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DATE/ 2020.05.27

コロナ禍で注目された「アマビエ」とは何か?

 ウロコ、三本足、くちばし、長い髪。人魚もしくは半魚人と言ったほうがいいのかもしれません。これは半人半漁の妖怪「アマビエ」です。江戸時代に「もし疫病が流行ったら私の姿を描き写して人々に見せよ」と言ったとされています。新型コロナウイルス禍において、護符やロゴに止まらず、和菓子、飴、ビスケットになるなどにわかに注目を集めています。ではこの「アマビエ」とは一体なんなのでしょうか。

アマビエは江戸時代に登場した妖怪

 アマビエが出現したのは江戸時代後期の弘化3年(1846年)、肥後国(現・熊本県)とのこと。光輝く姿で海中から現れ、「当年より6ヶ年の間は諸国で豊作が続くが疫病も流行する。私の姿を描いた絵を人々に早々に見せよ」と告げたといいます。このアマビエ(アマビヱ)としての資料例はたった一つ、京都大学に残されているだけですが、いくつかの要素が共通した「アマビコ(天彦/天日子)」の資料はもう少しあるようです。

 「明治妖怪新聞」(柏書房)などの著書がある湯本豪一さんは朝日新聞の取材でより詳しい事情を解説しています。これによると、明治8年の「東京日日新聞」には、凶作を予言した「天日子尊(あまびこそん)」という幻獣の記載があるそうです。家ごとに天日子尊の姿を写したものを貼り、朝夕拝むことで災難を逃れられるとされたとのこと。アマビエと同種と考えられるものには、「あま彦(アマビコ)」の他にも、アマビエと同じく肥後国に現れたとされる「アリエ」、半人半牛の「件(くだん)」、人魚のような姿の「神社姫」などの記録が残っているそうです。

アマビエは人を繋ぐ

 現代に再び蘇らせたのは、「ゲゲゲの鬼太郎」の作者で妖怪研究家としても知られた水木しげるさんでした。これがおよそ20年前のこと。そこから現代、アマビエがブームの端緒となったのが3月に起こったTwitterでの「アマビエチャレンジ」です。ハッシュタグ「#アマビエ」を含むツイートは多い日で3万件を超えました。投稿ではイラストにとどまらず、動画、ぬいぐるみ、ラテアートなども登場しています。また、厚生労働省もSNSの感染拡大防止キャンペーンのロゴとしてアマビエを起用するなど、一気に多くの人に知られる存在となりました。

 ネット通販サイトで「アマビエ」を検索すると、スタンプ、キーホルダー、せんべい、お酒、マスク、Tシャツ、スマホケースなどなど、実にさまざまな商品がヒットします。初登場から174年経った現代でも、私たちはアマビエをみて笑ったり、慰められたりしています。アマビエは「姿を描いた絵を人々に見せる」よういいました。人同士が接触できなくてもみんな同じものを見ていると思えば、つながりを感じます。つながることで私たちの気持ちも安らぎます。アマビエは世の人々が不安な時、こうやって橋渡しになって人同士を繋いで励ましてきた存在といえるのかもしれません。

<参考サイト>
・アマビエ、いち早く描いていた「国民的漫画家」コロナウイルスで注目|withnews
https://withnews.jp/article/f0200320000qq000000000000000W06910201qq000020721A
・新型コロナウイルス感染症について│厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
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