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女性の雇用状況を改善すれば日本のGDPは9%伸びる!

女性の活用―子育て支援

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
出典:内閣府男女共同参画局ホームページ
(http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h25/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-02-01.html)より
日本の女性活用がアラブ諸国並みの低さなのは「M字型サイクル」に原因がある。打開策は子育て支援の施設と施策拡充。社会福祉法人が行く手を阻む中、待機児童ゼロを達成した横浜市の挑戦を島田晴雄氏が評価する。(島田塾第109回勉強会 島田晴雄氏講演『日本経済は果たして、どこまで成長出来るのか』より:全14話中7話)
時間:07:37
収録日:2014/01/14
追加日:2014/03/13
タグ:
≪全文≫

●能力ある女性を活用できない日本。その構造的原因は?


 では、女性の活用に行きましょう。

 日本では女性が活用されていないと諸外国が言っています。労働力参加率は、アメリカが62パーセントで日本は61パーセント、ヨーロッパは65~66パーセントですから、結構いい方で、それ自体は問題ありません。ただ、日本の女性は経営者になっている人が少ないです。会社でも幹部女性が少ない。役員会に女性が座っている会社など、数えるほどしかないですから。

 要するに、能力のある女性が能力を生かせないのが日本の労働市場なのです。それは、どこに大きな構造的原因があるかというと、「M字型就業サイクル」です。日本の女性は非常に就職率が高く、学校を出るとすぐに就職します。そして、20代は一生懸命働く。結婚する、子どもができる。社会環境が非常に悪く、会社の環境も悪いので辞める。しかし、辞めるともう次がないのです。後はコンビニで働くとか、そういうことになるので、キャリアが継続・発展できない。だから、日本の女性の能力は生かされていないというのです。


●「M字型サイクル」には、子育て支援施設設置が効く


 さて、IMFにクリスティーヌ・ラガルドさんという専務理事がいて、人気を集めています。シンクロナイズドスイミングの選手だったそうで、美人です。彼女は「日本の女性に男性並みの雇用機会が提供されたら、日本のGDPはあと9パーセントは伸びる」と言いました。

 これは本当だと思います。数の問題ではなく、能力を生かせる状況がないのです。能力が一番生かしにくいのは、「M字型サイクル」によって30代で1回仕事を辞めなければいけないからです。では、辞めなくて済むようにするにはどうしたらいいかというと、子育て支援施設をつくればよいのです。

 子育て支援施設はどうなっているかというと、全国に数万件あります。そのほとんどが公的施設か、あるいは社会福祉法人です。社会福祉法人とは憲法89条で認められた、民間の団体です。


●社会福祉法人とはどういう団体か?


 憲法89条にはこう書いてあります。

 「宗教と博愛と教育の3分野においては、国の支配に属さない民間に公的資金を渡してはいけない」。

 「博愛」とは、「福祉」のことです。民間企業は国の支配に属しませんから、補助金はもらえません。ところが、「国の支配に属する民間をつくろう」という賢い運動が起きました。これにより「社会福祉事業法」が成立し、社会福祉法人ができました。

 「国の支配に属する」とはどういう意味か。福祉施設は民間の土地を借り上げないとつくれないのですが、この人たちは皆、土地を持っているお金持ちばかりで、自分の土地を国に提供するのです。それで、土地を提供すると、建物の建設に8割の補助、運営費に7割の補助を受けるものですから、笑いが止まらないいい職業で、選挙応援団体になっているのです。


●社会福祉法人の利権体質が、保育施設の充実を阻んでいる?


 今は全国に4万件くらい社会福祉法人があり、戦後から数えて3代目ぐらいになっていますが、すごい利権です。彼らは土地を供出することで補助金を受けていますから、もし別のビジネスをやったりすると、土地を国に返さないといけない。そういう意味で、「公に福祉」しているのです。

 そのような仕組みで高額の補助金を得ているのが、この分野で7~8割、民間ではほとんどを独占している社会福祉法人の人たちです。彼らは自分の利権を守るために、一般民間企業が入ってくると、強力に排除しようとしますから、とても参入できません。今は少しよくなってきたようですが、ベネッセが一度、三鷹で保育施設を開いた時には、毎晩脅迫状が来たという話もあるぐらいです。

 そういう状況なので、能力のある女性が自分の実力や趣味に合わせて子どもをお願いしようと思っても、たやすく気持ちよく受け入れてくれる社会基盤が、日本には乏しいのです。厚労省の規制も、厳しすぎますよね。


●待機児童ゼロを3年で達成した林文子横浜市長


 ところが、横浜市には林文子市長がおられて、すごいことをやりました。横浜市は待機児童が日本で一番多かったところです。林市長という人は、高卒で自動車販売会社に就職されてから市長になられた大変な努力家で、「数値目標を定めて市が一体となって解決しなければいけない」「やればできる」と目標を定めて、全職員にそれを徹底したのです。

 そして、民間保育所・企業による保育所を徹底支援して、社会福祉法人と同じ補助金を渡したのです。また、子育てのアドバイザー(保育コンシェルジュ)を各区に1名ずつ配置しました。さらに、横浜市に残っている土地を徹底的に民間企業に貸して、とうとう3年間で待機児童数ゼロを実現したのです。

 ところが、そうしたらまた、うんと待機児...
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