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バラ、光、歌で奇跡のV字回復!ハウステンボスの集客戦略

ハウステンボス再生への戦略(1)仕組みで勝つ

澤田秀雄
株式会社エイチ・アイ・エス 最高顧問
情報・テキスト
18年間赤字のハウステンボスを1年で黒字に転換させた澤田秀雄氏。〝100万本のバラ〟〝光の王国〟〝ハウステンボス歌劇団〟など、数々の魅力あるイベントで集客を増やしてきた、ハウステンボス再生における澤田氏の戦略論に迫る。
時間:19:49
収録日:2014/03/31
追加日:2014/05/15
カテゴリー:
≪全文≫

●戦いに勝つために必要なのは、将と武器と戦い方


―― 今回は、戦略の話をお願いしてもいいですか。例えば、アレクサンダーやローマ兵の陣形、ファランクスは、その時々で変えていきますが、ファランクスの陣形を組み立てたのは、ローマが圧倒的に強かった時代が最初ですよね。そういうことを考えついた人が賢いわけですか。

澤田 まず、その時代で勝てる戦略、体系を最初につくったならば、しばらくは勝てますよね。なぜかと言うと、それが一番強い戦い方の体系だからです。あとは優秀な将軍がいて、いかに素晴らしい指揮、戦い方をするか、です。

 当時は、必ずそこにアレクサンダーのような優秀な将軍がいました。ローマもそうですね。それと、戦い方です。例えば織田信長が鉄砲を使った戦いや、ジンギスカンもそうですが、歴史を見ていると、その時代に最強の戦い方と最高の指揮者を持っているところが勝っていますし、やはり強いですね。

 企業もそういうところがあると思います。経営者と、他社より優秀な武器、戦略があるかないか、ということです。

―― なるほど。では、ベトナム戦争の場合は、北ベトナムのグエン・ザップ将軍ですか。

澤田 彼は優秀で、素晴らしい将軍ですよね。

―― グエン・ザップ将軍の北ベトナムは、当時、ソ連や中国からも武器を補給できていたので、意外にアメリカとの武器差がそれほどなかったのですよね。あれは、冷戦下の米ソの代理戦争で、かたやグエン・ザップ将軍のような大変優秀な将軍がいて、かたや南ベトナムのほうは雇われた兵でした。武器差で、南ベトナムのアメリカサイドが多少は有利だったとは言え、武器自体はさして差がなく、その中でやっていたという感じですか。

澤田 だからと言って、アメリカの方が、軍も武器も常に潤沢にありましたから。けれど、グエン・ザップ将軍の方が、ゲリラ戦が非常に上手だったのです。そして、ゲリラ戦で戦うときはゲリラ戦、正規戦で戦うときは正規戦と、きちんと分けていました。武器も補給路が常に後ろからとは限りません。そのときに彼らはゲリラ戦をやって、敵の銃、敵の武器をうまく取ったり使ったりしていました。そういうゲリラ戦術に非常に長けていたのではないですか。だから、アメリカは、ああいうつらい思いをしたのではないでしょうか。そういう意味では、やはり将でしょう。

―― なるほど、将ですね。将と武器。

澤田 将と武器、戦い方ですね。武器性能と戦略戦術、それを使いこなすのが将軍です。それらがそろえば、すごく強いですね。

―― これは、企業の戦も同じですね。

澤田 企業も、競争して戦う場合、似ていますね。


●2割のコストダウンの方法~情報収集によって始める前に勝ちが決まる~


―― ハウステンボスの話ですが、誰がやっても18年間赤字だったものが、澤田さんが引き受けられて1年目で変わりました。先ほどの話でいえば、将が変わるわけですよね。それから戦い方も変わります。でも、兵隊さんは、総料理長を除いて誰もクビにしていないわけですから、同じです。しかも同じ敷地です。それで、勝っていくというのは、先の話のある種の応用形ですよね。

澤田 そうですね。僕が行ったときは、平均年齢40歳以上で、戦いで言ったら、ずっと負けてきた、負けぐせのついたスタッフでした。それと、お金があまりありません。例えばディズニーはイベント費に年間百億円も2百億円も使えますし、ユニバーサルも何十億円、下手をしたら何百億円も使えます。かたや、こちらは、よく使っても数千万か億。言い換えれば、竹やりと火縄銃で戦わなくてはいけないのです。なかなか面白い戦いです。

―― 普通ここまでくると、勝てないですよね。18年間負け続けで、ディズニーのようなブランド力もなく。

澤田 それと、資金力と人材と、全部ないわけですから。

―― 普通、こんな話は受けないですよね。

澤田 僕も最初は断りました。

―― でも、やっているうちに、どこかで勝てる瞬間が見えてくるわけですか。

澤田 いや、戦う前に勝ちます。

―― 戦いに入っていく前に8割方は見えているのですか。

澤田 それは、先ほども言ったように、情報収集です。競争相手がいるのなら、競争相手の力と、こちらの力をきちんと知ること。「彼を知り己を知れば百戦して危うからず」という言葉が孫子の兵法にあるように、まず情報収集から始めます。そして、次にやることは、どうしたら勝てるのか、という分析です。分析して、「勝てるな」ということになれば、だいたい7割は勝っています。つまり、入る前に、情報収集による数字や現状の把握から、作戦の準備まで、ほとんど終わっているのです。だから、入ったら1年で黒になるというわけです。

―― 入る前の期間というのは、3カ月間くらいでしたか。

澤田 いや、もっと...
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