●中国、朝鮮半島、ロシアにとって日本は邪魔な国である
今回は、地図を見ながらお話ししたいと思います。
このシリーズの中でお話ししてきたのは、中国という国の外縁の国の問題です。われわれは普通、世界地図を見るとき、中国や朝鮮半島、ロシアはだいたい左上のほうにあります。その位置に慣れ親しんでいるわけです。
ところが、これは中国や朝鮮半島、ロシアから見ると、日本はいったいどのように見えるかという地図です。東西も南北も逆になっていますが、富山県が作ったもので、別に私が無理やり逆さまに貼ったわけではありません。
これが中国大陸です。そしてこれが朝鮮半島。ロシアがここにあります。そしてこれが東シナ海です。日本列島はこのようになっていて、このあたりまで伸びています。
この地図を見れば、中国、朝鮮半島、あるいはロシアにとって、日本がいかに邪魔な国であるかがすぐに分かります。日本は、彼らが外に出ていくための海を全部遮ってしまっているわけです。沖縄や尖閣諸島はあの辺りにあります。こんなに長い島によって大陸は包囲されているのです。これが、日本と大陸との宿命的な関係です。このような日本の位置を、われわれはどれだけ理解しているでしょうか。
●日本の近代は中国や朝鮮半島やロシアとの紛争の歴史
近代以降、貿易が活発になればどうしても中国、朝鮮半島、ロシアは外海に出たいわけです。そういう中で、日本が朝鮮半島を植民地にして、中国、ロシアと戦争をしたのは、避けられない宿命を感じざるを得ません。どうしても外海に出たい国々と、出るのを遮る日本列島があるわけですから。古代から今に至るまでわれわれと彼らは争う宿命にありましたし、これからもあり続けるでしょう。われわれが世界情勢を考える場合に、日本は中国や朝鮮半島やロシアからこのように見えるのだと学習しておくことは、外交政策を考える上でも、貿易を考える上でも非常に重要です。
これだけ近い国でありながら、この三つの国とうまくやっていけない理由は、間違いなく近代において彼らと戦争をしたからです。ロシアとは二度戦争をしました。日露戦争と第二次世界大戦の末期に、彼らは強引に日本に入ってきました。中国とも、日清戦争や十五年戦争をしています。朝鮮半島は日本が植民地化してしまいました。日本の近代100年は、この地図に見えるところでの紛争の歴史だったという言い方もできると思います。
●この地図をイメージすることが正しい問題解決につながる
尖閣諸島問題はまさに今の話の延長にあって、尖閣諸島の辺りは中国が外海に出ていくための出入口なのです。彼らが一歩も譲らないと言うのは、地政学から見れば当然です。一方、ロシアが北方四島を日本に返そうとしないのは、北方四島を押さえておけば彼らが自由に太平洋に出ていけるからです。尖閣諸島問題と北方領土問題は、中国にとってもロシアにとってもまさに死活問題であり、日本にとっても地理上の宿命なのです。
このような日本の歴史的な課題をわれわれがどのような形で解決していくのか、21世紀も22世紀も、政治家にも経済人にも問われ続けるでしょう。その際、中国、韓国、ロシアとの問題が起こるたびに、この地図をイメージしながら学習・議論することが、正しい解決方法を導くための重要な手段ではないかと思います。