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DATE/ 2021.02.07

熟年離婚する夫婦の特徴とは?

 「亭主元気で留守がいい」という妻の気持ちに反して、このコロナ禍においてはそうもいきません。リモートワークが日常化することで、ともに過ごす時間が多くなっているのではないでしょうか。夫婦関係を見直すよい機会ともいえるのですが、こんな事情を背景に、これまで夫の定年退職まで持ち越されていた熟年離婚問題が前倒しされているような話もよく耳にするようになりました。そもそもですが、長く時を過ごすことで絆も深まることなく、離婚に至る熟年夫婦、その特徴について考察してみましょう。

熟年離婚とは?  

 熟年離婚に明確な定義はありませんが、一般的に20年以上連れ添った夫婦の離婚のことを指すようです。年齢的にはおおよそ50代以上の夫婦が該当します。厚生労働省「平成30年(2018) 人口動態統計月報年計(概数)の概況 」によると、同居期間が25年以上の離婚件数が増えていることがみてとれます。2017年度と比較して、全体的な離婚件数は減少傾向にあるところ、同居期間が25~30年未満の離婚件数は120件増、30~35年未満の離婚件数は72件増、35年以上のカップルの離婚件数は190件増という増加傾向を示しています。

なぜ熟年離婚するの?  

 熟年離婚が増えている理由は、女性が社会的にも経済的にも自立可能になってきた経緯があります。例えば、社会制度において、年金分割が整備され、離婚しても婚姻期間中に夫が納めた年金の一部を妻が受け取ることができるようになりました。また、いまの熟年世代は、お見合い結婚ではなく、自由恋愛が主流になった世代であることも一つの要因としてあげることもできそうです。お見合い結婚によくある親族の柵みがないため、別れるのも容易であることが想像できます。

熟年離婚しやすい夫婦の特徴

 離婚に至る夫婦には、あるパターンを見出すことができます。

・互いの会話がない
・互いに感謝を伝えない
・互いの不満が目につく
・互いの悪口陰口が多くなる ...等  

 離婚のキッカケとして、

・子どもの独立
・夫の単身赴任
・妻が仕事を始める
・妻が資格を取り始める
・妻が趣味のサークルなどを始める ...等

 若年、熟年問わずではありますが、恋愛期から、子育て期を経た熟年期の夫婦間におこりがちなことであり、妻が経済的に自立していて自由に使えるお金がある場合も、離婚しやすい条件になります。

熟年離婚の原因は

 若年期からの「モラルハラスメント」や「ドメスティックバイオレンス」、「浮気・不倫」や「性的不満」、熟年期からの「親の介護」など、夫婦それぞれのガマン、その限界突破が離婚解決になるわけですが、その原因はとてもシンプルです。結婚当初から気づいていながら、ずっと我慢していたというケースも無きにしも非ずですが、定年後一緒に過ごす時間が長くなってからはじめて気がついた「性格の不一致」や「価値観の違い」というのはなかなか解決することは難しいのかもしれません。
 もともと、性格や価値観が同じであることはなく、問題や課題をしっかり会話して解決につとめることこそ本当の夫婦の営みであり、そのプロセスが疎かになっていたことが、熟年離婚の最大の原因ということができるのではないでしょうか。

熟年離婚のメリット・デメリット

 熟年離婚のメリットは、「ストレスからの解放」「自由」です。長年パートナーから受けてきたネガティブが一掃される快感を得ることができるでしょう。大きな束縛から逃れ、第二の人生を充実させることができるのです。
 逆にデメリットとなるのは、経済的な問題もあげることができますが、なにより「さびしさ」や「孤独」です。病気やケガなど助けが必要となった時のことを想定する必要があります。子どもがいる場合は、それぞれの介護などを考えなければならないこともあり、その配慮も必要となってきます。

 できることなら避けたい熟年離婚、デメリットにたいしてメリットを優先させたい事情も十分にあるかと思います。そうならないように、セーフティーネットを準備しつつ、早期から問題を互いに解決するような協働体制を築くことで真の夫婦を目指すことをオススメします。

<参考サイト>
・厚生労働省:「平成30年(2018) 人口動態統計月報年計(概数)の概況 」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai18/dl/kekka30-190626.pdf
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授