●参謀の能力を備えた将
―― 僕が思うに、澤田さんのイメージというのは、将にして参謀がいらないタイプですね。参謀本部の能力が将に備わっているケースもあるのではないですか。
澤田 普通は、軍師がいたり、参謀がいたりするわけですよね。僕はどちらかと言うと、本当は軍師タイプなのです。けれども、いい将が現れないから、自分で将を兼ねているだけです。
―― 経営者を見ていて面白いなと思うのは、そこだけは、孫(正義)さんと澤田さんが似ているところです。孫さんも参謀いらずなのです。澤田さんも参謀などはいらなくて、自動回転して自分で仕組みを考え出す能力がある。ここが他の人と圧倒的な違いです。
澤田 優秀な将がいて、もしくは王様でもいいのですが、そこに優秀な参謀と優秀な軍師がいる。僕は、これが体系的には一番いいと思います。しかし、いないのなら、自分で兼ねるしかありません。変な将がいるとかえって参謀もやりにくいですし、逆に優秀な参謀がいないと、将だけで全てはできないのです。
―― 本当は、分かれるといいですね。でも、民間企業がベースなら、よほど規模が大きくなれば別ですが、結構いけるところまで、それでいった方が強いですよね。
澤田 戦い方に慣れていますからね。
●18年間赤字から黒字転換へ、さらに伸びる可能性も
―― ところで、今年で5年ですか。
澤田 今日で4年が終わりましたね。
―― 一番最初は入場者が200万人もいなかったのですよね。
澤田 僕が行った時は100万人ちょっとでした。今は倍以上になっています。
―― すでに200万人に達したのですか。
澤田 はい、もう超えています。
―― それならば、売上は、どれぐらいになったのですか。
澤田 売上ももちろんほぼ倍になっていますし。
―― ただ、その前は、利益はマイナスでしょう?
澤田 はい、その前は18年間ずっとマイナスでした。
―― 18年間でマイナス何十億円というところから、積み上げていって、ここまできたということでしょう?
澤田 今は、よほど変なことが何か起こらないかぎり、赤字になることはないですね。また、これからは、もっとすごいことになると思います。将来は数百億、下手をしたら1千億ぐらいまでいく可能性があります。ただ、あくまでも可能性なので、できるとはまだ言えませんけれども。
●バランスを崩したら勝てない~原因は過剰設備投資~
―― ところで、神近(義邦)さんという方が創業者で、ハウステンボスをつくられたわけですよね。
澤田 はい、優秀な方だと思います。
―― ただ、彼は、継続的にもうけていくところが足りなかったのですか。
澤田 いや、そんなことはないと思います。やはりバランスを崩したのでしょう。
―― バランスですか。
澤田 いいものはつくります。けれども、先ほども言ったように、ディズニーの1.6倍はいりません。つまり、過剰設備投資なのです。そのバランスを崩したわけです。
―― そうですか。もともとあの半分くらいでやっておけば、まだ続いていたかもしれないと。
澤田 だから、オランダ村をやっていた時は成功しているはずです。市場規模に合っていましたから。それをディズニーと同じ、あるいはそれ以上のものをつくったこと自体が、僕からすると、マーケティングミスだと思うのです。
何十年もかけて都市をつくっていき、そのマーケットを十分開発しきってから、やるならいいですが、一気に関東のようなマーケットを全部持ってくるわけにはいきません。一回は来ていただいても、リピーターにはならなかったわけですから。まずはそこの読み間違いです。
それと、過剰設備投資による過剰な借金があったため、先ほど言ったようにバランスを崩したということです。バランスを崩すと、病気になるか、つぶれるか、です。
●日本連合対ディズニーランド、マーケットの差が勝敗を分ける
―― なるほど。でも、あの時は、興銀が前のめりに出ていって、当時は日本の80年代後半から90年代頭にかけての雰囲気だったのですよね。
澤田 こういう言い方がいいか悪いか分かりませんが、まずアメリカからやってきた東のディズニーランドは、2千数百億円をかけ、一方、西のハウステンボスも、2千数百億をかけました。こちらの方がどちらかと言うと、日本連合です。当時の興銀を筆頭にした日本の一流企業が、お金やモノで全てこれに参加しています。アメリカがつくったディズニーランドと、きちんと対抗しようということでつくり上げたのです。
けれども、結果は、ディズニーが毎年ずっと上がっていって、ハウステンボスは毎年下がっていったということです。
日本の一流企業が全て参加したわけですから、昔の人はハウステンボスのことを皆知っています。
―― 日本の一流企業が全て参加...