今日のタイトルは「日本経済は果たして、どこまで成長出来るのか」つまり、果たして成長できるのかも含めて、成長するとそればどこまで、ということですね、お話をしたいと思います。これで多分、日本がこの一年でどうなっていたのか、今どういう状況にあるのか、今後一年どういう展開になるのか、かなり詳しくお分かりになると思います。
●安倍政権のもうひとつのリスクは“ナショナリズム”への傾斜
安倍政権が出来て1年強経ちましたけど、日本の空気は相当変わったと思いますね。アベノミクスは一定の大変な成果を上げました。しかし、今日もお話しますが、かなり大きなリスクも伏在しているのですね。
安倍さんは今、世界で最も大きなポリティカルキャピタルを持った指導者だと言われています。それは3年間選挙のない政治をやっていいというのは、自分で獲得したものですけども、世界で今ありません。
だから大変素晴らしい状況なのですね。この前、靖国参拝されたので、これは安倍さんの個人の悲願ですから仕方ないのですが、なんでこのタイミングでああいうことするのかなと少し思ってはいます。多くの方がそう思っています。ちょっと残念だな。もっと重要なことにこのポリティカルキャピタルを使われたら良いかなと思いますね。
経済に相当大きなリスクがありますけども、リスクを吸収する最善の策は経済成長です。ただ今日本では、「日本は今人口が減っているから経済成長は無理なんだよね」、という諦めみたいなものが世の中にありますけども。
今日は、果たしてそうだろうかという問題に突っ込んでみようかと思います。そしてその本当の成長を高齢・人口縮小社会で実現する課題は何なのかということを皆さんと一緒に考えてみたい。ここがメインだと思います。
●超金融緩和の意味
まずこのアベノミクスの成果とリスクということで、少し復習をしてみたいと思います。アベノミクスって言うのは3つの矢がありましたね。一つは金融緩和ですが、これはどういう意味か。リーマンショックの時に世界中が大不況になって、民間部門が弱り、政府が相当財政支出をしないといけないということで、どこの国でもやったわけですね。その結果、とんでもない赤字を各国抱えることになって、財政のレバーが効かない。じゃあ金融だと。金融というのは普通、刺激をするには金利を下げるんですけど、金利がほとんどゼロ金利ですから下げられない。
どうしたらいいだろうかということで、金利が操作できなくても金融を流せられないかということで、これは日本の中央銀行が昔始めたことですが、量的緩和というのをやろうってことになったわけですね。QE(Quantitative Easing)と言われています。あれは明らかに日本語の訳だと思うんですが、それを諸外国は桁違いの量で始めたんですね。これは何かというと、市場にたくさんある金融商品を中央銀行が買い取って、買い取った代金がどんどん市場に出ていくということです。この出ていくお金がベースマネーといわれる普通の貨幣供給と違いますね。
それで、リーマンショックの後から5年間で、どのくらい世界の諸国はベースマネーを増やしたかというと、アメリカは250パーセント、イギリスは320パーセント、ヨーロッパ中央銀行は110パーセント、もちろん日銀も同じことをやっているんですけど、日銀は36パーセントです。桁が違うので、日銀はデフレを克服する意思がないんじゃないかと、世界から評価されてしまったんですね。
デフレが続くと何が起きるかというと、お金の価値が放っておけば上がりますので、日本の円を買おう、ということになって円高になる。そうすると輸出企業は輸出が出来ない。不況になる。そういうことをずっと続けてきたのが、この白川総裁時代ですね。それで、安倍政権の意図は昨年暮れに菅官房長官が島田塾の勉強会にこられまして、こういわれた「デフレをとにかく克服する。失われた20年間といわれているが、これを放置していいのか。これまでは金融は日銀。財政は財務省任せでなかったか。政治家が責任をもって考えてこなかったのではなかったか。」ということで岩田規久男先生、本田悦朗先生、浜田宏一先生たちと勉強を続けた。黒田東彦アジア開発銀行総裁はたびたび仲間に入っていたそうですね。というグループで勉強して、そこで安倍さんが自民党総裁に選ばれてから「デフレの克服を最優先課題にして、そのためには思い切った金融緩和で脱却を図る」と主張したんですね。安倍さんが素人だから怖いんですけど、国会ではっきり言っていましたよね。「デフレはみなさん貨幣現象なんですよ。だから金融緩和は効くんだ。」素人が信じて言うと怖いですよね。他のことわかりませんから。しかし、突っ走った。この言葉を世界の金融界はしっかり受け止めちゃったわけですね。



(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/yawaraka_seichosenryaku.pdf)より加工して掲載