戦後70年談話所感
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
21世紀構想懇談会で進言した「侵略」の定義
戦後70年談話所感(2)歴史的文脈で語る重要性
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
毎日新聞2015年8月13日(木)朝刊には、「戦後70年首相談話に望む(4)負の歴史 向き合って」と題して、歴史学者・山内昌之氏のインタビューが掲載された。聞き手は政治部松本晃記者。ここで山内氏が触れたことは、どの程度談話と照応しているのだろうか。(全4話中第2話目)
時間:9分47秒
収録日:2015年8月19日
追加日:2015年9月10日
カテゴリー:
≪全文≫

●「侵略」の定義を進言した21世紀構想懇談会


 皆さん、こんにちは。

 今日は、戦後70年を迎えた、そうした日にあたって出された首相談話についての私の所感を引き続き述べてみたいと思います。

 毎日新聞のインタビューは、「21世紀構想懇談会の委員として報告書をまとめる議論に参加されました。首相に特に参考にしてもらいたい点はどこですか」というのが、第二の問いでありました。これに対して、私は次のように答えました。そのまま引用すると、こうです。

 “満州事変以降の重い歴史に向かい合うことである。報告書で用いた「侵略」という言葉は、侵略を受けた被害者の深い傷を思い反省するという内容も伴っており、懇談会の圧倒的多数派、16人中14人が史実に正面から向き合う考え方をした。そこを尊重してほしい。”

 このように私は答えたのです。こうした希望は、ほぼかなえられたと言っていいかと思います。


●史実を歴史的文脈でとらえるという必要性


 首相の言葉を借りますと、こうです。

 「満州事変、そして国際連盟からの脱退。日本は、次第に、国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした『新しい国際秩序』への『挑戦者』となっていった。進むべき進路を誤り、戦争への道を進んでいきました」

 この安倍首相の表現は、懇談会報告書の内容と精神を生かした表現です。満州事変以降の日本帝国陸軍による大陸進出と、軍部主導の大陸の占領地経営を「侵略」と定義し、国際秩序への挑戦者と捉えた見方は、21世紀構想懇談会の見解、すなわち私たちの見解に極めて近いものです。

 他方、首相の表現には満州事変以降の大陸進出について、具体的に「侵略」と捉えているのかどうか定かではない部分もあります。おそらく中国政府や中国の世論からすれば、いずれこのあたりが不十分だという形で彼らは批判、あるいは指摘する可能性が高いかと思います。

 しかしながら、首相談話における、日本が植民地化される危機への対応や、近代化の性格、そして近代化のプロセスについての表現は、懇談会、すなわち私たちが常に問題をイデオロギーではなく歴史的文脈で具体的に捉える必要性、具体性を強調してきた提言の数々を受けているものです。


●各国にも評価された「感謝」の念


 しかも、懇談会報告、私たちの報告自体にはなかった観点として、次のような表現で、関係国による兵...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎