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医療改革の提案―情報公開、自由診療、民間保険の開放

岩盤既得権・規制分野の成長可能性(3)医療

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
出典:厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/houdou/0103/h0306-1/h0306-1d.html)より
かつて日本は、世界一医療費の低い優秀な医療国だった。しかし高齢化や技術の高度化などにより、数多くの問題を抱えることとなった日本の医療。改革のためには何をすべきか。具体的な問題点を挙げながら、方策を講じていきたい。(島田塾第109回勉強会 島田晴雄氏講演『日本経済は果たして、どこまで成長出来るのか』より:全14話中11話)
時間:08:06
収録日:2014/01/14
追加日:2014/03/20
≪全文≫

●優等生から劣等生に


それから医療の話ですが、日本の医療はかつて、とても優等生でした。
国民皆保険、皆医療で、健康保険証1枚あれば、どの医療機関にも行けるのです。そして、国民の医療費は、世界の主要国の中で一番低く、平均寿命は世界一、という立派な国でした。
しかし、今の医療はどうなっているかというと、メガトレンドが変わり、ひどくなってしまったのです。
高齢化によって社会的費用が増え、技術の高度化によって高額医療もどんどん増えました。また、低成長によって国民は担税力をなくしてしまったのです。
医療問題が非常に深刻化したことで、医療財政が破綻を起こしました。日本の医療機関としては1万の病院と10万の診療所がありますが、その経営は8割が赤字です。しかも、3時間待って3分医療、たらいまわし、医師の不在、とサービスも悪く、また、地方にいったら、高度な医療は受けられません。なぜこんなことが起きたのでしょうか。

●政府の対応の誤り:価格規制と数量規制


私の分析では、原因は政府の対応の誤りです。政府が、これは大変だということで、価格規制と数量規制をしたのです。
価格規制としては、診療報酬制度というものがあります。この医療は何点と全部決められているので、動かせません。こういうことをやっていますと、どんどん点数を下げていきますから、創薬産業は衰退してしまいます。今唯一動けそうなのは武田さんで、あとはもうダメですね。
また数量規制としては、ベッド数、医師数、パラメディカルスタッフなどを全部規制するというものです。
ただ、数量を規制したら価格を自由にする、あるいは価格を規制したら数量を自由にする、ということであれば、市場機能は生きてくるのです。
しかし、両方つぶしたら、市場機能はもちろん、誰も生きていけないだろうということで、何をやっているのだというのが今の状況です。
役人の中には素晴らしい人もいらっしゃいますが、組織としてトータルで考えて、こういうことになってしまったわけです。なぜか知りませんが、これは大間違いです。

●改革の提案 (1)情報化の強化


では、どうすればいいのでしょうか。いくつか申し上げますが、それを行うと日本の医療は目覚ましく良くなります。
一つ目ですが、診療報酬制度の改革です。現在、診療報酬制度にはコスト情報は入っていますが、アウトカム情報は入っていません。この病院でよくなったかよくならなかったのか、そのことを明らかにしないと、競争には全く使えないのです。
世界一医療費の高いアメリカでは、自主的に医療費を下げようということで、包括標準費制度を導入しました。例えば、全国から何百何千というデータを集めて、2千種類くらいある病状の分布を出します。その分布の一番高いものと低いものを除いて、下から三割ぐらいのところに合わせます。それを超えるとアメリカのNIHは保険を払いません。どうなるかというと、病院とお医者さんが自分で払わないといけないのです。お医者さんは頭がいいから、はっきりとそんな数字になるのであれば、下げようとします。そういうことで、おのずと医療費が下がるようになったというわけです。
これは、完全な情報公開とIT化をしなければできません。クリックひとつでパッと分かるようにならないといけないのです。
しかし、日本はそうなっていません。日本の病院の中は全てITなのですが、病院を一歩出たら何が行われているかというと、例えば医療費の請求制度です。医療費の支払い機構というものがあり、そこに8千人の自治労の組合員がいます。その人たちが、毎年、紙で請求される13億枚もの書類を読んでいるということですが、実際には読んでいないそうです。
たくさんあって読みきれないのです。だから間違いだらけです。
なぜ、そういうことになっているのかというと、それは雇用の維持のためであり、それを変えることを連合が許さないからなのです。この国は何をやっているのでしょうか。
韓国は医療のIT化へ完全に乗り出しまして、世界的な医療先進国です。日本は韓国に学ばなければいけないことがたくさんあります。今、日本でもまがい物でやっていますが、全然ダメなのです。

●改革の提案 (2)自由診療―混合診療のすすめ


それから、自由診療しても保険をもっと適用できるようにするということです。
例えば、教育でいうと、国民は税金を払って公立学校に子供を通わせていますが、私立学校に行った場合には、その分の税金も余計に払わなければいけないというのが日本の制度なのです。税金は1回払えばいいのに、そんなおかしなことがあっていいのでしょうか。
医療の話に戻しますと、健康保険を1回払ったら国の提供するものは全て手に入らないといけません。その上で、保険適用ではない自由診療をいくらでも受けていいと...
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