経営戦略としての働き方改革
人口オーナス期の日本がいま行うべき「働き方改革」とは
経営戦略としての働き方改革(1)人口ボーナス・オーナス
経営ビジネス
小室淑恵(株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長)
アベノミクスの成長戦略の一つである「働き方改革」のもと、多くの企業が長時間労働の是正を迫られている。中でもポイントとなるのは「女性活躍」である。株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長・小室淑恵氏が、世界の実情と日本が成功するためのポイントを解説する。第1回目の今回は、働き方改革を進める上で基本となる「人口ボーナス・オーナス」という考え方についてだ。(全3話中第1話)
時間:16分20秒
収録日:2017年2月21日
追加日:2017年3月23日
収録日:2017年2月21日
追加日:2017年3月23日
≪全文≫
●「アジアの奇跡」を実現した「人口ボーナス期」
こんにちは、株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵と申します。よろしくお願いします。今回は、「経営戦略としての働き方改革」についてお話しさせていただきたいと思います。
今、なぜ日本社会にとって「働き方改革」といえば、これほどまでに重要になってきているのか。どうして日本では長時間労働が起きているのだろうか。それらの大きな基本となる「人口ボーナス期・オーナス期」という考え方についてお話しさせていただきたいと思います。
まず、人口ボーナス期についてお話ししていきます。一言でいうと、「人口がボーナスをくれる時期」と置き換えると分かりやすいと思います。ある時期、特に生産年齢人口の比率が非常に高く、高齢者が少ししかいない人口比率になった時期の国は非常にもうかるという法則があります。
今ちょうど、中国、韓国、シンガポール、タイがこの時期に入っています。この状態にある国は、安い労働力が多いことによって、世界中の仕事を早く・安く・大量にこなす。一方で、もうかったお金は、高齢者の比率が少ないわけですから、社会保障費がかさみません。ですから、どんどんインフラ投資に回すことができるので、爆発的な経済成長となって当たり前という時期になります。
実は、中国はもうすぐこの人口ボーナス期が終わるといわれています。インドはこれから入って、2040年まで続くといわれています。つまり、「アジアの奇跡」といわれる経済発展のほとんどが、この人口ボーナス期によって説明できてしまうといわれています。
●日本の人口ボーナス期は1960年代~90年代半ば
では、日本にとっての人口ボーナス期はいつだったのか。グラフをご覧ください。
グラフ上の右肩に上がっている点線が老年人口(高齢者)の比率となります。下がっている線が年少人口(子ども)の比率です。一番上の少し太い線が「従属人口指数」というもので、何人の生産者が何人の高齢者と年少人口を支えているかという指数です。この指数が低い方が一人当たりの負担は軽いわけですから、国として有利な発展しやすい時期といえます。
グラフの一番左側を見ていただくと、日本の従属人口指数が非常に高いことが分かります。この時期はまだ子たくさんの時期で、子どもを養育するために国として教育投資が必要なため、一人当たりの負...
●「アジアの奇跡」を実現した「人口ボーナス期」
こんにちは、株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵と申します。よろしくお願いします。今回は、「経営戦略としての働き方改革」についてお話しさせていただきたいと思います。
今、なぜ日本社会にとって「働き方改革」といえば、これほどまでに重要になってきているのか。どうして日本では長時間労働が起きているのだろうか。それらの大きな基本となる「人口ボーナス期・オーナス期」という考え方についてお話しさせていただきたいと思います。
まず、人口ボーナス期についてお話ししていきます。一言でいうと、「人口がボーナスをくれる時期」と置き換えると分かりやすいと思います。ある時期、特に生産年齢人口の比率が非常に高く、高齢者が少ししかいない人口比率になった時期の国は非常にもうかるという法則があります。
今ちょうど、中国、韓国、シンガポール、タイがこの時期に入っています。この状態にある国は、安い労働力が多いことによって、世界中の仕事を早く・安く・大量にこなす。一方で、もうかったお金は、高齢者の比率が少ないわけですから、社会保障費がかさみません。ですから、どんどんインフラ投資に回すことができるので、爆発的な経済成長となって当たり前という時期になります。
実は、中国はもうすぐこの人口ボーナス期が終わるといわれています。インドはこれから入って、2040年まで続くといわれています。つまり、「アジアの奇跡」といわれる経済発展のほとんどが、この人口ボーナス期によって説明できてしまうといわれています。
●日本の人口ボーナス期は1960年代~90年代半ば
では、日本にとっての人口ボーナス期はいつだったのか。グラフをご覧ください。
グラフ上の右肩に上がっている点線が老年人口(高齢者)の比率となります。下がっている線が年少人口(子ども)の比率です。一番上の少し太い線が「従属人口指数」というもので、何人の生産者が何人の高齢者と年少人口を支えているかという指数です。この指数が低い方が一人当たりの負担は軽いわけですから、国として有利な発展しやすい時期といえます。
グラフの一番左側を見ていただくと、日本の従属人口指数が非常に高いことが分かります。この時期はまだ子たくさんの時期で、子どもを養育するために国として教育投資が必要なため、一人当たりの負...
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