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中国史の「中原」に当たるのが米国の「独立十三州」

アメリカの建国の理念と中華思想の類似性

石川好
作家
情報・テキスト
イギリス領北アメリカ植民地旗
中原より発し、自らを太陽と見なし、その光で世界を遍く照らし出すことを使命とした、中国。そのありようは、「自由・人権・民主」を掲げるアメリカ合衆国と酷似する。両者の共通性と違いを、石川好氏が解説する。
時間:04:24
収録日:2013/10/31
追加日:2014/04/24
カテゴリー:
≪全文≫

●中国史の「中原」に当たるのがアメリカの「東部13州」


中国は、国としてのありようが他とはまったく違っています。「中華思想」という言葉を何度も申し上げていますが、これに似ている国はどこかと言えば、アメリカ合衆国です。中国史で言うところの「中原」にあたるのが、アメリカ合衆国では、建国の理念である独立宣言を起草した東部13州ということになります。つまり、アメリカ合衆国が打ち出した「自由・人権・民主」という理念それ自体が、いわば近代全体に及んでいく「中華思想」であると言えるのです。
中国が古代以来、自国文明の光源の及ぶ範囲を中国文化圏と見なしたのと同じように、アメリカ合衆国の打ち出した理念はいまの世界に隈なく広まっています。そういう点で、アメリカ合衆国のありようと中国のありようは、非常に似ています。何度も申し上げている「中原の思想」と、アメリカで東部13州の作り出した独立宣言や合衆国憲法は似ているのです。だから、国の外縁にもアメリカ人ができていきます。

●「帝国」の考える「国民」の定義とは?


つまり、アメリカという国から見れば、世界には2種類の人間しかいない。今アメリカ人である人間と、まだアメリカ人になっていない人間です。ですから、本来「私は日本人だ」「ドイツ人である」と名乗っている人も、アメリカの建国理念、アメリカという国家の成り立ちに照らせば、それは「まだあなた方はアメリカ人になっていない。でも、いつでもアメリカ人になれますよ」というアメリカ中華思想が当てはまるわけです。
しかし、巨大な文明圏を産む帝国には常にそういうところがあります。ローマがやはりそうでした。ローマ帝国によって支配された土地の人間だったとしても、帝国における約束事すなわち兵役の義務を果たしたりしていけば、周辺はみんなローマ人になれるのです。こういう考え方は、特段中国だけの問題ではなくて、ローマ帝国もそうだったし、今日のアメリカ合衆国も同じようなことをやっているのです。
その中でも中国が一番わかりにくいのはなぜかというと、アメリカは一個の閉鎖した島国として近代国家を成立させているために、主権や国家概念が明確です。他方、中国というのは、このシリーズで繰り返してきたように、国境がいまだに曖昧です。そのために、どうしても理解されにくいところがあります。

●「日出づる国」の本来的な意味を理解できなくなった今の日本


本来、そこを最も理解していなければならないのは、その周辺国として、中国文明の光の中で生まれてきた日本なのです。
われわれの国の名前は「日本」と言いますが、日本とは「日出づる国」のことです。しかし、「日出づる国」とはどこから見たときのことかというと、中国大陸から見たときに「日出づる国」なのです。ということは、日本という国は、国の名前をつけるときにも中国からの視線を意識していたということになります。中国という光源がまずあって、そこから見ると太陽の昇る方角に当たる国。だから「日本」、という順番です。
そういうことを考えれば、中国から見た場合の周辺国・日本は、中国文明という太陽から見ると、おそらく金星や土星あたりの位置づけにしか映っていないはずです。これは歴史的宿命なのです。ところが、日本と中国の関係において、中国のそうした考えを理解することができなくなってしまっているのが、今の日本ではないか。そのように言えると思います。
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