●戦いに勝つために必要なのは、将と武器と戦い方
―― 今回は、戦略の話をお願いしてもいいですか。例えば、アレクサンダーやローマ兵の陣形、ファランクスは、その時々で変えていきますが、ファランクスの陣形を組み立てたのは、ローマが圧倒的に強かった時代が最初ですよね。そういうことを考えついた人が賢いわけですか。
澤田 まず、その時代で勝てる戦略、体系を最初につくったならば、しばらくは勝てますよね。なぜかと言うと、それが一番強い戦い方の体系だからです。あとは優秀な将軍がいて、いかに素晴らしい指揮、戦い方をするか、です。
当時は、必ずそこにアレクサンダーのような優秀な将軍がいました。ローマもそうですね。それと、戦い方です。例えば織田信長が鉄砲を使った戦いや、ジンギスカンもそうですが、歴史を見ていると、その時代に最強の戦い方と最高の指揮者を持っているところが勝っていますし、やはり強いですね。
企業もそういうところがあると思います。経営者と、他社より優秀な武器、戦略があるかないか、ということです。
―― なるほど。では、ベトナム戦争の場合は、北ベトナムのグエン・ザップ将軍ですか。
澤田 彼は優秀で、素晴らしい将軍ですよね。
―― グエン・ザップ将軍の北ベトナムは、当時、ソ連や中国からも武器を補給できていたので、意外にアメリカとの武器差がそれほどなかったのですよね。あれは、冷戦下の米ソの代理戦争で、かたやグエン・ザップ将軍のような大変優秀な将軍がいて、かたや南ベトナムのほうは雇われた兵でした。武器差で、南ベトナムのアメリカサイドが多少は有利だったとは言え、武器自体はさして差がなく、その中でやっていたという感じですか。
澤田 だからと言って、アメリカの方が、軍も武器も常に潤沢にありましたから。けれど、グエン・ザップ将軍の方が、ゲリラ戦が非常に上手だったのです。そして、ゲリラ戦で戦うときはゲリラ戦、正規戦で戦うときは正規戦と、きちんと分けていました。武器も補給路が常に後ろからとは限りません。そのときに彼らはゲリラ戦をやって、敵の銃、敵の武器をうまく取ったり使ったりしていました。そういうゲリラ戦術に非常に長けていたのではないですか。だから、アメリカは、ああいうつらい思いをしたのではないでしょうか。そういう意味では、やはり将でしょう。
―― なるほど、将ですね。将と武...