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ICTを超高齢化社会に生かさない手はない

未活用資源の潜在的可能性(3)情報化とサービス

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
活用すべき潜在的な可能性を秘める資源は、情報、あそび、観光・旅行、教育の分野にも満ちている。既成の、あるいはお仕着せのやり方に温存するのではなく、バイタリティと豊かな人間性をもって日本の活路をひらく可能性を、島田晴雄氏が余すところなく語る。(島田塾第109回勉強会 島田晴雄氏講演『日本経済は果たして、どこまで成長出来るのか』より:全14話中14話)
時間:09:44
収録日:2014/01/14
追加日:2014/03/27
カテゴリー:
≪全文≫

●高齢化社会にぜひ活かしたいのは進歩著しいICT分野


 今、情報、ICTの分野がすごいことになっています。どうなっているかというと、マスメディアがソーシャルメディアになり、個人メディアになって1人1人放送局になってしまいました。もう大変化です。

 グリーの田中(良和)さんは「ネットでもう一つ地球を作る」とまで豪語していました。利益率90パーセント超えているのに、なぜ60何パーセントで済んでいるのかを聞いたら「テレビ広告をするから」と島田塾でおっしゃっていましたけれど、変わった方です。

 オプトの鉢嶺(登)さんという方が見事で、「この手のものは、デバイス革命からメディア革命、マーケティング革命からコンテンツ革命になった」とおっしゃっています。コンテンツは今、MOOC(Massive open online course)が流行っていますけれど、カーンアカデミーが、なんとMITなど1,000万人の生徒にネットで流してしまっているのです。そのうちこれがスタンダードになると大変です。教育が変わります。

 これだけのものを持っているのなら、なぜ高齢化に使わないのか、ということです。先ほど言いましたように、高齢化の人は身体機能が衰えていきます。これを使えば、そんなものはいくらでも補えるでしょう。高齢化は車いすだけではありません。ウェアラブルコンピュータ、通信機器、装置、住宅装置、移動機器、エンターテインメント、旅行、社会的交流、社会貢献、教育。全部、高齢者が得意なものです。そこまで発想が来てないでしょう。安倍さんがここにいるべきなのです。


●日本固有の豊かなあそび・芸能・芸術を資源として活かす


それからあそび。日本のあそびは本当にすごいです。日本には、西洋から東洋から全部、ありとあらゆるあそびがあります。それからクラシック音楽でも、交響楽団が9つもある都市は東京だけです。ニューヨークもパリも2つしかないですから。その上、お能、文楽、歌舞伎、狂言、新内、お茶、お花と、全部あるでしょう。もう全部やっていたら大変ですよね。

 この前、浮世絵の研究を島田村塾でやったのですが、すごいですね。あの時代に16文、蕎麦一杯分の値段で浮世絵が買える。流行りの芸者とか歌舞伎役者の浮世絵を皆が持っていたという、そんな国、世界どこにもありません。

 こういうあそびを今、やっていないのです。島田塾の一部の人は一生懸命やっていますけれども、一昔前の経営者はお客さんが来て興が乗ってくると、「一差し舞って進ぜよう」と言ったものです。また、どんな家にも床の間があったから、小さくても大きくても掛軸があって生のアートを買っていたのです。今はそういうことはありません。窓ばかりになってしまったし、壁にはちゃぶ台が立ってしまっているから駄目なのです。

 このように、文化にはものすごい可能性があるので、もっともっとやった方がいいですね。


●観光・旅行産業衰退の元凶は団体旅行にある


 また、日本の観光は衰退してしまって、流行っているのは澤田(秀雄)さんと星野(佳路)さんのところくらいですね。なぜ、衰退しているのかというと、団体旅行の情報がなくてお金がなかった時代にあぐらをかいているからです。

 つまり一生懸命働いたけれど楽をしたい、ということで、農協や町がどんどん社員旅行をやったのです。そうすると皆、団体旅行ですから観光ホテルに連れて行く。すると、これは装置産業なのです。観光ホテルが着くと何をされるかというと、紫色の着物を着たお姉さんたちが大勢出てきて「いらっしゃいませ」と出迎えられて、「ちょっとお菓子を食べてお風呂でもどうぞ」と浴衣を着せられることになる。気がつくと「貴重品を皆預けてください」となって財産身ぐるみ全部をホテルに置いて、どこに行くかというと千人風呂ということになるわけです。この前、北海道の第一滝本というところの千人風呂に行きました。確かに500くらいあるのですが、入って戦慄しました。浴衣の入れ物が皆同じだから間違って着たらどうしようと、ものすごく心配になって、帯を見たら1238番と書いてありました。これは、囚人着ですね。それで朝までいさせられるのです。

 それで、料理は12皿も出てくる。それに大会場で、先に来た料理は冷えているのです。こんなものを食べたら太っちゃうから食べないでしょう。そうするとドーンと捨てざるを得ないわけで、板前は心を込めて作った料理を捨てられるから頭にきているのです。

 旅館の女将は美人が多いのですが、ほとんど白髪です。険が立っている。なぜなら包丁一つで渡っている板前を相手にこなして、気を遣いますし、亭主は飲んだくれているだけですから。それが日本の旅館の姿です。衰退産業で、面白くない。

 皆、翌朝までいてバスで帰るから、自分が「もう少し居たい」と言うと「えーっ」と嫌が...
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