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配偶子の生産コスト差が雌雄のアンバランスを生んでいる

性淘汰の理論~性差の意味は何か(2)雄とは何か、雌とは何か

長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長/元総合研究大学院大学長
概要・テキスト
シロチドリ
なぜ雄と雌では繁殖をめぐる競争のあり方が違い、それが性差となって現れるのだろう。そもそも雄と雌の定義とは何なのか。ダーウィンの理論から100年以上を経て、1990年代に立証された性淘汰のあり方に迫ってみよう。(全3話中第2話)
時間:13:57
収録日:2016/02/01
追加日:2016/06/29
カテゴリー:
≪全文≫

●ダーウィンが説明しなかった「性淘汰」の理由


 いろいろな動物を見ると、雄の方が確かに死にやすいです。雄の集団と雌の集団を比べると、0歳、1歳、2歳と、どの年齢をとっても、基本的に雄の方が死にやすいのです。そして結局、寿命も雄の方が短いことが多い。

 それは、人間でもそうです。最近は、皆が長生きをして死亡率も相当低くなっていますが、相変わらず女性の死亡率の方が低いので、女性は平均寿命が長く、最後まで余命が長いという状況になっています。

 そのような中で考えられるのは、繁殖のチャンスをめぐる競争のあり方が違うのではないか、つまり配偶相手の獲得をどうするかについて、雄と雌のやり方が異なるのではないかということです。確かにたくさんの動物を見ると、雄同士の競争は激しいし、雌の選り好みもあるでしょう。

 しかし、そもそもなぜそうなのでしょう。そのことについて、ダーウィンは答えませんでした。前回お話ししたように、時々雌雄で形質や行動が逆転している動物もいますが、それがどうして起こるのかについて、彼は言わなかったのです。


●小さい配偶子をつくる個体を雄、大きい配偶子をつくる個体を雌と呼ぶ


 どうして一般的に雄の競争の方が雌の競争よりも強く激しく、一部では逆転しているのかという疑問に対して、現代の進化生物学では、卵と精子という配偶子の数と大きさに違いがあることに根本があると理論化されています。

 そもそも雄とは何でしょう。雌とは何でしょう。卵と精子はいずれも次世代をつくる配偶子で、両方とも持っている遺伝子は同量なのに、大きさには違いがあります。雄の精子は小さくて、雌の卵は大きい。それは、栄養がついているかいないかの違いで大きさが異なっているのです。

 小さい方の配偶子を精子と呼び、大きい方の配偶子を卵と呼びます。そして、小さい配偶子をつくる個体を雄と呼び、大きい配偶子をつくる個体を雌と呼びます。

 ここを、よく逆転して考えている方がいます。そもそも最初から雄がいて、それが精子をつくり、雌がいて、それが卵を産むと思っている人が多いのです。しかし、定義からすると逆で、小さい配偶子を生産する個体を雄と呼び、大きい配偶子を生産する個体を雌と呼ぶのです。


●配偶子の生産コストが雌雄のアンバランスを生む


 栄養をたくさんつけた大きな卵はつくりにくい。そのため、...
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