戦後70年談話~政治と歴史認識
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
後世のために必要な史実を緻密に議論していこう
第2話へ進む
この懇談会は総理の談話の草案を提示する場所ではない
戦後70年談話~政治と歴史認識(1)21世紀構想懇談会の役割
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
2015年の夏に予定されている安倍晋三総理大臣の戦後70年談話発表に向け、有識者による「21世紀構想懇談会」が発足。山内昌之氏は、そのメンバーとしてこれまで会合を重ねてきたが、この懇談会に関して一部誤解があるようだと話す。そこで、今シリーズでは、この懇談会の役割をはじめ、この問題に取り組む上で歴史学者としての視点、意見を述べていく。戦後70年談話を考えるシリーズ第1回。
時間:11分04秒
収録日:2015年5月12日
追加日:2015年5月28日
カテゴリー:
≪全文≫

●戦後70年談話に関する三つの視点


 皆さん、こんにちは。今年(2015年)の夏に、安倍晋三総理大臣の戦後70年に関する談話が出される予定です。この談話に関わる有識者懇談会、短くして「21世紀構想懇談会」といいますが、私はそのメンバーの一員でありまして、すでに4回の会合を重ねてきました。世の中ではこの懇談会の性格について一部誤解があるように思いますので、少し述べていくことにします。

 いずれにしましても、私が今日申し上げたいのは、これからシリーズとして何回かに分けてお話しすることになるかと思いますが、大きな世界史というものを意識して問題を俯瞰せよということが一つ目にあります。

 二つ目として、職業としての歴史家が、いかなる立場でこうした問題に取り組むのかということについて、基本的に政治家や外交官とは違うところがあるという面を話してみたいと思うのです。

 三つ目は、常に謝罪、あるいは、反省、賠償といったキーワードでこの問題を捉え、かつその連鎖で考えようとすることについてです。政治家や外交官の場合には、そうした面が当然相手国との関係で出てきますが、学者や社会科学者の場合には、こうした謝罪、あるいは、反省、賠償といったキーワードが入るのか入らないのかといったような形で歴史解釈をすることは、あまり健全とは思えません。

 以上のような点について、これから回を分けてお話ししてみたいと思うのです。


●必要なのは学者の論理とバランス感覚


 ところで、「21世紀構想懇談会」の性格についてですが、この懇談会は、総理が談話で何を語るべきかを議論したり、あるいは草案のたたき台をつくって提示し、それを総理の元に上げていくといった場所ではありません。安倍総理が談話を準備されるに当たって、ものを考える根拠、あるいは歴史の見方など、総理が談話をお考えになる材料や立場の参考になることを供することがこの懇談会の主な役割であります。

 そこで要求されるのは、当然、専門家、職業としての歴史家、あるいは、歴史学者にとっての高い学問的水準と、ものを語る際の史料的実証性、つまり、歴史的事実であったかどうかについて議論することであり、歴史的事実でもないことについて、創作したりすることによって、ある種の政治的価値観をつくり出すようなものではないのです。

 また、理論的にもきちんと整合し...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦