●人口減少は成長制約か?
これからが、皆さんと一緒に考えたい本題です。日本の現状について復習し、現状を見て、△前後などの判定をつけてきました。では、これで日本はリスクを回避できるのか。目覚ましく3パーセント成長ができるのかというと、このままではとてもできません。
では、できる可能性はあるのか? 多くの人が考えているのは次の図式です。
今の日本は人口が減っているが、かつて高度成長の頃は人口がどんどん増えていた。それが平均10パーセントもの高度成長を支えていたのだ、と。
というのも経済成長の定義は、「労働力(生産年齢)人口×一人当たり生産性=経済規模」という式で表され、経済成長の伸び率と言うと、人口の増加率と生産性の上昇率を足したものになります。高度成長時代の人口は2パーセント増えていたが、今はマイナス0.7パーセントで減っていて、日本の人口は毎年100万人ずつ消えているのです。それだけで2パーセント以上のマイナスになる。「成長なんて、できるわけがないではないか」という議論があるのです。今日は、そこを皆さんと考えてみたいと思います。
●「失われた20年」に本当に失ったもの
先日、吉川洋先生をこの会にお呼びしてお話を伺ったときに、「高度成長は10パーセントを記録したが、あのときに人口が5~6パーセントも増えたわけではない。2パーセント内外だった。後の7~8パーセントは、経済成長のイノベーションだったのです」と、いいことを言っておられました。
当時の日本は若い人がたくさんいました。今はお年寄りばかりで、当時のようにみんなが成長期待を持っていた社会ではないですから、人口が減っていくので悲観的になりますけども、「高齢化する社会の中でイノベーションが起きないという理論的な論拠はないのではないですか」とも吉川先生が言われた。あれは、なかなかの名講演でしたね。
それで、「失われた20年」といいますが、確かに成長率はゼロあるいはそれ以下になりました。しかし、私はこの「失われた20年」で本当に失ったものは何かというと、吉川先生と同じ意見になります。「イノベーションするマインド」が失われてしまったのではないかと考えるのです。
●70年代前半の制度や構造が対応できないほどの状況変化が起きている
今の日本を動かしているいろいろな制度、例えば、政治・行政・教育・社会保障・医療・農...