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DATE/ 2017.01.20

出世せずとも幸せ?スーパーヒラ社員という働き方

 少子高齢化の影響で人口ピラミッドが崩れた現在、年功序列で齢を重ねれば自動的に出世するということは過去の話。少ないポストを争って、昔以上に激しい競争を勝ち抜かなくてはいけなくなりました。

 しかも実力主義でない組織がどんどん淘汰されている中、若年層管理職の割合は増加し、地位と年齢の逆転はもう当たり前の世の中です。4、50代以上のおじさん世代が誇りをもって働くのはとても大変な世の中になりました。

地位とは関係なしにイキイキ働くおじさんたち

 一方、ヒラ社員としてイキイキ働く中高年が増えてきたのもまた事実。彼らは「スーパーヒラ」といわれ、会社の中でも重宝される存在です。

 ヒラ社員だからといって仕事ができないわけではありません。むしろスーパーといわれるほどに、仕事はできる人材でしょう。ただ、ポスト争いに時間や精神力を割かず、自分の職分に全精力を投入しているというわけです。

 ポジションはヒラでも、彼らはその職能で評価され、尊敬を集めているのです。場合によっては、社内調整に明け暮れる管理職よりも、世の中に有用な付加価値を生み出すスーパーヒラの方が、よっぽど社会に貢献しているとも言えるかも知れません。

名プレイヤーは名監督にあらず

 最近では、管理職の職分であるマネジメントも、そもそもひとつのスキルとしてとらえなおされてきています。

 営業や研究開発、マーケティングや経理といったひとつひとつの職能で秀でた人が、そのことを評価され管理職になっても特に成果を出せないということはよくあります。

 同時に、ヒラとしてはいまひとつパっとしなかった社員が、大量離職などで急に管理職をまかされた結果、予想外に力を発揮するということもあるのです。

 もちろん今までの仕事の能力が急にアップするわけではありません。営業は下手でも、経理は計算間違いだらけでも、マネジメントという才能がもともとあったということです。

 団体スポーツの世界では昔から、「名選手は名監督にあらず」という言葉がささやかれてきましたが、これはビジネスパーソンの世界でも同じことなのです。

各専門分野の習熟度で給料が決まる

 10年ほど前、「ハケンの品格」というドラマがヒットしました。超高級のスーパー派遣社員が仕事の様々な難問を解決していくという話ですが、主人公は非正規雇用にもかかわらずその能力の高さから時給は破格の3,500円という設定でした。

 しかし、現在はITエンジニアなど人手不足のジャンルでは、5,000円の時給も珍しくありません。彼らはもちろん管理職ではありません。しかし、大手企業の管理職なみの給料をもらっています。

 場合によっては、管理職よりも高い給与をもらう専門職も増えてきました。報酬を決める要素はシンプルにその専門領域の社会的なニーズと、個人の能力の高さです。

 スーパーヒラが「スーパー」といわれるのも、その能力の高さがゆえです。生み出す価値が高ければ、その分報酬も評価も高いというわけです。

ワークライフバランスに優れた働き方

 管理職ではないので、時間は自由になりますし、忙しくても時間外手当はちゃんとつきます。職能で評価されているので、人間関係に煩わされたり社内政治にふりまわされる心配も少ないでしょう。

 本当に会社が嫌になったら、専門性にさえ優れていれば、転職も可能です(ただし日本企業の場合、その会社でしか通用しない専門性も多いので要注意ですが)。せっかく上がった出世の階段をまた一から昇りなおさなくてはいけないので、なかなか転職に踏み切れない管理職志向の働き方とは違うのです。

 とある調査では、40代の4割がスーパーヒラという働き方を理想と答えたそうですが、それもうなずけます。

社会が流動化している

 もちろん管理職志向の人も、マネジメントの専門性を高めることは可能です。MBAを取得するのもそのひとつでしょう。そうすれば、転職をするたびに地位もうなぎのぼりにアップしていくというエリート的な働き方も可能になるでしょう。

 現代は人も仕事も激しく変化する社会です。10年後には今ある仕事のいくつかは消えている可能性はあるでしょう。その一方で新しい仕事もいくつか増えていることでしょう。すでにこの20年ほど、そういった時代でした。

 そもそもひとつの企業で順調に出世して、ちゃんと定年を迎えるという働き方自体が時代遅れになってしまったのです。時代の変化についていきながら、自分特有の能力をはぐくみ、社内政治ではない本当の実績を積んでいくという、本来の仕事の形が求められる時代なのです。

 スーパーヒラという働き方は、いたずらに出世競争を繰り広げるよりも、安全で安心、心も充実する働き方なのかも知れません。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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テンミニッツTV編集部
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