戦後70年談話~政治と歴史認識
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
加害者と被害者への固執―日本の一般市民も辟易した表れか
戦後70年談話~政治と歴史認識(3)韓国の反応と日本人
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
安倍首相が2015年夏に発表を予定している「戦後70年首相談話」に向けて、韓国の高官からの反応や要求が相次いでいる。安倍首相の発言が世界からも注目を浴びる今、16人からなる有識者会議にも連なる歴史学者・山内昌之氏は現状をどう見ているのだろうか。戦後70年談話を考えるシリーズ第3回。
時間:8分30秒
収録日:2015年5月12日
追加日:2015年6月8日
カテゴリー:
≪全文≫

●戦後70年談話と韓国の「加害者・被害者」発言


 皆さん、こんにちは。前回に引き続き、戦後70年を迎えるにあたって、今年安倍総理が談話を出すことに関連するお話をします。

 前回は、2013年3月に朴槿恵大統領が「加害者と被害者という立場は、千年の時が流れても変わらない」と語ったことに触れました。そして今年(2015年)4月3日、韓国外務部高官が「加害者は100回謝罪しても当然であり、何回わびようが関係ない」と述べたことがやはり大変話題になりました。

 二つの発言が何を意味するかというと、外交交渉や両国関係において、日本はどんな場合にも常に加害者として屈服せよと言っているのに等しいわけです。国家の元首や外交のプロが、そのような発言をするところに、私は驚きを禁じ得ません。


●外交は51%を目指し、対決は100%に向かう


 彼らの理屈でいくならば、100パーセント自分たちの思い通りに、90パーセント以上の満足を得られなければ外交の意味がないとでも考えているとしか思えないからです。

 どんな手段を使っても当方の言い分を通そうとする。このような発想は、悪くすると日本の戦前外交、その中でも職業外交官によるものではなく陸海軍によるものに通じます。陸海軍による外交を「砲艦外交」と言います。威力や威嚇を交え、交渉相手国に対して限りない譲歩・屈服を迫るものでした。

 ところが、よく考えてみると、外交というものは、基本的に49パーセントから51パーセントの間で「せめぎ合い」をするというのが私の考えです。そこで1パーセントから2パーセントぐらい自分たちが満足したり成果を上げることで折り合いをつける。しかし、その1パーセントから2パーセントの中に、限りない真理が入っている。こうした結果を勝ち取るかどうかという点でせめぎ合うのが外交であり、100パーセントの勝利を得るのは外交ではなく、対決や戦争の論理に限りなく近づくのです。


●政治外交領域における歴史認識の同一化は不可能


 ですから、どちらの国にとっても、こうした極端な議論は自制すべきなのです。時々インターネットにおいて過激な議論がまかり通っているようですが、誠に不幸なことです。ところが、残念ながら韓国においては、時にそうした非理性的な世論が出てくるのみならず、元首である大統領や外交部の高官が語っていくところに、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏