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DATE/ 2018.04.04

親方日の丸!郵便局員の平均年収は?

 気になる平均年収のなかで、どうにもハッキリ・スッキリしないのが、郵便局員です。郵政公社が完全に民営化されて以来、会社の名前も「日本郵政」と「日本郵便」があって紛らわしく、素人には区別がつきません。とりわけ目を引くのは、日本郵政の有価証券報告書に記された平均年間給与769.2万円(43.3歳/勤続16.3年)の数字です。郵便局員のお給料は、そんなによかったのでしょうか?調べてみました。

郵便局員の給与は、諸手当頼み

 最初に種明かしをすると。日本郵政は総務省所管の特殊会社という扱いになります。民間で言えば持株会社(ホールディングカンパニー)のようなもので、郵政三事業である日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命などの親会社にあたります。ですから、日本郵政の従業員に、郵便・物流事業や金融窓口事業を担当する人はいません。平均年間給与769.2万円は、あくまでも霞が関の日本郵政に勤め、グループの経営戦略策定に向かっている2761人の平均です。

 郵便・物流事業に携わる、いわゆる「郵便局員」(日本郵便の従業員)は全国で96,880人。また、「期間雇用」と呼ばれる臨時従業員が11万人近くになります。日本郵便で正規採用される社員は、「総合職」「地域基幹職」「一般職」の3種類があり、給与も期待される役割も異なっています。一般職の標準業務は、郵便局窓口、郵便物の区分・集配、保険の契約・支払・貸付等、各種営業事務等となっているので、こちらが「郵便局員」のイメージに近いのではないでしょうか。

 一般職のモデル年収は、高卒初任で年収312万円、大卒初任で342万円、36歳で415万円と発表されています。ただし、給与の構成は、基本給(役割基本給+役割成果給)に諸手当(調整手当、扶養手当、住居手当、通勤手当、超勤手当、特勤手当等)が加算されるかたち。36歳のモデル給与では、月々の諸手当が10万円以上に上る計算(29歳結婚、32歳第1子誕生)で、賞与も4.3か月となかなかの好待遇です。

20代と50代の月収差が10万円しかない運輸、郵便業

 期間雇用社員も合わせた動向は、厚労省が毎年出している「賃金構造基本統計調査」を参照してみました。ただ、ここでは「運輸業、郵便業」がひとくくりにされているため、郵便局員だけの賃金状況は分かりません。

 運輸業、郵便業で働く男性の平均月収は約28.3万円(単純に12をかけると340万円弱)。女性の平均月収は約22.2万円(12をかけて266万円)となっています。全産業で比較すると、男女それぞれ以下のような順になっており、男性は12分類の下から3番目、女性は下から4番目の位置づけです。

<男性>
宿泊・飲食サービス業<その他のサービス業<運輸業・郵便業<生活関連サービス業<製造業
<女性>
宿泊・飲食サービス業<製造業<その他のサービス業<運輸業・郵便業<生活関連サービス業

 賃金カーブを見ると、20~24歳に21.1万円でスタートする男性は、他の産業同様50~54歳にピークがありますが、約31万円ですから、上昇率の波は非常にゆるやかです。月収差が10万円弱となると、若手を慰労するのも厳しいのではないでしょうか。20~24歳を100とした年齢階級間賃金格差の数字で、どんなに続けて働いても150(1.5倍)に達しないのは、運輸業・郵便業だけです。

 よく見ると、45~54歳までの10年間、運輸業・郵便業の収入は全産業中のワーストになっています。運輸業も含まれているので明確には言えませんが、他の産業であれば役職がつく働き盛りの年代、郵便局の役職は日本郵政の社員(彼らは郵便業にはカウントされません)が占めるため、伸び悩みがあるのではないでしょうか。

非正規労働者にも「手当」を要求していくJP労組

 続けていても、頑張っても、郵便業の年収がそれほどアップしない原因を、正社員・正職員に対する非正規労働の割合の高さだと指摘する人もいます。日本郵政グループ労働組合(JP労組)は今、国内で最も大きな労働組合ですが、組合員数24万人のうち、非正規労働者は4分の1の6万人。待遇格差の解消に熱心な組合で、2018年の春季労使交渉では、非正規社員にも扶養手当や年末年始勤務手当を支給するよう要求するなどの方針を明らかにしています。

 現在のところ、どの程度の格差があるのかというと、正社員・正職員の平均月収を100としたときの賃金格差が68.9。正社員の年収が500万円だとすると、345万円に留まります。全産業平均の格差は65.8ですから、運輸業・郵便業がとりわけブラックだとも言えないところです。

 ちなみに、社員や元社員の投稿から評判スコアを割り出している「カイシャの評判」によると、日本郵便(郵便局)の平均年収は401万円(回答者869人、平均年齢33歳)で、納得度は53点。先の一般職モデル33歳は408万円なので、なかなか信頼のおける回答が集まっているようです。アルバイトであっても勤続年数次第で多少のボーナスが支給される点、残業手当と休みはしっかりもらえる点が、働く側からの評価ポイントとなっています。

 どんな会社でも社長からアルバイトに至るまで、待遇の差があるのは当然ですが、郵便局員については「同じ仕事内容なのに待遇が違いすぎる」という点が社会問題となり、「同一労働同一賃金」にまで発展しているのでしょう。

郵便配達もゆうちょ銀行窓口もAI化が進む?

 郵便配達員については、週刊現代「経済の死角 2020年になくなる可能性のある仕事」(2013年7月25日)の記事中で、危険度大と指摘されています。実際に日本郵便では、ドローンやAIの活用で配達を「最適化」する道を探っています。配送ロボットの実証実験は、すでに2017年末、福島県南相馬市で行われました。配達だけでなく仕分けや道順の組み立てなど、郵便配達の業務はAIに取って代わられる日が、何年か後には来そうです。

 同様に、AI化が早くくると言われているのが、銀行の窓口業務です。全国の郵便局内などで働くゆうちょ銀行従業員の平均年間給与は654.5万円(平成29年3月31日現在。従業員数12,965人:42.5歳/勤続19.1年)。日本郵便や日本郵政同様、職位は3種類に分かれていて、初任給は総合職20.8~23.3万円、エリア基幹職では16.2~18.2万円(いずれも大卒、平成28年度)と公表されています。

 銀行業界の中での年収ランキングを見ると、ゆうちょ銀行は、地方銀行並みの41位にランクされ、1位の三井住友FGと比べると、ほぼ半分です。しかし、労働組合の力が強く、残業はほとんどなし。福利厚生もしっかりしていて、有休完全消化が奨励される社風は、そもそもメガバンクと比べるのが無理でしょう。それでも、「親方日の丸」時代に築き上げた立地のよさとブランド力は、今も最強を誇っています。

 文系学生の就職先として、現在のところ21位と健闘している日本郵政グループ(「マイナビ2018就職企業ランキング」調べ)。この先もAI化の波を乗り越えて、頼れる就職先であり続けてくれるでしょうか。

<参考サイト>
・日本郵政株式会社「有価証券報告書」(第12期:平成28年4月1日~29年3月31日)
http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS06651/f0228b03/cc42/43b5/84bd/4ae176c926b7/20170623145914968s.pdf
・株式会社ゆうちょ銀行「有価証券報告書」(第11期:平成28年4月1日~29年3月31日)
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=yuho_pdf&sid=2527066
・厚生労働省:賃金構造基本統計調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2017/dl/05.pdf
・カイシャの評判「日本郵便(郵便局)の評判・口コミ」
https://en-hyouban.com/company/10105501170/
・マイナビ:2018年卒 大学生就職企業人気ランキング
https://job.mynavi.jp/conts/2018/tok/nikkei/ranking/ranking_index.html
(10MTV編集部)