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DATE/ 2025.07.18

介護の始まり、5つの備え

親が健康なうちに介護の備えを

 親に介護の話を切り出すのはなかなか難しいですよね。しかし、いつ介護が必要になるのかは誰にも予想できません。筆者の母親は脳卒中を発症して突然介護が必要になってしまいました。介護についての話し合いはしていなかったので、介護の役割分担もお金のことも後手後手で決めることになり、とても大変な思いをしました。

 介護といえば加齢による体力低下や認知症などが原因でゆるやかに必要性が高まると考えている方もいらっしゃるでしょう。しかし、筆者の例のように突然必要となる可能性もあるので、親が健康なうちに介護に関する話し合いをしておいたほうがいざというときに安心なのは間違いないです。

 そこで今回は、介護が始まる前の備えを5つのステップに分けてご紹介します。

介護に備えておきたい5つのポイント

1:親の“変化”を見逃さない

 介護が必要になるきっかけは、徐々に現れてくることもあります。たとえば食事を忘れたり、身だしなみがだらしなくなったりという“兆し”があったら要注意。小さな音が聞き取りにくくなったとか、転びやすくなったなどの身体的変化も見逃さないようにしてください。日常の中にある「小さな異変」に気づくことが介護の備えの第一歩になります。離れて暮らしていても定期的に電話をかけたり、顔を見に行ったりして意識的に接触を持ち続けましょう。

2:兄弟・家族と話し合う機会をつくる

 親が健康なうちに兄弟や家族の間で役割や希望を話し合っておくと、いざというときのトラブルを減らせます。介護の負担は肉体的にも精神的にも大きな疲労やストレスになるので、誰か一人に任せっきりにするのは絶対に避けましょう。それぞれの言い分や考え方を確認しながら、納得のいく役割分担をしてください。このとき大切なのが、お互いに相手の意見を尊重すること。考え方が人によって違うのは当然です。否定や断定はせず、傾聴の姿勢で話し合いましょう。

3:お金のこと、今から見える化

 介護にかかるお金の確認はとても重要です。基本的な介護費用の平均はもちろん、介護保険の適用範囲や自己負担額、施設入所と在宅の違いなどを、介護が必要になる前に調べておきましょう。親の年金、預貯金、保険の現状を確認して「見える化」しておくことも大切。親とお金の話をするのはハードルが高いですが、「家族の将来のために欠かせないこと」と説明して協力をあおぎましょう。親も自分も含めた家族全員のお金を誰がどう管理するのか決めておくと安心感がありますよ。

4:親の希望を聞いておく

 介護が始まったらどうしてほしいのかを事前に確認しておくと、親子どちらにとっても安心材料となります。親にも「住み慣れた家で過ごしたい」とか「施設に入りたくない」などの考えがあるでしょう。しかし、介護が始まってからこのような考えを聞き出そうとしても遠慮して真意を話してくれなかったり、重病で意思表示ができなくなっていたりするかもしれません。延命治療や看取りの希望などの“終活”も含めて親本人の気持ちや希望を早めに共有しておいてください。

5:自分の「働き方・暮らし方」を見直す

 介護は介護する側のライフスタイルにも大きな影響を及ぼします。現状の自分自身の勤務形態で仕事を続けられるのか、職場にはどのような介護休業制度があるのか、在宅勤務は可能か、副業は必要かなどを具体的にシミュレーションして備えましょう。大切なのは「自分の生活を守りながら介護する」という視点です。自分が犠牲になっていると感じると介護は続けられません。近年は介護と仕事の両立を支援する制度も増えているので有効活用してください。

「介護はまだ先の話」と思えているうちに介護への備えをすることが、将来の大きな安心感につながります。親のためにも自分自身のためにも、少しずつで大丈夫なので、介護についての話し合いを始めてみてください。

<参考サイト>
・親の介護が始まる前に知っておきたい「介護の備え」5つのポイント│SONOSAKI LIFE
https://www.sonosaki-life.jp/shop/pg/1column-kaigo-sonae/?srsltid=AfmBOorYJ6GET2Y_GL4NviZuxIkvOb7NR26vyMk_RjlJVIN1SRaZWFBe
・親の介護に対する心得とは?知っておきたい5つの心得をご紹介│あなぶきの介護 
https://www.a-living.jp/contents/2371/
・何歳から介護が必要になる? 介護が必要となる平均年齢と事前に行なっておきたい5つのこと│朝日生命 
https://anshinkaigo.asahi-life.co.jp/activity/kaigo/column27/
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