「村山談話」とは何だったのか
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
当時1年生議員だった安倍首相は終戦50年決議に反対
「村山談話」とは何だったのか(2)談話に至った経緯と「安倍談話」の行方
若宮啓文(元朝日新聞主筆)
1995年の表明以来、日中、日韓を中心とする日本のアジア外交の基本となった「村山談話」。この首相談話表明につながる終戦50年決議の顛末や、村山談話や歴史認識に対する安倍総理の姿勢に触れつつ、戦後70年に向けて日本が世界平和、繁栄のために示すべき姿を考える。
時間:12分52秒
収録日:2014年1月17日
追加日:2014年4月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●戦後50年にあたり過去に対する反省・謝罪を表明する国会決議の構想が浮上


前回、村山談話の意義についてお話しましたが、今回は村山(富市)さんがどうしてこういう談話を出したのか、その経緯について少しお話をしたいと思います。
1995年は実は戦後50年ですから、この年が大きな節目になるということはあらかじめ分かっていたわけです。
村山政権の前に、細川政権がありました。先ごろ話題となった細川護熙さんの政権です。この細川政権は、非自民の連立政権ということでできたわけですが、その頃から、いずれ1995年に戦後50年がくるということで、国会で決議をしたらどうかという話が持ち上がります。村山政権に変わってもそういう話は引き続きあったわけです。
特に社会党の方々が熱心だったのですが、社会党だけではなくて自民党の中にも、いわゆるハト派と言われる特にアジアとの関係を重視する方々は、戦後50年の節目となり、けじめとなる決議を国会でしたらいいのではないか、過去に対する反省、謝罪を表明しようという声が出てきたわけです。
そして、国会の中でその文言をつめようということになるのですが、これに大反対する声が噴き出しました。国会議員は大勢いますから、特に右寄りの方々は「そんな決議をする必要はない」と大反対をしたわけです。今も100歳でお元気な奥野誠亮さんという方がいますが、この方などはその代表格でして、この戦後50年の決議が持ち上がるよりだいぶ前、竹下内閣の閣僚だったときに、問題発言をして閣僚を辞任したということがありました。
その発言というのは、戦前の日本が目指したいわゆる大東亜共栄圏の構想についてのもので、「これは白人の侵略からアジアを守るためのもの、アジアを解放するための発想だった」ということで、「侵略者は白人であって日本ではない。だから、日本が侵略の責任を取るとか軍国主義だったことを反省する必要はない」という趣旨のことを言って、閣僚を辞任したことがありました。
奥野さんのほかにも、同じような信念を持って国会決議に反対する方々がいましたが、実は、安倍総理大臣もその一人だったのです。安倍さんは1993年が初当選ですので、当時はまだ国会の1年生だったわけですが、この国会決議に反対します。

●国会決議の逆効果を払しょくすべく表明された「村山談話」


そして、この国会決議は、そうした反対も...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
中国共産党と人権問題(5)そもそも人権思想と憲法とは?
中華人民共和国憲法は人権型ではない
橋爪大三郎
『貞観政要』を読む(1)長期政権を目指す者の必読書
北条政子も愛読した長期政権のバイブル『貞観政要』
田口佳史
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子