テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.10.01

世界の「安全な都市」ランキング、第1位は?

 英メディア企業のザ・エコノミスト・グループの研究機関である「ザ・エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)」は今年、世界60都市を対象に、独自の指標から作成した“世界の安全な都市ランキング”を発表しました。果たして世界一安全な都市第1位に選ばれたのはどこの都市でしょうか?

「世界の安全な都市ランキング」総合第1位は東京!

 EIUは調査対象の都市に対し、1:サイバーセキュリティ、2:医療・健康環境の安全性、3:インフラの安全性、4:個人の安全性の4つのカテゴリーから57項目の指標の指数を算出し、その合計値からランキングを作成。調査をした世界60都市の中で見事、総合得点を最も多く獲得した都市は、東京でした!東京は初めて調査が行われた2015年より、3年連続1位に輝いたということです。

<世界の安全な都市ランキング>
1位 東京(92.0)
2位 シンガポール(91.5)
3位 大阪(90.9)
4位 アムステルダム(88.0)
5位 シドニー(87.9)
6位 トロント(87.7)
7位 ワシントンDC(87.6)
8位 コペンハーゲン(新追加)・ソウル(87.4)
10位 メルボルン(87.3)
(※参考:Safe Cities Index 2019年版)
(※カッコ内は1~4の4項目よりスコアリングした総合得点)

 EIUによると、東京は犯罪発生率の低さや防災インフラの整備状況、コンピューターのウイルス感染率の低さなど、あらゆる指標で他都市よりも大きくスコアを延ばしたそうです。また上位5都市に共通していることとして、ヘルスケアサービスの質、災害時の事業継続計画が整備されているといった、基本的取り組みを積極的に行っている傾向にあると分析しています。

 前回の2017年のランキングと比較すると、ストックホルム(2017年8位)、香港(2017年9位)がトップ10から陥落したいっぽう、ソウルが14位から8位へ、ワシントンDCが23位から7位へ大きくジャンプアップ。この理由として、今回の調査項目の中にレジリエンス(災害など非常事態がもたらす影響を吸収し、回復する能力)関連の項目が追加されたことで、よりレジリエンスが重視されるよう調査方法に変更が加えられたことが大きく影響したとしています。なかでもワシントンDCはインフラ、サイバーセキュリティ、医療・健康環境の安全性の面でプラスとなったことが、ランクを押し上げた要因となったようです。

街の安全で重要なのは“自治体と住民”のつながり

 ランキングでは東京に続きシンガポール・大阪とアジア圏の都市がトップ3を独占、さらに太平洋地域の都市が続いています。ただEIUはこの結果について、都市の地理的位置と統計的な関連性はなく「これまで住民と自治体が取り組んできた環境作りに負うところが大きい」と述べています。また都市の安全性の強化のためには自治体や企業だけでなく市民も積極的に社会に参加し、互いの垣根をこえて取り組みを強化しあうことが重要だとまとめています。

 報告書には小池百合子都知事のインタビューも掲載されています。小池都知事は東京が1位になったことを受け「地震大国である日本の首都 東京にとって自然災害から都民の命や都市を守ることは極めて重要な使命」としたうえで、都市インフラの整備や自治体と地域ボランティアとの連携といったハード・ソフト両面からみた長年の取り組みがランキングの結果に大きく影響していること、さらに災害発生時はまず各自必要な努力をしてからお互い助け合い、そのサポートを行政が担うという“自助・共助・公助”の考え方が地域の安全性に大きな役割を果たしているという考えを示しています。

 小池都知事の意見、さらにレジリエンスがより重視されている今回のランキングから分かる通り、安全・安心な街づくりには、住民一人ひとりの日頃の防災・防犯への意識が不可欠。自治体に任せっぱなしではなく、個人が積極的に地域に参加し、取り組む姿勢を持つ必要があるといえるでしょう。

<参考サイト>
・SAFE CITIES INDEX 2019
https://safecities.economist.com/
・Safe Cities Index 2017 日本語
http://safecities.economist.com/safe-cities-index-2017-jp/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

グローバル主義が全ての元凶…トランプ政権がめざすのは?

グローバル主義が全ての元凶…トランプ政権がめざすのは?

米国システムの逆襲~解放の日と新世界秩序(1)米国システム「解放の日」

第二次トランプ政権は、その関税政策を発動させた日、4月2日を「解放の日」と称した。そこには、アメリカが各国の面倒を見るという第二次世界大戦以降の構図が、アメリカに損害をもたらしているという問題意識がある。「解放の...
収録日:2025/04/25
追加日:2025/05/20
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
2

「哲学・歴史」と「実証研究」の両立で広い視野をつかむ

「哲学・歴史」と「実証研究」の両立で広い視野をつかむ

デモクラシーの基盤とは何か(3)政治と経済を架橋するもの

「政治経済」と一口にいっても、両者を結びつけて思考することは簡単ではない。政治と経済を架橋するためには、その土台にある歴史や哲学、また実証的なデータを同時に検討する必要がある。これからの公共性を考えるための多角...
収録日:2024/09/11
追加日:2025/05/23
3

トランプ政治と民主主義の危機…カント哲学から考える

トランプ政治と民主主義の危機…カント哲学から考える

編集部ラジオ2025(9)デモクラシーの危機と「哲学」

いま、世界各国で「デモクラシーの危機」が高まっています。これまでの常識を超えたドラスティックな政策を次々と打ち出す第2次トランプ政権はもちろん、欧州各国の政治状況もポピュリズム的な面を強くしています。また、ロシア...
収録日:2025/04/03
追加日:2025/05/22
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
4

日本のインテリジェンスは大丈夫か…行政機関の対応に愕然

日本のインテリジェンスは大丈夫か…行政機関の対応に愕然

医療から考える国家安全保障上の脅威(4)国家インテリジェンスの課題

「日本のインテリジェンスは大丈夫なのか」という声が海外から聞かれるという。例えば北朝鮮のミサイルに搭載されている化学剤について、「エイジング」と呼ばれる拮抗薬投与までの制限時間の観点からはまったく見当違いの神経...
収録日:2024/09/20
追加日:2025/05/22
山口芳裕
杏林大学医学部教授
5

ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視

ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視

第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?

「第二次トランプ政権は、第一次政権とは全く別の政権である」――そう見たほうが良いのだと、柿埜氏は語る。ついつい「第1次は経済重視の政権だった」と考えてしまいがちだが、実は第2次政権では「経済」の優先順位は低いのだと...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/05/10
柿埜真吾
経済学者