性淘汰の理論~性差の意味は何か
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ダーウィンの提唱する「自然淘汰」と「性淘汰」とは?
性淘汰の理論~性差の意味は何か(1)ダーウィンによる二つのシナリオ
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
雄と雌はなぜ違っているのだろう。100年以上前にこのことを考えたのはダーウィンだった。生物の進化を説明した「自然淘汰」説だけでは説明しきれないほど、雄と雌には差が存在する。まず、その実態とダーウィンの考えた二つのシナリオを結び付けて考えてみよう。(全3話中第1話)
時間:8分54秒
収録日:2016年2月1日
追加日:2016年6月20日
カテゴリー:
≪全文≫

●生物は雄と雌であまりにも違いが多い


 長谷川眞理子です。今日は、「雄と雌はなぜ違うのか」という理論に基づいた生物学の話をしてみたいと思います。

 生物はどう進化するのかについて、チャールズ・ロバート・ダーウィンが提唱した一つのシナリオに「自然淘汰(ナチュラル・セレクション)」というものがあります。しかし、その後、雄と雌の違いについては少し別のことを考えなければいけないのではないかと考え、新しく「性淘汰(セクシャル・セレクション)」という理論を提出しました。そこでは、雄と雌の違いが生じる原因について考察しています。今回は、そのお話です。

 生物は、同じ種に属していても、雄と雌ではずいぶん違うところがあります。からだの大きさ、角や牙や飾り羽の有無、色がきれいだったり、あまりきれいでなかったりというように、目に見える形の上で大分違うところがあります。

 目に見えないところ、あまりすぐ分からないことでも、例えば、成長の速度に違いがあり、雄の方が早く成長したり、雌の方が早く成長したりします。それから、寿命です。一番完璧に元気に生きたとしても、どのくらい寿命が続くのかについては雄と雌によって異なることがあります。すなわち、死亡率、生存率ということになりますが、死にやすさ、生き残りやすさというものも、雄と雌によって違いがあります。また、代謝の速度ですが、どれぐらいごはんを分解して熱を出すかも違いますし、多くの行動が違います。

 行動といっても、戦うということや子どもの世話ばかりでなく、渡り鳥における渡りの時期が早めか遅めかとか、生まれた子どもが出生場所からどのぐらい遠くまで出ていくのかなどについても全て、雄と雌で違いがあるのです。


●なぜ生物の性差には多くのパターンがあるのか


 生活の全ての面にわたって性差は多様に存在するのですが、それが非常に顕著に分かることもあれば、スズメのようにどちらが雄か雌かよく分からないほど似通ったものもあります。つまり、性差は存在するものの、たいへん顕著なものとそうでもないものといった具合に、範囲はとても多岐にわたっています。

 また、あまりよく知られていないことかもしれませんが、「派手」や「けんか好き」のように、一般に雄らしいと思われている形質や行動が逆転して雌に当てはまり、雄はおとなしく地味という種類もあるのです。

...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治