COP21の成果と日本の役割
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
大きな成果を見せたCOP21と日本の存在感
COP21の成果と日本の役割
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
COP21で地球温暖化防止に向けた世界の動きがまとまったことは人類にとって非常に大きな成果だと、東京大学第28代総長で株式会社三菱総合研究所理事長・小宮山宏氏は評価する。しかし、日本に対しては苦言を呈している。日本が果たすべき役割について語る。
時間:6分36秒
収録日:2015年12月18日
追加日:2016年1月25日
≪全文≫

●大きな成果を見せたCOP21


 今度、COP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)で、二酸化炭素を減らして地球温暖化を防止しようと世界の動きがまとまったということは、人類にとって非常に大きな成果だと思っています。私は個人的にも20年ほど前からビジョン2050を提案していますが、(COP21は)その流れに沿ったもので、大変いいことだと思います。

 ビジョン2050は、例えば自動車を持つ人がそのことによって普段受けられるサービスを我慢することではなく、そうしたサービスを受けながら省エネルギーでエネルギー効率を上げていくことと、再生可能エネルギーを導入していくことの二つが核なのです。それに加えて、経済という面から、質あるいはサービス産業への移行によってCO2を削減しようということで、極めていい話なのです。


●日本が実践してきた「デカップリング」


 その中で少し残念なのは、日本の存在感がほとんどなかったことです。実は、日本は本当に素晴らしいことをすでにやっているのです。1973年、オイルショックが起こったとき、日本は産業を中心に省エネルギーを大々的に進めてきました。当時のGDPが大体200兆円です。今が約500兆円ですから、2.5倍に増えているわけです。

ところがエネルギーの消費量は1.25倍で、25パーセントしか増えていません。これは、今回のCOP21に合わせて言われた「デカップリング」と関係しています。「デカップリング」とは、経済は伸びてもエネルギーは伸びない、あるいは大きくは伸びないということで、重化学工業中心の時代、経済の成長とエネルギーの増大はほぼ1対1の割合で進んできましたが、今は省エネやサービス化による「デカップリング」の時代だと盛んに言い出しているのです。この「デカップリング」をきちんとやった国が日本なのです。そういったことが議論の中でほとんど反映されなかった。それは、日本人がこのことを分かっておらず、主張もしないからです。


●日本に学べば、中国は80パーセント削減も可能


 では、そのことにどういう意義があるか。今度の中国の削減目標値は、GDPに対してエネルギーの割合を60パーセント減らすことですが、先ほどお話しした「日本がGDPを2.5倍にしてエネルギーを1.25倍にとどめた」というのは、GDP当たり50パーセント減らしたと...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫