●「村山談話」をめぐる安倍首相のずれ
日本とアジア、とりわけ中国や韓国との和解の問題で、靖国神社の参拝問題が大きくクローズアップされているという状況ですけれども、もう一つ、「日本の歴史認識を問う」というときに問題になるのが、「村山談話を受け継ぐのか、それともこれを見直すのか」という問題があります。このことについてお話したいと思います。
最近も、中国や韓国の首脳たちは、「村山談話を消し去るようなことをしたら許さない」とか、「そういうことであれば、もう日本との関係は修復不可能だ」というような趣旨のことを言っています。特に、韓国の朴槿恵大統領は、今年になってからもそういう発言をしております。
なぜこれが問題なのかと言うと、安倍総理が、実は村山談話に従来非常に消極的な立場をとっており、たびたびそういう立場を示してきましたからです。今回総理大臣になる前にも「できれば村山談話を見直したい」と発言し、もう一つ、従軍慰安婦にまつわる「河野談話」、河野官房長官の談話というのもあるのですが、この二つについて、安倍さんが懐疑的な発言をしてきたものですから、これに中国や韓国は非常に反発、あるいは懸念を示しているということなのです。
●「村山談話」がもつ二つの意義 -1.明確な謝罪表明
では、村山談話というのは、そもそも何なのか。これは、 村山富市さんという総理大臣が、1995年、戦後50年のタイミングで出した談話です。村山富市さんは、当時の日本社会党の委員長でした。日本社会党は今はもうなくて、その流れで社民党という政党があります。今は小さくなってしまいましたが、日本社会党は戦後、自民党に次ぐ第二の政党として大きな存在感を持ってきた政党です。長いこと万年野党と言われ、野党第一党できたのですが、この1995年の前の年、1994年に、自民党がその社会党の委員長である村山さんを総理大臣に担いで、もう一つ、新党さきがけという小さな党がありましたので、この3党で連立政権を作ったのです。そうしてできた自社さ連立政権の顔として総理大臣になったのが、村山さんだったのです。村山さんは、戦後50年のタイミングで、過去の戦争責任、あるいは植民地支配をしてきた責任の問題に何かけじめをつけたいということで出したのが、この談話でした。そのさわりを少し読んでみたいと思います。
「わが国は、遠くない過去の一...