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DATE/ 2020.11.15

紙幣の「裏面」デザイン、覚えていますか?

 千円札は野口英世から北里柴三郎へ、五千円札は樋口一葉から津田梅子へ、一万円札は福澤諭吉から渋沢栄一へ。令和の年号が発表されてすぐに2024年度に新紙幣が発行されることも発表され、発表後は選定された人物が注目されたことは記憶に新しいと思います。

 紙幣には表面に肖像が描かれているだけでなく、裏面にもデザインが施されているのはご存知かと思います。しかし、各紙幣にどんな絵柄があったかすぐ思い出せるでしょうか? 今回は注目されることの少ない紙幣の裏面のデザインについて調べてみました。

紙幣の裏面にどんなものが描かれてきたの?

 肖像に野口英世が描かれた現行の千円札では富士山と桜が描かれているといわれるとピンとくる方もいるかもしれません。富士山は日本の象徴として古くから愛されているため、度々モチーフとして選ばれています。他にも桜や『燕子花図』などの花を描いたり、雉や鶴だけでなく想像上の動物である鳳凰を描いたり、図柄にはさまざまなものが描かれてきました。

 時には新紙幣になっても肖像が変わらず、裏面の図柄だけ変わるパターンも。一万円札の肖像でお馴染みの福澤諭吉は、1984年発行の紙幣では雉が描かれていますが、2004年に発行の紙幣では平等院鳳凰像が描かれているのです。お手元に旧札がある方はぜひ見比べてみても面白いかもしれません。

新紙幣に描かれるものは?

 現行紙幣では一万円札には鳳凰、五千円札には尾形光琳の『燕子花図』、千円札には富士山と桜が描かれています。鳥、花、風景となんとも雅やかなモチーフが選ばれていますが、新紙幣にはどんなものが描かれるのでしょうか。

 まず、渋沢栄一が肖像の一万円札に描かれるのは東京駅の丸の内駅舎。近代建築が描かれるのは珍しく、実際に近代建築が紙幣の図柄として採用されたのは国会議事堂、日本銀行旧館のみ。近代建築が印刷された、これまでと雰囲気の違う紙幣を新鮮に思う方も少なくないでしょう。

 津田塾大学を創立した津田梅子が肖像の五千円札には、古事記や万葉集に登場するほど古くから親しまれている藤の花の図案が採用。紫色が基調の印刷となるため、色味にしっくり馴染むデザインになっています。

 北里柴三郎が描かれる千円札には、葛飾北斎の『富嶽三十六景』より「神奈川沖浪裏」が選ばれています。日本を代表する浮世絵作品のひとつで、世界の芸術家に大きな影響を与えたことが選定の理由とされています。

選考基準はないけれど

 紙幣の裏面の図柄には、法的な判断基準はないといわれています。しかし、1950年代発行の紙幣は国会議事堂や日本銀行が描かれていたものが、時代が降るにつれて富士山や鶴、雉といった動物、日本の芸術作品が採用されるようになっています。その背景にはその時代ごとに異なる「日本らしさ」を感じることができるのではないでしょうか。

<1946年~>
五銭札:梅
十銭札:鳩・国会議事堂
一円札:二宮尊徳・鶴、稲
五円札:彩文(模様?)
十円札:国会議事堂・鳳凰
百円札:聖徳太子法隆寺

<1950年~>
五十円札:高橋是清・日本銀行本館
百円札:板垣退助・国会議事堂
五百円札:岩倉具視・富士山
千円札:聖徳太子法隆寺夢殿

<1957年~>
五百円札:岩倉具視・桜
千円札:伊藤博文・日本銀行旧館
五千円札:聖徳太子・日本銀行旧館、獅子
一万円札:聖徳太子平等院鳳凰堂 

<1984年~>
千円札:夏目漱石・鶴
二千円札:守礼門・源氏物語絵巻「鈴虫」
五千円札:新渡戸稲造・富士山
一万円札:福澤諭吉・雉

<2004年~>
千円札:野口英世・富士山と桜
五千円札:樋口一葉・燕子花図
一万円札:福澤諭吉・平等院鳳凰像

<参考サイト>
・富士山・鳳凰は度々採用! “隠し文字”も潜むお札の「裏面」はどう決まる?│FNNプライムオンライン
https://www.fnn.jp/articles/-/1748
・紙幣の図柄について、図柄の意味と、その図柄を採用した理由を教えてください|財務省
https://www.mof.go.jp/faq/currency/07am.htm
・新しい日本銀行券及び五百円貨幣を発行します|財務省
https://www.mof.go.jp/currency/bill/20190409.html
・お札に関するよくあるご質問|国立印刷局
https://www.npb.go.jp/ja/intro/faq/index.html

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