資源大国日本
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
資源を輸入して加工するのではなく、これからは自給へ
資源大国日本(2)加工貿易立国の終焉
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
工業を独占する先進国と安価な資源を売る途上国。長い間続いたこの構図が近年崩れ始め、やがて従来の加工貿易という戦略が成立しなくなるだろう。そこで、小宮山宏氏が具体的数値を元に、資源自給国家への可能性を提起する。
時間:10分26秒
収録日:2014年4月11日
追加日:2014年5月27日
≪全文≫

●1割の国が工業を独占し、9割の国が安い資源を売る時代が続いた


 今日は、日本の基本的な戦略である「資源を輸入して製品を輸出し、それによって稼いだお金でまた資源を買う」という、いわゆる加工貿易というものが今後はもう成り立たないというお話と、合わせて、われわれは、エネルギー、鉱物資源、食料といった基本的な一次資源を自給する国家にならなくてはいけないし、そういう国家になれる、というお話をさせていただこうと思います。

 まず、この図を見ていただきたいのですが、これは、縦軸が世界の主要国で、その中には日本も入っていますが、主要国の1人当たりのGDPを、その時々の世界平均の1人当たりのGDPで割った値を示しています。いま世界の主要先進国が3とか4という値のところにいるというのは、世界平均の3倍から4倍の所得を得ているという意味です。

 1,000年ぐらい前ですと、主力の産業はほとんどが農業で、江戸時代になっても85パーセントは農業を主力としてやっていたわけです。

 その状況を変えたのが産業革命でした。産業革命によって工業が起こったのです。工業製品は、一部の国でしかつくれなかったため、非常に高価だったわけです。昔、1つのトランジスタラジオが、大きなズタ袋でカカオ豆3袋と等価交換されたという時代がありました。それぐらい資源が安く、工業製品が高かったわけです。

 では、なぜ資源が安くて工業製品が高かったのでしょうか。それを考えてみる必要があります。なぜかと言うと、産業革命をやった国は、1割の先進国だったからです。つまり、ヨーロッパの国と日本と、ヨーロッパのクローンとも言える北米、つまり、アメリカ、カナダと、それからオーストラリア大陸が先進国で、人口にすると世界の10パーセントの国で、これらが工業を独占していたわけで、この他のアフリカ、アジア、南アメリカの国は、工業をやれなかったし、やるだけの力もなかったのです。

 そうすると、この90パーセントの人口の国は、売るものというと一次資源しかなかったわけです。ですから、工業製品が極めて高く、一次資源が安いという時代がずっと続いていたのです。


●21世紀は先進国と途上国の差が急接近、加工貿易モデルが成立しなくなる


 ところが、この図でも分かるように、ここ10年、20年で、先進国の人たちと途上国の人たち、ここにはインドと中国しか書いてありませんけれ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
都市木造の可能性~木造ビルへの挑戦(1)木造建築の歴史と現在
伝統木造建築はいま都市で必要な建物ではない
腰原幹雄
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫