●日本の「経済的奇跡」は、「奇跡」ではない
Murphy :So the first lesson that I wanted people to take away from this book, the first lesson was the so-called economic miracle of the 1950s and 1960s, maybe it wasn't a miracle, but it is really the key to understanding the contemporary, not just contemporary Japan, but the contemporary global political and economic and financial order.
福原(通訳):この言葉、日本人としては懐かしいのですが、昔はよく日本のことを「エコノミックミラクル(経済的奇跡)」と言われました。最近では全然そういうことは言われません。実際に50年代、60年代、70年代の日本経済の発展は、本当に奇跡と言ってもいいぐらいの素晴らしいものだったのですが、この「経済発展」という言葉自体が最近ほとんど死語で、私自身、言いながら懐かしいと思っていますが、この経済発展を理解するためには、ただ単に日本国内のことを考察するのではなく、グローバルな視点で分析することが重要だと思っています。
Murphy :The economic miracle so-called was rooted in the peculiar circumstances of the early 1950s and I am really hoping that scholars and other interested people will revisit those days and the early postwar world. There is a tendency now among a lot of analysts to pooh-pooh what happened. You know, they say, well Japan was really unique, West Germany was doing the same thing, METI was arrogantly picking winners, which turned in the long - out in the long turn to be a bankrupt strategy.
福原(通訳):この日本の経済発展、経済的奇跡は、もともと1950年代に発端があるわけですが、いろいろな経済学者やアナリストは、この驚異的な経済発展を割と軽視し、あまり大したこととして解釈しない傾向があります。というのは、「ドイツもかつてはすごかったじゃないか」「通産省の主導もあった」と彼らは言うのです。当時の通産省は、経済政策によって「この会社は残してもいいけれども、この会社はつぶす」など、自動車業界では実際にそういう話がありました。この通産省の主導は、初期には効果があったかもしれませんが、実際にはほとんど無力化され、ほとんど意味がなかったと後年になって分かるわけです。そのような1950年代からの状...