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文革や天安門など隠したい部分には決して光を当てない中国

戦後70年談話~政治と歴史認識(5)歴史認識とインテグリティー

山内昌之
東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授
概要・テキスト
文化大革命中に制作されたプロパガンダの絵
歴史認識とは単に過去に関わるものではなく、その時々の時代、国の情勢が複雑に反映するものだ。それゆえ、歴史認識を論ずるのは非常に難しいことだが、だからこそ、われわれはインテグリティーをもって歴史を語るべきなのだ。これは、歴史に対して常に真摯に、そして謙虚に向かい合ってきた歴史学者・山内昌之氏が送る、日本と世界へのメッセージである。戦後70年談話を考えるシリーズ第5回。
時間:07:33
収録日:2015/05/18
追加日:2015/06/18
カテゴリー:
≪全文≫

●歴史認識とは過去のみの問題ではない

 
 皆さん、こんにちは。

 今回は、引き続き歴史認識の問題について扱ってみたいと思います。前回、アルメニアとトルコとの間に横たわっている歴史における、今日風にいうならば加害者と被害者との関係などについて触れるところがありました。

 歴史認識の問題は、日本と韓国、日本と中国との関係を見ればすぐにお分かりのように、単純に過去にのみ関わる問題ではありません。過去の事実をどう解釈するかといった問題以上に、それぞれの時代を生きている人々の問題であり、そして、そこには時代状況が複雑に反映しているという点を見なくてはなりません。

 最近、ミネルヴァ書房から『日韓歴史認識問題とは何か』という書物を上梓した神戸大学大学院の木村幹教授によりますと、歴史認識の問題とは、戦争や植民地支配といった第二次世界大戦以前の問題である以上に、戦後や植民地支配終焉後の問題でもあります。つまり、歴史があって歴史認識が存在するのではなく、歴史認識があって初めて歴史が存在する関係だといってもよろしいでしょう。


●事実認識さえ国により異なるという問題


 アルメニア人のいわゆるアルメニア人から見た場合の虐殺に限らず、歴史には、南京事件など多くの歴史認識の問題をつくる悲惨な過去が存在することは、事実であります。しかし、南京事件についても、私自身も参加した日中歴史共同研究の研究プロセスでは、双方の委員たちの間に、解釈、いうなれば歴史認識の基礎になる事実の認識でさえ違いがありました。

 日本側の委員は、南京事件の死者数について20万人が上限であるという説を紹介しつつ、4万人という説、あるいは2万人という説もあると実証的に紹介しますが、いずれも最終的に確定するには至りません。また、そうした要因も偶発的な要素が強いというのが、日本側の主張でありました。しかし、中国側の委員はこれを認めず、被害者の総数は30万人以上だと断定してはばかりませんでした。そして、そうした日本人による虐殺なるものが、必然的なものであって偶然的なものではないという立場を縷々、彼らは開陳しました。


●現在からの光の当て方で変わる歴史認識

 
 両国の間にはいろいろな事件が起きていますし、歴史にはさまざまな事象が生じていますが、このように特定の事件だけが記憶され批判され続けるのは、加害者の...
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