性淘汰の理論~性差の意味は何か
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
配偶子の生産コスト差が雌雄のアンバランスを生んでいる
性淘汰の理論~性差の意味は何か(2)雄とは何か、雌とは何か
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授)
なぜ雄と雌では繁殖をめぐる競争のあり方が違い、それが性差となって現れるのだろう。そもそも雄と雌の定義とは何なのか。ダーウィンの理論から100年以上を経て、1990年代に立証された性淘汰のあり方に迫ってみよう。(全3話中第2話)
時間:13分57秒
収録日:2016年2月1日
追加日:2016年6月29日
カテゴリー:
≪全文≫

●ダーウィンが説明しなかった「性淘汰」の理由


 いろいろな動物を見ると、雄の方が確かに死にやすいです。雄の集団と雌の集団を比べると、0歳、1歳、2歳と、どの年齢をとっても、基本的に雄の方が死にやすいのです。そして結局、寿命も雄の方が短いことが多い。

 それは、人間でもそうです。最近は、皆が長生きをして死亡率も相当低くなっていますが、相変わらず女性の死亡率の方が低いので、女性は平均寿命が長く、最後まで余命が長いという状況になっています。

 そのような中で考えられるのは、繁殖のチャンスをめぐる競争のあり方が違うのではないか、つまり配偶相手の獲得をどうするかについて、雄と雌のやり方が異なるのではないかということです。確かにたくさんの動物を見ると、雄同士の競争は激しいし、雌の選り好みもあるでしょう。

 しかし、そもそもなぜそうなのでしょう。そのことについて、ダーウィンは答えませんでした。前回お話ししたように、時々雌雄で形質や行動が逆転している動物もいますが、それがどうして起こるのかについて、彼は言わなかったのです。


●小さい配偶子をつくる個体を雄、大きい配偶子をつくる個体を雌と呼ぶ


 どうして一般的に雄の競争の方が雌の競争よりも強く激しく、一部では逆転しているのかという疑問に対して、現代の進化生物学では、卵と精子という配偶子の数と大きさに違いがあることに根本があると理論化されています。

 そもそも雄とは何でしょう。雌とは何でしょう。卵と精子はいずれも次世代をつくる配偶子で、両方とも持っている遺伝子は同量なのに、大きさには違いがあります。雄の精子は小さくて、雌の卵は大きい。それは、栄養がついているかいないかの違いで大きさが異なっているのです。

 小さい方の配偶子を精子と呼び、大きい方の配偶子を卵と呼びます。そして、小さい配偶子をつくる個体を雄と呼び、大きい配偶子をつくる個体を雌と呼びます。

 ここを、よく逆転して考えている方がいます。そもそも最初から雄がいて、それが精子をつくり、雌がいて、それが卵を産むと思っている人が多いのです。しかし、定義からすると逆で、小さい配偶子を生産する個体を雄と呼び、大きい配偶子を生産する個体を雌と呼ぶのです。


●配偶子の生産コストが雌雄のアンバランスを生む


 栄養をたくさんつけた大きな卵はつくりにくい。そのため、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
レアメタルの光と影(1)イントロ
イノベーションがレアメタルをコモンメタルにする
岡部徹

人気の講義ランキングTOP10
AI時代と人間の再定義(4)自分と出会うチャンス
人生はエネルゲイア――AIにない「自分と出会うチャンス」
中島隆博
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(9)秀吉が作った公武統一政権と歴史のif
公武統一政権を作った秀吉の狙いとその歴史的意味
黒田基樹
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉
これからの社会・経済の構造変化(1)民主主義と意思決定スピード
フラット化…日本のヒエラルキーや無謬性の原則は遅すぎる
柳川範之
「進化」への誤解…本当は何か?(9)AI時代の人間と科学の関係
科学は嫌われる!? なぜ「物語」のほうが重要視されるのか
長谷川眞理子
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ