戦後70年談話~政治と歴史認識
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
バンドン会議の2原則を引用した安倍首相の演説
戦後70年談話~政治と歴史認識(8)バンドン会議と歴史認識のあり方
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
2015年4月、安倍総理はアメリカ議会で演説を行ったが、同じ4月にジャカルタで開かれたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)でも演説している。その演説で総理は、「先の大戦の深い反省」という文言を入れたという。この演説を、「21世紀構想懇談会」のメンバーである歴史学者・山内昌之氏は高く評価している。この演説内容に触れながら、歴史認識のあり方について山内氏自身の考えを述べ、締めくくる。戦後70年談話を考えるシリーズ第8回(最終話)。
時間:7分51秒
収録日:2015年5月18日
追加日:2015年7月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●「深い反省」を入れ、バンドン会議で演説


 皆さん、こんにちは。トルコとアルメニアの例を考えましても、歴史認識と複雑に絡む謝罪や反省は、実に難しい問題をはらんでいることがお分かりいただけたかと思います。

 こうした問題を踏まえて、戦後70年を迎える今年(2015年)の夏に、安倍晋三総理大臣の談話が予定されていますが、こうした談話をつくる作業はなかなかに難しく、基本的には政治の仕事であります。そしてまた、直接には首相の判断に関わるものであります。

 そうしたことの一端につきまして、先般、安倍総理は、アメリカ議会の上下両院合同会議において、今年の夏に向けた、そして、歴史に対する総理の認識というものを思わせる、あるいは、それを垣間見せる演説をしまして、人々の関心を招いたところであります。

 一方、この演説の影に隠れて目立たない問題としまして、4月22日にジャカルタで開かれたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)60周年の記念首脳会議で、安倍総理が、「先の大戦の深い反省」という文言を演説に入れた意味について、やはり私は強調しておきたいと思うのです。

 総理は、バンドン会議の原則を二つわざわざ引用しています。バンドン会議の原則とは、第一に、表現をそのまま借りると「侵略または侵略の脅威・武力行使によって、他国の領土保全や政治的独立をおかさない」というものです。二つ目は、「国際紛争は平和的手段によって解決する」という原則です。これらを確認した上で、安倍総理は、「先の大戦の深い反省」という文言を入れて戦争を振り返ったわけです。


●バンドン会議での演説で評価した国は多い


 これを素直に解釈すれば、これまでの談話を踏まえて侵略への反省を受け継ぐ意思を表明したと考えることが、まことに自然であろうかと思います。これが夏の談話の原形となるのであれば、おそらくそれは非常によい方向に向かっているのではないかと私は考えます。

 まず、バンドン会議の記念行事という場所の選択がよろしいのであります。戦後の日本が平和国家として発展していく上で重要な一里塚となったのは、1955年のバンドン会議でありました。このことを1947年生まれの私としては、歴史の解説書、あるいは、子ども年鑑といったものを通して、バンドン会議の写真や内容について接する機会がありました。インドのジャワハルラール...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎