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産業再生機構の取り組みは今後日本の参考になる

産業再生機構に学ぶ新産業の人材育成

秋池玲子
ボストンコンサルティンググループ 日本共同代表
概要・テキスト
人材が薄い新産業にとって有効なアプローチはどのようなものか。バブルの負の遺産を処理するために5年間の時限立法で作られた産業再生機構の運営ルールから、ボストン・コンサルティング・グループ シニアパートナー&マネージングディレクター・秋池玲子氏が論じる。
時間:11:55
収録日:2018/03/12
追加日:2018/06/02
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≪全文≫

●産業再生機構の成功は日本の課題を解決する手がかりとなる


 秋池玲子です。私は以前、産業再生機構に所属していました。産業再生機構は、2003年時点で40兆円があると言われていた、バブルの負の遺産である不良債権を2年間で半減させることを目標に発足した組織です。

 2003年ごろ、日本の景気が活性化しない原因が探られていました。そこには、不良債権処理が進まず金融機関もなかなか新しい貸付ができないため、事業者も新たな成長に向かって飛躍をすることができないという社会状況がありました。その中で生まれたのが、この産業再生機構でした。

 産業再生機構は、最終的に数百億円のファンドとしての利益を上げ、税金を払った後400億円近いリターンとなった収益を国庫に返納し、解散をしました。(※編集部注記:存続期間中に約312億円を納税、解散後の残余財産の分配によりさらに約432億円を国庫に納付)私はこの組織のアプローチが日本のこれからの課題を解くことに利用できるのではないかと思っています。今回はこのことについて考察します。


●手法の点で「民業圧迫」という懸念が生まれた


 産業再生機構は2003年に発足しました。5年間の時限立法の組織です。その時限立法の5年の間には、民間にもバイアウトファンドが生まれ始めていました。そのため産業再生機構は「民業圧迫である」と言われていました。

 というのも、産業再生機構はバイアウトファンドや不良債権を扱うファンドと同様の手法で、この不良債権を一気に処理するという手法を取っていたからです。民間と同じ手法を使うため、民間のファンドやそれに携わるプロフェッショナルの間では、国が市場価格よりも高く不良債権を買い取れば、民間に機会が訪れなくなるのではないかという懸念が生まれました。

 あるいは、その時に扱う案件が、破綻した企業を買い上げて建て直すことにより、価値を上げ売却するという場合、バイアウトアウトの仕事をしているファンドの方からしてみると、案件を国に横取りされるのではないかというような懸念もありました。


●買い取りに2年間、立て直しと売却に3年間という制約をかけた


 こうした懸念を払拭するため、産業再生機構で強く打ち立てられたルールがあります。それは、5年間のうちの最初の2年間だけ買い取りをするというものです。

 なぜ2年間かというと、人材の問題です。そもそも不良...
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