『江戸名所図会』で歩く東京~内藤新宿
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繁華街・新宿のルーツ、江戸時代の遊女が働く飯盛旅籠とは
『江戸名所図会』で歩く東京~内藤新宿(2)「夜の街」新宿の原点
歴史と社会
堀口茉純(歴史作家/江戸風俗研究家)
歌舞伎町を筆頭に、東京でも有数の繁華街を持つ新宿だが、その礎は江戸時代の内藤新宿にあった。遊女が働く飯盛旅籠(めしもりはたご)によって、安価に遊興できる庶民の「夜の街」として栄えた内藤新宿の様子を、『江戸名所図会』に収められた「四谷内藤新駅(じゅく)」という1枚の絵からひもとく。また、今回は実際に現存する太宗寺に出向き、かつての内藤新宿の名残りを味わう。(全2話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分35秒
収録日:2024年2月19日
追加日:2024年4月28日
≪全文≫

●内藤新宿の活気が描かれた「四谷内藤新駅(じゅく)」


―― 次に見ますのが、『江戸名所図会』のこの1枚ですね。

堀口 はい、そうですね。その中の「四谷内藤新駅(じゅく)」という1枚です。

―― はい。

堀口 右上の書き込みのところに「節季候の来ては風雅を師走かな」という芭蕉の歌が書かれているのですけど、「節季候(せきぞろ)」というのは、ちょうど絵の真ん中の辺りに、家に向かって芸を見せている集団がいます。

―― はい。

堀口 こういうふうに、年末になると家々にやってくる門付(かどつけ)の芸人さんがいたのです。これを「節季候」といって、彼らが「節季候、節季候」といって、歌や踊りを勝手に披露してお金をいただくという強引なやり方ではあるのですが、芸人さんです。

―― ひと昔前でいうと、流しで歌う方などが飲んでいるところにやってきて、というのがありましたよね。それに近いとはいえませんが、ある意味では、そうやって強引にやってきたわけですね。

堀口 そうです。歳末の忙しい時期ですので、すぐにお金を払って帰ってもらおうというようなお宅も多かったようです。

―― なるほど。

堀口 つまり、年末の内藤新宿の風景だということで、お正月に向けたお餅つきの様子なども描かれています。

―― 『江戸名所図会』のこういう絵を見ていくと、皆さん1人ひとりが生き生きと描かれていて面白いですよね。

堀口 そうなのですよ。

―― 見ていて飽きるところがないといいますか、何をしている人なのだろうと。ご解説いただくと、そういうことなのね、とよくわかります。

堀口 本当に、1人ひとりにストーリーがあるのです。

―― ありそうですよね。

堀口 はい。じっくり見ていきたいと思います。

―― はい。

堀口 餅つきの様子であったり、人や馬がすごく道に出ていまして、宿場町はにぎわっていた場所なのだということも伝わってきます。そして、やはり内藤新宿らしい部分というのが、この家の中の様子です。

―― 家の中でございますか。

堀口 はい。

―― これは、家の中で何か作業をしている絵になるのでしょうか。

堀口 そうですね。人が外から中に向かっていろいろと訴えかけているような感じがします。

―― そうですね。

堀口 内側にはきれいな女性たちも、ちらほらと見...

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