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DATE/ 2024.08.24

「仏壇に絶対してはいけないこと」とは?

 日本には、神道、仏教、キリスト教を中心に多種多様の宗教文化が根付いています。中でも仏教は神道とともに最も信仰され、宗教儀礼としてもなじみ深い様式になるのではないでしょうか。特に仏壇に手を合わせる行為は生活の中でも最も身近な宗教儀礼の一つ。今回はそんな仏壇にまつわるNG行為についてフォーカスしてみます。

仏壇にお供えしてはいけないモノ

 ひとくちに仏教といってもたくさんの宗派があります。宗派ごとのNG行為もありますが、仏教における一般的教義から注目したいのは「五戒」というルールです。

 「五戒」は、仏教徒として自身心に誓って守るべき徳目です。不殺生=生命のあるものを殺さない、不偸盗=与えられないものを取らない、不邪淫=みだらな男女関係を結ばない、不妄語=いつわりを語らない、不飲酒=酒類を飲まない、という5つの戒めから、仏壇へのお供え物のルールがあります。

・肉や魚、鶏卵をお供えしてはいけない

 これは、「不殺生」の戒めに基づくところ。肉や魚は腐敗といったリスクも高いことから仏壇に供える行為は控えた方がよいでしょう。

・アルコール飲料をお供えしてはいけない

 これは、「不飲酒」の戒めに基づくところ。とはいっても、お中元やお歳暮といった贈答品目、故人がアルコール飲料を好んでいたから仏壇に供えるご家庭は多いです。

・毒や棘、蔓のある植物をお供えしてはいけない

 生花のお供えにもルールがあります。花屋さんには、菊やリンドウ・カーネーションなどが仏花として販売されています。タブーとなるのは、毒や棘、蔓のある植物です。棘や毒は殺生を連想させ、蔓は「蔓に絡まり成仏できない」ことを連想させることから仏花としてはNGです。また、すぐ枯れてしまったり、花びらが散ってしまう花も控えたほうがよいでしょう。

 加えて、線香の香りの妨げになる香りの強い花、黒っぽい色の花は避けたほうがよいといわれています。

・水やお茶をお供えしてはいけない

 水やお茶は、仏様の喉が乾くという考えが存在していないため、不要なお供え物とされています。こちらは、仏教の宗派の中でも、特に浄土真宗で主張される考え方です。水やお茶は、絶対にお供えしてはいけないということはありませんが、浄土真宗のご家庭へのお供物としては配慮が必要です。

仏壇における基本NG行為

 お供え以外でもしてはいけない行為がいくつかあります。

・ロウソクの火を息を吹きかけて消してはいけない

 仏壇で灯されるロウソクは、魂の道標と考えられていることから、不浄な息を吹きかけてはいけません。

・お焼香の中にロウを入れてはいけない

 不完全燃焼のロウはニオイがきついので、お焼香のいい香りを損なわないよう注意しましょう。

・先祖を拝んではいけない

 仏壇は先祖を偲ぶためにあります。先祖を拝むのは、間違いに当たる行為。拝む対象は本尊になります。ご家族の宗派を把握し、ご本尊を知っておきましょう。

 こうした考え方から、遺影を仏壇の中に飾ることは避けましょう。仏壇の中に遺影を飾ってしまうと本尊が隠れてしまい、仏様に対して失礼にあたります。

 遺影を飾る位置ですが、仏壇の正面や真上は、仏様に対してお尻を向けたり見下ろしたりする位置であるため、遺影を飾る場所としては不適切です。仏様に失礼になる位置を避けて飾るようにしましょう。

 このように仏壇にまつわるNG行為は、教義や宗派によって見解は様々です。いちど、それぞれのご家庭の宗派を確認しつつ、お寺に確認してみることをお勧めします。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授