●ハウステンボスのスタッフにした最初の話
どのようにハウステンボスを再生したかということに、若干ご興味があると思いますのでお話しします。
私は、4月が新学期ですから4月1日にハウステンボスに入りました。テーマパークは生まれて初めてやる事業ですから、とりあえず行ってみて自分が半分やらないと分からないし、出来ないと思って、4月1日に入ります。最初にやったのは、約1000人のスタッフがいるのですが、そのスタッフを全員集めました。365日オープンしていますから、半分ずつのシフトで500人ずつ二回に渡ってお話をしました。
最初に話したのは、「今まで私はいろいろな会社を手掛けて、いろいろな会社を再建してきたので、今から私の言うことをやっていただいたら、黒字になります。皆で黒字にしましょう」ということでした。また、9年間ずっとボーナスが出ていなかったわけですから、「黒字にして、皆でボーナスを取りましょう」と、やる気が出るようにうまいことを言って話したのですが、皆は、「また何言ってんだ、この社長。また新しい社長が来て、分からんことを言って、2年か1年で帰るんだろう」という雰囲気で、しーんとしているのです。笑いも出ないですし、これはもう大変だなと思いました。
元気と笑顔がなくて、私が話しても全然、笑顔はないのです。なんだか暗いなと思ったのですが、「今から言う三つ、これだけやってもらったら黒字になって年末はボーナスが出ますから、だまされたと思って聞いてください」と言いました。
●大事なのは仕事への自覚と夢や目標を持つこと
そこで、普通でしたら難しい話、ランチェスター戦略とかマーケティングなどの話をするのですが、もうそういう話をしても全然分からないだろうと思ったので、そういう話は一切しない。ややこしい経営の話もしない。今から言う三つだけやってください、そうしたら黒字になりますよ、と言って、その前座に、「皆さん、何のためにこのハウステンボスをやっておられるのですか」と聞いたのです。
そして、「皆さんは、素晴らしい仕事をされているのです。お客さまに喜んでいただく、楽しんでいただく、ひいては、感動していただく、こういう素晴らしい仕事をしているのですから、それをまず自覚してください。そのためには、そんなに暗い顔をせずに、ちょっと笑顔でよろしく」と頼んで、とりあえず、素晴らしい仕事をされているのだから、一緒に元気にやりましょうということをお話ししました。
あとは、「では、5年後にはどういう会社にしてみましょう」ということをお話ししました。私は、夢とか目標が結構大切だと思っています。やはりゴールのない走りは、走れないのです。たとえ50キロでも、ゴールがあるから走れるのです。ゴールというのは、目標とか夢なのですね。夢のない事業はないのですし、目標のない事業もないのです。やれる、やれないはちょっと置いておくことにして。ですから、私は、そこで夢と目標をきちんと話したのです。本当にできるのかな、という顔はされていましたけれども、ここを、いずれ素晴らしい観光ビジネス都市にしますから、と言って、どんどん夢と目標を話しました。その内容はちょっとカットしますが。
●スタッフにお願いしたことの第一は「掃除」
そのように前座を話しまして、「では、今から三つ言いますね」と続けました。まだ何か言うのかなという感じで、皆、静かに聞いていました。
その、最初の一つ目。私は、たくさんの会社を見てきています。また、たくさんの会社を経営してきています。そうして、分かったのは、100パーセントとは言いませんが、大体成功している会社の特徴があるのです。もう私の本を読まれている方はお分かりかもしれませんが、もう一回軽く流しますので、ぜひ聞いてください。
その特徴とは、工場だったら整理整頓されていて、きれいなことです。佐世保でも非常に利益が出ている造船所があるのですが、そこに行くと、やはりきれいなのです。一方、赤字の造船所もあるのですが、やはり汚いのです。ということで、レストランでも職場でもオフィスでもそうですが、大概、成功してうまくいっている、伸びているところはきれいできちんとしているのですね。
ですから、スタッフの皆さんに最初にお願いしたのは、その点です。ハウステンボスは今でもまだまだですけれど、当時は、もうあちこちさびていて、バックヤードに行くと埃がいっぱいで汚かったのです。今は違いますよ、ロボットが受付をやっているぐらいで最新の環境ですから。でも、その時は「とりあえず10分、15分でいいので、皆で掃除しましょう、朝来たら掃除しましょう」と言いました。きれいになったらもうかりますからと。皆、「本当かな」という感じで聞いていましたが、「私...