プラチナ社会構想の集大成、『新ビジョン2050』を語る
小宮山宏氏がプラチナ社会実現に向けて書いた新著への想い
プラチナ社会構想の集大成、『新ビジョン2050』を語る
科学と技術
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
日本を「課題先進国」と捉え、その課題を解決するために編まれたビジョンが「プラチナ社会」である。東京大学第28代総長で株式会社三菱総合研究所理事長・小宮山宏氏は、プラチナ社会を実現するためのプラチナ構想ネットワークの発起人代表であり、会長を務めてきた。2016年10月、その集大成というべき本が出版された。『新ビジョン2050』である。
時間:11分55秒
収録日:2016年12月7日
追加日:2016年12月28日
収録日:2016年12月7日
追加日:2016年12月28日
≪全文≫
● “プラチナ教”の教典となる新著が出版された
私は2016年10月に、『新ビジョン2050 地球温暖化、少子高齢化は克服できる』(日経BP社)というタイトルの新しい本を出版いたしました。口はばったい言い方ですが、私がこれまでいろいろ研究してきた地球や人類の未来に関する提案の集大成という位置付けです。冗談まじりにプラチナ社会や“プラチナ教”の教典だという言い方もしていますが、ぜひお手に取って見ていただきたいと思います。
では、なぜこの本を書いたのか、何が書いてあるのかについて、お話します。今は地球の問題が非常に大きいですよね。同時に、国家や経済を含んだ社会という問題もあります。しかし、これは当たり前のことですが、個人にとっては「人」の問題が大きいわけです。それぞれがいろいろな困難を抱えており、それぞれの局面で議論するものは非常に多い。しかし、全体として整合性のあるモデルがないと、共有できるビジョンにはならないと思うのです。
私は、大学ではエネルギーや物質など、どちらかというと「地球」に関係の深い方面、社会や経済の中でも「物質」に関するもの、経済であってもお金より「物質」に関係することを研究してきました。大学を離れてからは、よりお金に近い部分、より人に寄り添う部分を進めてきました。これが「プラチナ社会」の相当部分を占めています。
こうした大学での40年と、大学を離れてからの8年の間の蓄積を書いたのが本書です。「地球と経済社会と人」、この三つを統合的に考えた新しいモデルをつくったわけです。
●日本は自給国になり、AIが駆動力となるという予測
細かい話は本書を読んでいただきたいのですが、物質面でいうと、重要なポイントは「日本が自給社会になる」ことです。多くの皆さんが、日本は資源の乏しい国だと思われているから、一次資源を輸入し、それを加工して輸出しお金を稼いでいくという「加工貿易」論が、個人にも社会にも染み込んでいます。しかし、それではもうこの先、続きません。
ここで「飽和」ということを考えると、日本は自給ができるのです。それも、そう遠いことではありません。2050年には、ほぼそういう状況になる、あるいは少なくとも全ての人に「なるほど、そうなるんだ」ということが納得的に見えてくる状況になると、私は確信しています。
同時に、社会・経済に関していいますと、これか...
● “プラチナ教”の教典となる新著が出版された
私は2016年10月に、『新ビジョン2050 地球温暖化、少子高齢化は克服できる』(日経BP社)というタイトルの新しい本を出版いたしました。口はばったい言い方ですが、私がこれまでいろいろ研究してきた地球や人類の未来に関する提案の集大成という位置付けです。冗談まじりにプラチナ社会や“プラチナ教”の教典だという言い方もしていますが、ぜひお手に取って見ていただきたいと思います。
では、なぜこの本を書いたのか、何が書いてあるのかについて、お話します。今は地球の問題が非常に大きいですよね。同時に、国家や経済を含んだ社会という問題もあります。しかし、これは当たり前のことですが、個人にとっては「人」の問題が大きいわけです。それぞれがいろいろな困難を抱えており、それぞれの局面で議論するものは非常に多い。しかし、全体として整合性のあるモデルがないと、共有できるビジョンにはならないと思うのです。
私は、大学ではエネルギーや物質など、どちらかというと「地球」に関係の深い方面、社会や経済の中でも「物質」に関するもの、経済であってもお金より「物質」に関係することを研究してきました。大学を離れてからは、よりお金に近い部分、より人に寄り添う部分を進めてきました。これが「プラチナ社会」の相当部分を占めています。
こうした大学での40年と、大学を離れてからの8年の間の蓄積を書いたのが本書です。「地球と経済社会と人」、この三つを統合的に考えた新しいモデルをつくったわけです。
●日本は自給国になり、AIが駆動力となるという予測
細かい話は本書を読んでいただきたいのですが、物質面でいうと、重要なポイントは「日本が自給社会になる」ことです。多くの皆さんが、日本は資源の乏しい国だと思われているから、一次資源を輸入し、それを加工して輸出しお金を稼いでいくという「加工貿易」論が、個人にも社会にも染み込んでいます。しかし、それではもうこの先、続きません。
ここで「飽和」ということを考えると、日本は自給ができるのです。それも、そう遠いことではありません。2050年には、ほぼそういう状況になる、あるいは少なくとも全ての人に「なるほど、そうなるんだ」ということが納得的に見えてくる状況になると、私は確信しています。
同時に、社会・経済に関していいますと、これか...
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