資源大国日本
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
鉄14億トンのうち4億トンはスクラップからできている
資源大国日本(1)「都市鉱山」の可能性
科学と技術
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
地下資源のない国・日本。しかし、リサイクルを中核とした「都市鉱山」の活用が拡大している。資源の貧困という弱点を克服し、日本が世界に先駆けた「課題解決先進国」モデルを構築するために期待される、都市鉱山の可能性や有用性について解説する。
時間:10分37秒
収録日:2013年12月6日
追加日:2014年5月28日
≪全文≫

●近い将来、金属の供給の中核となるリサイクル

日本が地下資源のない国であることはよく知られていますが、それは今後、日本にとってそれほど弱点にはならないという、発想の転換の話を少ししてみたいと思います。
3年くらい前に、レアメタルの輸出を中国が止めて、日本が大変な危機に陥ると言われました。しかし、当時10倍ぐらいに跳ね上がったレアメタルの値段は今、それ以前とそれほど変わらない4分の1ぐらいにまで落ちてきています。
これはなぜかと言うと、一つは、使う量をものすごく減らせる技術が開発できたからです。それからもう一つは、リサイクルをするようになったことで、トータルの需要がものすごく減ったからです。
特にリサイクルに関して言えば、今後、2030年、2040年、2050年あたりで、メタルの供給の中核となる時代が必ずくると思います。

●必要な鉄はスクラップでまかなう-拡大しつつある都市鉱山

これは、例えば鉄でもそうですし、金でもそうです。
鉄の例で言うと、昨年、世界で14億トンの鉄鋼が作られましたが、そのうち、酸化物である鉄鉱石から酸素を取り除いて作った、つまり鉄鉱石を還元して作った鉄は10億トンでした。では、残りの4億トンは何から作ったかと言うと、スクラップなのです。
日本では自動車が1年間に500万台ぐらい廃車されていますが、それは野山に捨てられるわけではなく、回収されて、鉄をもう1回溶かして、新しい鉄として使っています。これがスクラップということですが、「都市にある鉱山」という意味で「都市鉱山」という呼び方もされています。鉄の場合は既に14億トンのうちの30パーセントの4億トンが都市鉱山だということです。
では、都市鉱山と鉄鉱石の比率は、今後どちらが大きくなっていくのでしょうか。これは大変重要な問題ですが、間違いなく都市鉱山が大きくなっていくのです。
以前、「人工物の飽和」についてお話をしました。日本は現在、100人に50台ぐらいの割合で自動車を持つようになりました。先進国はどこも自動車のトータルの台数が飽和しており、新車はその状況下で新しく出ていますが、これはつまり、スクラップになり廃車になった分だけ新車が出ているということになります。したがって、廃車の中に必要な鉄が入っているので、このスクラップにしたものから新車を作ればいいということになります。
この「人工...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
未来を知るための宇宙開発の歴史(1)宇宙開発の流れを概観する
宇宙開発の歴史、そして未来へ…6枚の写真で概観する
川口淳一郎
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(4)百年後の日本人のために
百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために
門田隆将
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留