述べたとおり、公的年金の加入者に交付されていた手帳である年金手帳が手帳形式になっている理由は、年金の履歴や基礎年金番号といった年金関連の情報をまとめて記入することによって一元管理し、本人および関係省庁が確認しやすくするめでした。そのため、かつては、年金関係の申請や各種届出をする際には、必ず年金手帳が必要でした。

 しかし、現在では、国民一人一人に固有の番号である個人番号(マイナンバー)を割り当てられ、さらに基礎年金番号の紐づけが進みました。

 そして、マイナンバーで年金請求や年金関係の申請や各種届出や、「ねんきんネット」(※)の登録もできるなど、様々な手続きが簡略化されることとなりました。

 以上のような理由から年金手帳を発行する必要性がなくなり、新規の発行が停止されることになりました。ただし、マイナンバーがあれば基礎年金番号が不要になるというわけではありません。

※「ねんきんネット」日本年金機構が2011年2月から提供しているインターネットサービス。24時間いつでも年金記録を確認できる。

「基礎年金番号通知書」の発行と年金制度

 また、年金手帳が廃止されたといっても、年金制度が廃止されたわけではありません。日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、全員が国民年金に加入する必要があります。

 そのため、年金手帳の廃止された同年の2022(令和4)年4月以降は、被保険者資格の取得手続きをとり、初めて年金制度に加入する人に、年金手帳に代わって基礎年金番号が記載された「基礎年金番号通知書」が発行されています。

 なお、すでに年金手帳を持っている人には、基礎年金番号通知書は発行されません。年金手帳を持っている人は大切に保管してください。

 ただし、年金手帳をなくした場合、年金手帳は再発行できませんが、基礎年金番号通知書を発行してもらうことは可能です。もしものときは、「ねんきんネット」で手続きを調べたり、勤務先を通して事業所を管轄する年金事務所で再交付手続きをしたり、住所地を管轄する年金事務所で手続き方法を問い合わせたりしてみてください。

 時代とともに年金手帳は廃止となりましたが、重要な国の社会保障制度である公的年金が廃止となったわけではありません。制度の内容や変更を正しく理解し適切に活用することで、現在や未来の年金受給に役立てることが肝要です。

<参考文献・参考サイト>
・『デジタル大辞泉』(小学館)
・『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)
・『現代用語の基礎知識』(自由国民社)
・ねんきんネット - 日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/n_net/
年金 - 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/index.html
・2022年4月に年金手帳が廃止 - 厚生年金と国民年金で変わること - マネーフォワード
https://biz.moneyforward.com/payroll/basic/54948/
年金手帳が廃止に!日常生活にはどんな影響がある? - REISM
https://rent.re-ism.co.jp/mag/okane/okane087/
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