社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
卒婚~この人と、老後を過ごしたくない
離婚でも仮面夫婦でもない…卒婚とは?
価値観や生き方の多様化を認め合うことが時代の潮流となっている近年。結婚にまつわる価値観も多様化し、長らく“当たり前”と考えられてきた「夫婦は生涯寄り添い合うもの」という固定観念にも新しい風が吹いています。なかでも50代を中心に注目されているのが「卒婚」というライフスタイル。読んで字のごとく、「結婚から卒業すること」を意味しており、夫婦が夫婦のままで別々に暮らすことがポイントです。この言葉自体は新しいわけではなく、2004年に教育ジャーナリスト・杉山由美子さんの著書『卒婚のススメ』で使用されたことがはじまりとされています。
卒婚が離婚と異なる点は、法律上の婚姻関係を解消しないところ。あくまでも夫婦でありながら、お互いの生き方には干渉せずにそれぞれが自立して生きるという、新しい夫婦のあり方です。それが今、結婚や夫婦に対する価値観の変化に合致して、多くの関心を集めているのですね。
さらに、卒婚は仮面夫婦とも異なります。仮面夫婦はすでに夫婦としての愛情や尊敬が失われていますが、卒婚はお互いへの敬意を持ったままで新しい距離感をつくります。無理をしていっしょにいることで疲れてしまうなら、離れて自由に暮らすことでゆるやかにつながり続ければいい――結婚と離婚の中間のような状態を肯定的にとらえるところは、多様化の時代らしい考え方ですよね。
離れることで得られるもの
それでは、卒婚のどんな部分にメリットがあるのか詳しく見てみましょう。・程よい距離感でお互いを見直せる:夫婦でずっといっしょにいると、ひとつひとつは些細なストレスでも、積もり積もってケンカに発展してしまうことも。しかし卒婚して物理的な距離を取れば、小さな問題をゆっくり見返して自分の中で消化する余裕が生まれます。卒婚した夫婦が「離れることで心にゆとりができた」と語ることは珍しくありません。離れてお互いを冷静に再評価することで、同居生活に戻る夫婦もいますよ。
・時間を自由に使える:やりたいことをやりたいときにやるのは、夫婦で暮らしていると難しいもの。しかし卒婚して離れれば、自分だけの自由な時間を過ごせます。特に「妻は夫のスケジュールに合わせることが当たり前」という考え方が今でも根強いため、夫のペースに合わせて疲れ切っている妻は多いのです。卒婚した女性からは「自分の好きな生活リズムで趣味や外出を楽しめるようになった」というメリットが上げられています。
・新しい人間関係や活動から世界が広がる:卒婚すると時間を自由に使えることから発展して、地域のボランティアや趣味のサークルなどに参加して生きる世界が広がることもメリットのひとつです。卒婚した人からは「新しい友人や人生の目標に出会えた」と語る声もあります。卒婚で得られる充実感は、まさに人生の再出発といえるでしょう。社会との接点が増えれば、将来的には孤独死を避けることにもつながります。
気をつけなくてはいけないことも
卒婚もメリットばかりではありません。次のようなデメリットもあるので注意してください。・経済的な負担が増える:生活空間が別々になるので、それぞれの住環境を維持できる経済力が必要になります。家計を完全に分ければ、生活レベルを下げる必要にも迫られるかもしれません。卒婚経験者の中には、「完全な卒婚は経済的に難しいので、家庭内で生活スペースを分けた」という、家庭内卒婚をした夫婦もいます。
・周囲から反対される可能性がある:高齢の親族や地方のコミュニティには、保守的な価値観を持つ人が少なくありません。このような人々は別居を「世間体が悪い」と感じて反対することもあるでしょう。反対されたときに不仲ではないと誤解を解き、卒婚の意義を丁寧に説明する根気強さが必要になります。
・不貞は不貞:卒婚は法律上では婚姻関係が維持された状態です。つまり、卒婚したからといって配偶者以外の異性と関係を持つことは不貞行為に当たります。不貞行為をすると配偶者への損害賠償責任が発生し、離婚請求される可能性も出てくるので気をつけましょう。配偶者以外との恋愛や結婚を望む場合は離婚する必要があります。
卒婚は「この人と、老後を過ごしたくない」という考えのもとに行いますが、決してネガティブなものではありません。より良い夫婦関係をお互いに探り、再構築するための手段なのです。自分らしい生き方を模索している夫婦は、選択肢のひとつとして考えてみてもよいのではないでしょうか。
<参考サイト>
・卒婚とは?離婚との違いやメリット・デメリットを紹介│アディーレ法律事務所
https://ikebukuro.adire.jp/column/130/
・卒婚とは メリット・デメリットから離婚との違い、やり方まで解説│離婚のカタチ
https://rikon.asahi.com/article/1747
・「卒婚」はもう古い?│100年生活者研究所
https://hakuhodo-rdc.com/100years_lab/posts/100news_240119/
・卒婚とは?離婚との違いやメリット・デメリットを紹介│アディーレ法律事務所
https://ikebukuro.adire.jp/column/130/
・卒婚とは メリット・デメリットから離婚との違い、やり方まで解説│離婚のカタチ
https://rikon.asahi.com/article/1747
・「卒婚」はもう古い?│100年生活者研究所
https://hakuhodo-rdc.com/100years_lab/posts/100news_240119/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
東京大学大学院人文社会系研究科教授・一ノ瀬正樹氏が、海外でも有名な「ハチ公」の逸話を例に、人と犬の関係について考察する。第一回目は、ハチの飼い主・上野英三郎博士について触れ、東大とハチ公の結びつきや、東大駒場キ...
収録日:2017/04/04
追加日:2017/06/13
使えるデータで「健康のプラットフォーム」を実現しよう
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(3)健康産業イニシアティブ実装に向けて
「プラチナ社会」の実現には、人々の健康もその重要な指標になる。それを支える「健康産業イニシアティブ」とは、いったいどのような構想なのか。日本の弘前大学をはじめ、アジアの周辺諸国で集められるビッグデータを資源に、...
収録日:2025/04/21
追加日:2025/10/29
変人募集中…0から1を生める人、発掘する人、育てる人
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(4)エンタメで一番重要なのは「人」
エンタメビジネスにおいて一番大切なのは「人」である。さらに、「0から1を生める」クリエイターが必須であることはいうまでもないが、そのような人材だけではエンタテインメントビジネスは成立しない。時として異能で多様なク...
収録日:2025/05/08
追加日:2025/10/28
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
組織のまとめ役として、どのように接すれば部下やメンバーの成長をサポートできるか。多くの人が直面するその課題に対して、「経験学習」に着目したアプローチが有効だと松尾氏はいう。では経験学習とは何か。個人、そして集団...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/10
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
サヘル地域をはじめとして、近年、世界各地で多発しているクーデター。その背景や、クーデターとはそもそもどのような政治行為なのかを掘り下げることで国際政治を捉え直す本シリーズ。まず、未来の“if”として台湾でのクーデタ...
収録日:2025/07/23
追加日:2025/10/04


