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バンドン会議の2原則を引用した安倍首相の演説

戦後70年談話~政治と歴史認識(8)バンドン会議と歴史認識のあり方

山内昌之
東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授
概要・テキスト
アジア・アフリカ会議(バンドン会議)60周年記念首脳会議での
安倍首相の演説(平成27年4月22日)
出典:首相官邸ホームページ(http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/actions/201504/22houmon.html)より
2015年4月、安倍総理はアメリカ議会で演説を行ったが、同じ4月にジャカルタで開かれたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)でも演説している。その演説で総理は、「先の大戦の深い反省」という文言を入れたという。この演説を、「21世紀構想懇談会」のメンバーである歴史学者・山内昌之氏は高く評価している。この演説内容に触れながら、歴史認識のあり方について山内氏自身の考えを述べ、締めくくる。戦後70年談話を考えるシリーズ第8回(最終話)。
時間:07:51
収録日:2015/05/18
追加日:2015/07/02
カテゴリー:
≪全文≫

●「深い反省」を入れ、バンドン会議で演説


 皆さん、こんにちは。トルコとアルメニアの例を考えましても、歴史認識と複雑に絡む謝罪や反省は、実に難しい問題をはらんでいることがお分かりいただけたかと思います。

 こうした問題を踏まえて、戦後70年を迎える今年(2015年)の夏に、安倍晋三総理大臣の談話が予定されていますが、こうした談話をつくる作業はなかなかに難しく、基本的には政治の仕事であります。そしてまた、直接には首相の判断に関わるものであります。

 そうしたことの一端につきまして、先般、安倍総理は、アメリカ議会の上下両院合同会議において、今年の夏に向けた、そして、歴史に対する総理の認識というものを思わせる、あるいは、それを垣間見せる演説をしまして、人々の関心を招いたところであります。

 一方、この演説の影に隠れて目立たない問題としまして、4月22日にジャカルタで開かれたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)60周年の記念首脳会議で、安倍総理が、「先の大戦の深い反省」という文言を演説に入れた意味について、やはり私は強調しておきたいと思うのです。

 総理は、バンドン会議の原則を二つわざわざ引用しています。バンドン会議の原則とは、第一に、表現をそのまま借りると「侵略または侵略の脅威・武力行使によって、他国の領土保全や政治的独立をおかさない」というものです。二つ目は、「国際紛争は平和的手段によって解決する」という原則です。これらを確認した上で、安倍総理は、「先の大戦の深い反省」という文言を入れて戦争を振り返ったわけです。


●バンドン会議での演説で評価した国は多い


 これを素直に解釈すれば、これまでの談話を踏まえて侵略への反省を受け継ぐ意思を表明したと考えることが、まことに自然であろうかと思います。これが夏の談話の原形となるのであれば、おそらくそれは非常によい方向に向かっているのではないかと私は考えます。

 まず、バンドン会議の記念行事という場所の選択がよろしいのであります。戦後の日本が平和国家として発展していく上で重要な一里塚となったのは、1955年のバンドン会議でありました。このことを1947年生まれの私としては、歴史の解説書、あるいは、子ども年鑑といったものを通して、バンドン会議の写真や内容について接する機会がありました。インドのジャワハルラール...
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