性淘汰の理論~性差の意味は何か
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雌の選り好みがランナウェイ仮説=とめどない進化を生む
性淘汰の理論~性差の意味は何か(3)雌はなぜ選り好みするのか
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授)
19世紀当時、ダーウィンが提唱した「雌による選り好み」説は学会や世間から否定された。雌雄の能力に対する偏見も強かったが、立証ができなかったからだ。それから100年以上たった1990年代、「雌による選り好み」説は証明されたのだが、その意味についてはいまだ議論が続いているという。その中で出てきたのが「ランナウェイ説」だ。「ランナウェイ説」とはいったいどのような考え方なのか。総合研究大学院大学理事で先導科学研究科教授・長谷川眞理子氏が解説する。(全3話中最終話)
時間:15分11秒
収録日:2016年2月1日
追加日:2016年7月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●「雌の選り好み」説はなかなか立証できなかった


 さて、ダーウィンが唱えた「雌による選り好み」の説は、当時なかなか認められませんでした。

 雄同士が競争する。その競争は激しく、勝ち残った強い雄が雌を取る。そういうことが起こるから、雄の体が大きくなったり、角が生えたりする。それには皆すぐに納得したのですが、きれいな羽やその類のものが、雌が選ぶからそうなったという意見には、19世紀のダーウィンの時代の人々は誰も賛成せず、「そんなはずがない」と否定したのです。

 否定の根拠については、当時の論争を見るとひどいことがたくさん書かれています。「選り好みをするような知力が、雌にあるはずがない」とか、「雌の好みほど気まぐれなものはない。そのような気まぐれで雄が変わってたまるか」など、ご自分の経験から言っているのかと疑われるような、とても生物学的なものとは思えない議論がたくさんありました。

 しかし、決定的だったのは、雌が本当に選り好みをしているということを、なかなか立証できなかったことでした。


●雌の選り好みは証明されたが、議論は続いている


 ダーウィンから100年以上たった1990年代、やはり「雌は選り好みをしている」ということが本当に示されるようになりました。

 いろいろな鳥や魚など長い尻尾を持つものの尻尾を半分に切り、切り取った半分を別の雄の尻尾に貼り付けて、極端に長い尻尾を持つ雄と、半分まで短くした雄をつくったところ、雌はどっちに来たかというと、長い方に来たというのです。そういう類の実験がたくさん行われ、雄は雌に選ばれるような長い尻尾や派手な形質を持っていることが本当に実証されてきたのです。

 さえずりについてもそうです。とても美しい声を出す鳥はたくさんいますが、さえずらない鳥よりもさえずる鳥の方へ、たくさんの配偶者がやって来る。あるいは、さえずりが複雑で美しい雄ほど早く雌がやって来る。さえずりのレパートリーが広く、いろいろな歌い方をする雄ほど、雌がたくさん来て、たくさんの子どもを残す。そのようなことが、とてもよく分かるようになりました。十分に証拠が挙げられましたので、今では「雌が選り好みをしている」ということは確かなことなのです。

 ただし、選り好みをする意味については、いまだに種々の議論が続いています。例えば、より長い尻尾がいい、より美し...

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