第三次ベビーブームはなぜ起きなかったのか
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
的外れな少子化対策…男女共同参画や待機児童より非婚・晩婚
第三次ベビーブームはなぜ起きなかったのか
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
日本には、これまで二度のベビーブームがあった。第一次ベビーブームは第二次世界大戦後、昭和22年から昭和24年に生まれた「団塊の世代」。第二次ベビーブームは、この世代が親となった昭和46年から昭和49年頃を指す。では、次なる「第三次ベビーブーム」は、どうして起こらなかったのだろうか。政治学者で慶應義塾大学大学院教授・曽根泰教氏が、少子化問題の経緯を振り返り、今後に向けた提言を行う。
時間:12分05秒
収録日:2017年3月27日
追加日:2017年4月27日
≪全文≫

●1.57ショックで明るみに出た少子化の進展


 「第三次ベビーブームは、なぜ起きなかったのか」というお話をします。

 少子化問題はグローバリズムに並ぶ難しい問題であるというのが私の持論です。そして、少子化の具体例を申し上げるときには、まず「第三次ベビーブームの山がなかった」ということからお話ししたいと思います。そのことにいつ頃から気が付いたかというと、2000年を越えたあたりに「山がない、ちょっとおかしいぞ」と気が付いて、学生にも研究させました。ただ、少子化問題について私が具体的に発言した一例は、「1.57ショック」が起きた時です。

 「1.57ショック」と呼ばれたのは、合計特殊出生率が「丙午(ひのえうま)」の年(1966年)の1.58よりも低い「1.57」という数値が平成元(1989)年に出てしまったからです。

 その時、文化人類学者の私の同僚が、「日本人は奇妙な民族だ。丙午だと子どもを産まない。変な民族だ」と書いたものに対して批判をしました。

 丙午には確かな根拠はなく、丙午だから何か奇妙なことが起きることなどありません。しかし、最近でも仏滅にはお葬式をしないことが多いですし、大安に結婚式を挙げることも多いのです。それは、仏滅があるから、その日を避けているだけです。同様に、丙午という年があるから、その年を避けて前後に子どもを産むというだけです。ですから、そのこと自体、「13日の金曜日には本当に意味があるのか」ということと同じです。道教的なことや暦(六曜)の上でのことに意味があるのかを突き詰めていくと、それらにはさほど意味がない場合が多いのですが、今でも仏滅はあり、大安もあります。仏教的な話ではありませんし、そこを突いてもしようがないでしょう。

 その時、私が言ったのは「それよりも、少子化の傾向はどんどん進んでいる」ことです。「丙午よりもはるかに速い速度で少子化が進んでいる。これでは社会保障や年金が大変なことになる」ということを書いた記憶があります。


●山の分かる団塊ジュニア、山のない団塊ジュニアの子どもたち


 そういう意味でいえば、実は「ない現象」を発見するのは簡単ではありませんが、ベビーブームの子どもたち、つまり団塊ジュニアの山は明らかでした。この図をご覧いただけば分かるように、1970年代の73~74年あたりに(出生率の)山が見えています。この山は、当然その子どもたちが大...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子