持続可能で明るい低炭素社会
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
溶ける氷河、沈む島―温暖化対策の鍵の一つは「飽和」
持続可能で明るい低炭素社会(1)転換期の「飽和」
科学と技術
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
「低炭素化」社会が、いよいよ経済的にも視野に入ってきたと、株式会社三菱総合研究所理事長で科学技術振興機構低炭素社会戦略センター長・小宮山宏氏は語る。その際のキーワードは「飽和」だ。一体何が飽和したのか。なぜ飽和の時代を迎えているのか。(2015年6月23日開催 一般社団法人地球温暖化防止全国ネット設立5周年記念式典基調講演「持続可能で明るい低炭素社会 ビジョン2050の実現は視野に入った!」より、全4話中第1話目)
時間:11分40秒
収録日:2015年6月23日
追加日:2015年7月27日
≪全文≫

●低炭素化の実現が視野に入ってきた


 小宮山でございます。今日、私がお話しさせていただくのは、「低炭素化」です。理想的にはそうあるべきだし、技術的にも可能で、実現させる必要はあるが、現実的にはなかなか難しい。これがこれまでの低炭素化の評価でした。それがようやく経済的にも低炭素化の実現が視野に入ってきたという話をしたいと思います。

 内容は三つです。一つ目に、いま私たちには「転換期」を生きているという認識があり、キーワードは「飽和」だということ。二つ目に、ビジョンとして「プラチナ社会」を提案していること。プラチナ社会の内容で今回のテーマと特に関連するのは、「省エネルギー」「都市鉱山」「再生可能エネルギー」です。最後に、これらのビジョンが経済的視野に入ってきたことを申し上げたいと思います。

 ここでこのような写真を出す必要はないかもしれませんが、温暖化は大変なのです。氷河は溶け、沈み掛けている島が出てきています。なぜいま世界がこのような大転換期にあるのか、温暖化にどのような対策を打てばよいのか。その答えの一つが「飽和」にあると思います。飽和は、後で申し上げるように、経済にとってあまり良いことではありませんが、温暖化対策を考える上で重要な要素・条件となっています。


●明確な格差をもたらしたのは、産業革命だ


 このグラフですが、縦軸は世界各国それぞれの1人当たりのGDPを、その時々の世界平均の1人当たりのGDPで割った値です。先進国はいずれも3から4の辺りにありますが、それは、私たちを含む先進国の人々が世界平均の3、4倍の所得を得ているという意味です。

 1000年前は、どの国も同程度の所得でした。産業のほとんどが農業だったからです。多くの人が食べ物を作るために生きていました。1人当たりの食物量はそれほど変わりませんから、国ごとの貧しさの差はなかったのです。

 そこに明確な格差をもたらしたのは、産業革命です。現在は、農業だけを見ても、少なくとも産業革命当時の200倍、生産性が高まっています。昔は、100人に99人が穀物を作り、ようやく全員に行き渡る穀物を生み出していたのですが、今は穀物だけなら、200人に1人が大規模農業を行えば、全員が食べていくことが可能です。これが、生産性が200倍上がったことの意味です。

 このような高い生産性を真っ先に手に...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
現在の宇宙の姿(1)星はなぜ自ら輝くのか
宇宙に関するニュースを理解するために宇宙の姿を学ぶ
岡村定矩
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
未来を知るための宇宙開発の歴史(13)発展する宇宙空間利用と進化する技術
最近の話題は宇宙生命学…生命の起源に迫る可能性
川口淳一郎
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(3)戦狼外交の戦略と思惑
戦狼外交で国際秩序に挑戦…戦術的な微笑外交で見誤るな
垂秀夫
数学と音楽の不思議な関係(2)リズムと数の不思議と変拍子
童歌「あんたがたどこさ」は何拍子?変拍子の不思議な魅力
中島さち子
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(3)戦前から紐解く財政構造
日本も資産格差は案外大きい?…預金の偏在と世代格差
養田功一郎