●岩盤規制打開と高齢化社会の可能性
さて、高齢者が多く人口が限られていると言えるのが日本の問題です。高齢者社会の可能性を生かすにはどうすればいいのでしょうか。今日は、2つの話を申し上げて括りたいと思います。
1つは、安倍晋三首相の言っている「デッドロックレギュレーション」、つまり岩盤規制です。安倍さんは「私はドリルの歯になって突き立ってみせる」と言っています。大丈夫かな、と思ってしまいますが、岩盤規制は3つの典型的分野にあります。1つは農林水産業。もう1つは医療。そして残る1つはエネルギーです。
そして、2つ目に皆さんとお話ししたいのは、高齢社会のもつ非常に多くの可能性をどうすれば生かせるのか、ということを最後にして新春の所感にしたいと思います。
●農業情報の欺瞞:食糧自給率4割、農村の衰退
それでは、3つの分野について一言ずつお話しします。
まず、農林水産業ですが、皆さんは農林水産業についてどのようなイメージを持っていますか。2つのイメージを持っていませんか。
「日本は食料生産が足りなくて安全保障が保たれない。食糧自給率は4割だ」
「農村が疲弊している。このままいくと農村が消えてしまう」。
データーをよほど歪めて見ればそう見えなくはないですが、これらのイメージは、全く全体像を示していないと言えます。ちなみにこのキャンペーンを推進しているのは農水省ですが、それは他意があるからこういうことを言っているのです。
自給率についてお話ししておきますと、食料自給率は4割と言われていますが、これは米麦トウモロコシといった穀物の自給率を指します。確かに4割の自給率です。お米は4割ですから、残り6割は何かというと、全部家畜の飼料です。つまり、われわれが食うに困っているわけではないのです。
それからもう1つ。「農業生産」というから米に焦点が当たり過ぎていますが、農業生産販売額総額は10兆円です。お米、他の穀類は全部足しても2兆円しかありません。あとは、何かというと、自給率100パーセントの野菜、90パーセントの果物。70パーセントの畜産です。これらは全部統計に入っていません。おかしいですよね。
●農家は政治の犠牲者
では、農村が疲弊しているということについてですが、全人口比の農村人口はどのくらいあるのでしょうか。日本の自給率の倍と言われている英国は0.8パーセント、世界中に農産物を輸出しまくっているアメリカは0.9パーセント、これに対して日本はなんと1.6パーセントで、多すぎるのです。
中身はどうなっているかというと、販売農家は196万戸あります。うち米農家は160万戸。そのうち零細農家が130万戸あります。これらの農家の平均年齢は70歳です。米の専業農家は30万戸しかありません。そのうち1千万円以上の年収を上げている農家が5万戸あります。実はこういう農家で全生産の6割くらいを達成しているのです。
なぜこういうことになっているのかというと、この130万戸の零細農家は政治の犠牲になっているのです。農村は票田です。戦争直後は1,500万票ありました。今は200万票。生産性向上が叫ばれましたけれど、自民党がそれをさせませんでした。させれば農民が減るからです。土地の集約も許しませんでした。だから、所得が向上しない。向上しないので、春闘と同じレベル以上の政治米価の値上げを1960年に導入して40年続けてきました。日本の米価が海外の十何倍になるのは当たり前でしょう。このように多くの農家は政治の犠牲になったのです。
だから安倍さんが「そこにドリルの歯を立てる」と言うからには、やっていただきたいと思うわけです。
●改革の提案:今やるべきことは減反と徹底的自由化
菅(義偉)さんがやった減反とは、そのドリルの歯の一本なのです。菅さんは農家の人ですから。価格維持のために減反を始めたのです。米の消費が減って値段が下がるので、作付けしない農家には補助金を出すことにしたのです。
今、政府は成長戦略で6次産業をつくろうと言っています。農業の1次産業、加工の2次産業、販売・サービスが3次産業。1・2・3と連なって6になるわけで、それはそれでいいのですが、そんなことよりも早くやらないといけないのは、減反なのです。やっと減反に動き出すので、少しそこに期待がありますね。
あとは徹底的な自由化です。そうすると何が起きるかというと、力の強い農家が全部利益を持って行ってしまいますが、それで良いのです。130万戸の農家はどうするのかと、この前、その話を前原(誠司)さんとしたら「切り捨てられない」と言うのです。「前原さん、私は切り捨てようなどというつもりはないですよ」と、言いましたけれど。
●4つの可能性に託す将来像~健康農業
私は、こう思います。130万戸の農家の方々は、平均年齢7...