特区は長崎出島か
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
特区の中だけで解決しようするなら鎖国時代の出島と同じ
特区は長崎出島か
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
現在、日本で進められている国家戦略特区の構想。しかし、「それは長崎出島ではないか」と、疑問を投げかける曽根泰教氏。果たしてその意図とは? 特区が持つ性格を解説しながら、日本の特区構想の問題点を指摘する。
時間:7分00秒
収録日:2014年3月24日
追加日:2014年4月17日
≪全文≫

●国家戦略特区の構想に対する懸念


今日は、長崎出島のお話です。
一体それはどういう意味かと言うと、私は特区を見ていると、「特区は長崎出島なのではないか」という感じがするわけです。
国家戦略特区の構想がいま日本では進んでいます。私は、特区そのもの、つまり、そこで規制緩和をするとか、あるいは実験的な方法をやってみたいとか、そういうことに反対しているわけではないのです。規制改革は大いにするべきだし、実験的な方法は、大学だけではなく、民間、あるいはある地域でおこなったらいいと思います。
けれども、そのことと特区というものが、どうも結びつかないのです。

●特区とはオフショアマーケット


それはなぜかと言いますと、もともと特区というのは、1970年代後半に中国の改革開放政策の一環として、経済特区というものができたところから始まっています。
経済特区というのは、基本的にオフショアマーケットのことだと思っていますが、オフショアマーケットであるからには、そこに進出した外国企業などに対して、輸出入関税などを免除する、あるいは、そこでは課税をしないということもあります。そういう意味で言うと、そこへの出入りは自由ではないわけです。つまり、その特区に入ると、そこは海外ということです。飛行場でひとたび出国すると、そこはもう外国になってしまうと同じように、そういう場所が特区だと思うのです。
その意味では、特区のオフショアマーケットと国内マーケットは、実は明確に線引きされるべきなのです。
過去に、こんなことがありました。1997年にアジア金融危機が起きたときですが、タイは非常に荒波をかぶったのです。なぜかと言いますと、タイ、インドネシア、韓国、それぞれ理由は違うのですが、タイの場合に関して言えば、オフショアマーケットと国内マーケットの間の蛇口をゆるめてしまったわけです。そうすると、海外のお金が大量に国内に流れ込んで、それが不動産や金融資産にまわって、一種のバブルが起きたのです。
ですから、オフショアマーケットと国内マーケットの間にはファイアーウォールがなければいけないのです。あるいは、蛇口はきちっと締めておかなければいけないし、規制緩和をするには、段階的にするしかないわけです。つまり、秩序立てて緩和をしていくというのが、一つの方法だろうと思うのです。そういう意味で言えば、オフショアマ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(3)古書店巡りからネット書店へ
ネット古書店で便利に買える時代…「歴史探索」の意義とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新