●大転換はスタートから半年以内に行う
それから、組織改革は半年以内で、と言いましたが、これは一つの目安ではあるものの重要です。多くの日本の組織は1年という年度の単位で会社が回っています。そのため1年たってしまうと、次の年度の計画を立てたり人事異動が出てきたりしますが、半年であれば、その時の体制や事業計画の中で動くことができます。
また先ほど言った通り、人間は慣れます。半年ぐらいが非常に厳しいことに対して最高レベルの緊張感が保てるぎりぎりのところではないかと思います。もちろんその後も緊張感をもって取り組むのですが、特別なことに対しては体力の問題もあります。やはり多くのことをやらなければならないので、だらだらやらずに集中的にやることが大事です。
●目に見える変化に心を配る
その半年に経営者やリーダーが考えるべきことは、自分や部下や社員が慣れていってしまう前に新しいやり方を組み込んで、それをルーティンにしてしまうということです。
例えば書類の作り方や物事の考え方だけでなく、一度ITシステムを変更して仕事の業務システムを変えてしまうと、会社に定着してしまいます。
その都度考えてやるのは無駄なため、定着すれば効率が上がります。一方で、社員がそのやり方に慣れてしまうということによって、これがルーティンになり、いちいち考えなくなってしまうという危険もあります。
そのため、最初の半年に皆で頭を絞り、どのやり方が新しいやり方として良いのか、よく考え、それを組み込み、次のルーティンにしてしまうことが重要です。
何年かに一度見直した方が良いと思いますが、一度やるというときは、何年もかけてではなくて、一気に行ってしまうということをお勧めしたいです。
●達成感、「嬉しさ」の演出をする
それからもう一つは、再生を行う半年やその後、苦しく辛い経験も多いと思いますが、そのことについてです。自分の同僚がやっていた事業をやめたり、売却しなければいけないということもあります。今まで花形部門だったものが、そうではなく新しい部門に光を当てるということになった場合、元の部門に残った方たちの心の寂しさのようなものも含め、リーダーはケアをしていく必要があります。
そういったものをどうやったら緩和できるのでしょうか。やはり、何か達成をしたときに、目に見える形で「嬉しさ」を演出するということも大事ではないかと思います。
嬉しさの演出というのは、どんな風にやるのでしょうか。リーダーは皆、優しい心も持っているので、部下たちが苦しみ、よく頑張っているのを見ると、途中で何かしてあげたくなってしまうと思います。
もちろん日々の中で、声をかけたり気を配るということは大事です。ですが、そこで何か緩むようなことをしてしまうと、その先改革が続かなくなります。そのため、やはり何か大きい達成をしたときに、象徴的に「良かったな」と皆が嬉しく感じることをやるということに意味があるのではないかと思います。
●全ての改革を終えた後にする達成感の演出の意味
例えば私が最初に取り組んだ案件は、地方のバス会社の再生でした。このバス会社の再生は日本で最初のバス会社の再生であり、そもそもやり始める時に、日本全国どこもうまくいっていないのでできるわけがないというようなことを言われていました。しかし、いろいろな工夫と社員の頑張り、そして地域社会に支えていただいたことも相まって、半年未満でとても良い業績を上げるようになりました。
それまでこの会社はいろいろな事業を持っていたのですが、そもそもバス会社であるということによって社員が入社してきていた会社でした。しかし過去10年ぐらい新車のバスを買ったことがありませんでした。新車のバスはかなり高額なものなので、それまでは値段が10分の1ほどになる中古を買って色を塗り直して使っていました。
そんな中、全ての事業が事業再生計画の予算を達成した月がありました。ほぼ半年ぐらいたった時に10数年ぶりに新車のバスを買いました。この会社は1,000台以上のバスを持っている会社で、たった1台のバスなのですが、バス事業をやる人にとっても、それ以外のホテルや旅行代理店、不動産、物販などいろんな事業をやる人皆にとっても、「本当に良かった」という気持ちになった瞬間でした。
これをもっと早く、ある種のご褒美として皆が頑張っている途中に行うのではなく、全ての事業が改革を終え、業績も回復したときに行ったということに一つの意味があったと思っています。
行ったことそのものというよりも、途中で行って心を緩ませてしまわなかったというのが良かったのではないかと思っています。これは経験的なことですが、そんなことを感...